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ニュクスの灯ビザーファイル・黒蝶の羽撃きは、異世界の煌めき。  作者: 七枝 繁
イスー連続少女殺人事件編
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第三十話 達人の領域

第三十話 達人の領域



一瞬で広間から部屋に変わった。

転移か?幻覚か?或いは他の何かか?


(リリィ、聞こえるか?)


変わらず頭にしがみついている子ドラゴンに対して思念してみる。


(聞こえるわよ~)


よし、少なくとも相手側が認識している範疇での幻覚系ではないようだ。


(これは転移か、精神、認識の操作系か、何方だと思う?)


(普通に転移だと思うわよ。疑い始めたら切りがないわよ)


(そうだな。とりあえずシンプルに行こう)


五感を研ぎ澄まし、部屋の様子を探る。特に誰もいない客間といったところか。隣の部屋、ドアの向こうにもとりあえずの人の気配はない。


(なぁ、敵は此方の場所を知っている、そして味方は何処にいてどうなっているか分からない。そんな時、どうすれば効率よく嫌がらせ出来ると思う?)


(嫌がらせ・・・って、相変わらずね。派手にやるのはいいけど、やりすぎて味方を巻き添いにしないでよ?)


(ヘヘ・・・)


「魔力増幅魔法陣、魔力圧縮魔法陣、魔力高流動魔法陣 起動!」


集中して魔法陣を最大限まで活性化させる。さて、ヤバい魔法いってみるか!

気合を入れてイメージすると、脳内にいくつかワードが流れてくる。なるほど、大魔法だけあって魔法名だけでは発動しない仕様か。


「万物の在りし姿を紐解きて 冥府の王も近づけぬ 破滅の神が生み出せし 終末に輝く死の陽光 我が招喚に応えよ! デウス ソル パルウス」


魔法を詠唱すると、まばゆい光球が生まれ、それをドアに向かって飛ばす。光球はドアなどなかったかのように穴をあけて突き抜けてある程度進むと一気に広がり消える。

その瞬間、激しい轟音と共に、爆発の衝撃が来て飛ばされたと思うと今度は逆に爆縮の逆風が走る。


「ぬぉ!!」


(ちょっと、やりすぎじゃないの!?)


派手ではあったが、爆風も爆縮も一瞬で止まった。

回りの様子を確認する。爆心地?というべきかそこは何もない。炭化して残っている部分から何もない範囲が光が膨れ上がった範囲であろう。

ちなみに、私が最初に立っていたギリギリまでが消し飛んでいた。


(おおー・・・)


(おおー、じゃないわね。派手というか自滅するとこだったんじゃないの?)


(まぁある程度自動的に飛んでったから、自滅はしない様には出来てるんじゃないか?それにこれでわかったろ。ここは二階だ!)


穴の開いた床を見て答える。すると、壁がなくなって見通しが良くなった別の部屋から白い髪に白い肌のアニマーのメイドが顔を出す。ナリンだ。


「コレ、貴方がやったの?」


「ええ、そうですわ」


「助かった。部屋には結界が張ってあって出れずに、魔法やスキルでも壊せなかった。でも、危なかった。ギリギリ場所が悪かったら死んでた」


「ごめんなさい。少し加減が・・・」


そう言いかけると、一瞬でナリンが此方にナイフと言うには少し長めの刃物を持って飛び込んでくる。

一瞬の判断で躱すとそのまま私の横をすり抜けて机の何もない空間に刃物を突き立てる。


「ぎぇぅえぇ」


RPGなどで良く出てきそうな眼玉がメインの魔物が姿をあらわし、断末魔と共に絶命した。


「気を付けて、監視用の魔法生物がウロウロしてる」


「ありがとう」


全然気が付かなかったな。監視だけだから良かったけれどもそうでなかったらヤバかったかもしれない。

まぁ恐らくこの魔物は、完全潜伏特化なので此方の索敵に引っかからないだけなのだろうけど。

逆に、それが見えるナリンは凄いな。恐らく索敵、潜伏行動が得意なのかもしれない。先ほどの動きもどちらかと言えば其方側の動きだった。


「みんな、バラバラ。何かいいアイデアない?」


そう聞かれてもな。あ、そう言えば侯爵から貰ったブローチがあったな。魔法を使うのに無意識にしまったブローチを取り出す。

とりあえず眺めてみる。どことなく癖のあるデザインだが、このデザインの癖は見覚えがある。

なるほど、或いは。そう思い私はブローチに魔力を込めると光のラインが一階に向かって伸びる。


「この光の方向に行けばいいわ」 


何につながってるかは不明だが今は手掛かりが欲しい。侯爵の性格からして護身の為に侯爵自身に光が向かうような事はしないだろう。

エアロウイングを使い一階に降りて、廊下をひたすら光に従い突っ走るとナリンも黙ってついてくる。

彼女は驚くほど足音も立てず、気配も薄く走っている。これは少しばかり味方ではあっても怖い。

するとT字に交差した廊下の死角に敵意のある気配を感じる。一瞬でナリンが加速して私を追い抜き気配の元に近づくと突然斧が振り下ろされるがナリンはそれをスラリと躱す。

斧を振っているのはガチムチマッチョの大男であった。パワーと防御力タイプらしい。ナリンが素早く切りつけているが、大したダメージになっていない。きっとスキルか何かを持っているのだろう。


「ここは、私がやる。貴方は先に行って」


ナリンの速度なら最悪、戦線離脱して逃げることは可能だろう。私はそう判断して先に進むこと決心する。


「了解、ナリンも気を付けて」


「うん、こんな奴、余裕」


そのまま光が示す方向にたどり着けるであろう廊下を走る。全く、なんでこんなに広いのか。暫く走ると見覚えのある広間が見えてくる。

そして、広間に入る瞬間にリリィが声を掛けてくる。


(気を付けて!来るわよ)


やはり転移させられる前の広間だった。そこにでる瞬間、魔法で宙を飛び上がると、銃声が響く。

此方もそのまま銃を取り出し命中精度を上げるホーミングの魔術を掛けて反撃をする。

目に映ったのは吹き抜けの2階からアサルトライフルを構えるセバスだった。だが、それ以上に驚いたのはセバスは銃弾を浴びても平然としているのである。

結界の効果という訳ではなさそうだ。現にアサルトライフルの方は此方の反撃で破損させるのに成功させている。


「あの時、狙撃してきたのは貴方だったのね」


「左様で御座います。あの時はまさかあそこから反撃をされるとは思っていませんでしたから負傷しましたが、今度はそうはいきません」


これもスキルか何かでやはり肉体を強化されているという事か。ならば魔法なら・・・


「!」


思考中に破損したアサルトライフルを突然投げつけられて回避の動作が大振りになってしまう。

セバスは、その一瞬の隙を逃さず二階から飛び降り、そんまま突撃してくる。速い!予想以上に、早く、速い。


「魔法は使わせませんよ!」


しかも感もいいと来た。


「まさか、貴方がここまでの使い手だったとは思いもしませんでしたわ」


間合いを開け、一瞬で "光切兼忠" を取り出して僅かに出来る隙をあえて見せると、予想通りに間合いを詰めてくる。

抜刀と同時に切り上げる "打ち抜き" で飛んでくる拳を腕ごと切り捨てる、ハズだった。

だが、実際は、切れずにそのまま飛んでくる拳を避ける羽目になった。

その拳を突いてきた隙を見てリリィが飛び上がり魔法を使おうとするが反対の拳が素早くリリィのボディを殴り飛ばしリリィはダウンする。


「いったはずです。魔法は使わせないと」


これは、もしかすると魔法を使おうとすると反応するスキルを持っているのかもしれないな。

それだけでも厄介なのだが、先ほどの切れなかった腕、これは非常に厄介だ。これはスキルじゃない、純粋な技術だ。

刀と言うのは "引く" 事で切れるが、あと二つ重要な要因がある。それは、刃の向いている角度と刀の軌道の角度が一致しなければいけないという事、

大げさに言えば、地面と水平に刀を振っているのに刀の刃の向きが45度に傾いていたら切るどころか叩いてるだけだろう。

5度ぐらいの傾きぐらいなら多少は切れるかもしれないが、0度の傾きなしで水平に刃が振るわれた時ほどは切れる事はない。

これを、一言で "刃筋" と言う。

そしてもう一つは、切る瞬間にどれだけ力を集中できるかである。スポーツでいうならインパクトて奴だ。古い言い方をすれば "呼吸" ともいわれる。

セバスはこの、刃筋と呼吸を一瞬、狂わせるのだ。どんなにこちらが正確に切る振り方をしても、目標が勝手に動いて "切れる要因" を壊されては意味がない。

その後も何度か拳と刀が合わせたが、予想は確信に変わるばかりで追い詰められていく。

武器を持っている此方の攻撃は通らず、無手のセバスの攻撃の方が当たると致命傷になりかねない。全くをもって状況が逆転してしまっている。

しかも、セバスのその動きは達人級だ。物理的な "速度" もそうだが何より、 "早度" も半端ない。攻撃をするという心の動きから体が動くまでの一瞬が早いのだ。

心の動きを捉えても、そこからが早すぎて先手を取れない。

セバスの奴どんだけ鍛えて来たんだよ。達人級じゃないか。

これは、流石にまずいな。


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