第二十五話 聖女・・・とは?
第二十五話 聖女・・・とは?
そして、指定されたアルファウトル公爵家が治めるトースン州、州都ロンガースプリングに向かう日が来た。
侯爵家の門の前に騎士達が何人か集まっている。
騎士団長のキャロルルが、ガルヴァスとサンディバルと名前の知らない若い騎士に出陣式というか遠征前の激励という感じで声掛けている。
今回の護衛は3人のようだ。今回はクリスティアは勿論だが、リーミアも行かないらしい。
クリスティアの面倒を見るのもあるし、貴族とその使用人以外はアルファウトル家の館に入れず街でお留守番だから行っても無駄だからだそうだ。
なので、アルファウトル家の館内では、侯爵、セバス、私そして、リリィの3人と一匹での行動となるようだ。
何故かリリィは私の付属品扱いで館に入れるそうだ。まぁ、確かに珍しい技能としてドラゴンを連れていると言う扱いとするなら、重要なファクターではある。
「あらあらまぁまぁ、なんて可愛らしい姿なんでしょう」
そう言いながら近づいてくるリーミア。
「使用人としては少し過剰すぎるフェミニンアピールですが、侯爵様の用意された衣装を着るよりはマシでしたので」
「ハハハハ・・・そ、そうですわねぇ・・・」
そう、戸惑いながら返事したリーミアは乾いた笑いで遠い眼をしていた。
これはもしかするとリーミアも以前に会合に連れていかれ、あられもない衣装を着せられたのかもしれないな。
そんな事を考えているとリーミアは更に近づいてきて耳元で囁く。
「セバス様には十分気を付け下さい」
「え?それってどういう・・・」
そう言うと人差し指一本指で口を塞がれウインクされる。
ふむ、リーミアはセバスの何かを知っているようだな。ふーむ。
そんな事を考えていると、キャロルルの激励式?が終わったのか若い騎士がやってくる。ヒューマーなので年齢は10代後半ぐらいだろう。
突然前、彼は私の前で跪く。
「私の昨年クアイトヒル騎士団所属致しました、ケスノー・ラハーダーと申します。この度は聖女様のご尊顔を拝し、また共に旅する栄誉を賜り恐悦至極の思いです」
あまりの、丁寧振りと謎の聖女発言にポカーンとしているとガルヴァスが声を掛けてくる。
「これはミス・プロノテアお久しぶりですな。風の噂によれば、更に神聖度がましたとか。そこのケスノーはルーガス王国出身でしてな。 その国は "胡蝶の歌姫" の出身地とも言われていて、、黒眼黒髪の少女を聖女と崇めるそうですぞ」
「それだけでは御座いません。現聖女様は、黒き蝶を自在に操り、凶悪なドラゴンですら従えるとの事。これは完全なる "胡蝶の歌姫" の再来です」
おいおい、世の中ド偉い妄想が働いて大変な事になってやがるな・・・。真実は全くをもって違うのだが。これはルーガス王国だったか、行かない方が身の為だな。
「ハッハッハ、そう言う訳でござるよ。自分とサンディバルそしてケスノー3人でしっかり護衛するので安心してくだされ。まぁミス・プロノテアの腕前なら護衛などいらぬかもしれませんが」
「そんな事ありませんわ。どうか道中よろしくお願いします」
そんな話をしていると侯爵とセバスが現れ、騎士三人は侯爵の前に並び跪く。
「ウムウム、いつもの二人と、もう一人は確か・・・ケスノーか。まだ若いがそろそろ街の外の任務に就くころ合いと言う事か。よし三人の同行を認める。今回もよろしく頼むぞ」
「「「イエス!マイ、ロード!」」」
ほほぅ。真面目な場面ではお得意のデュフフはなしか。まぁそりゃそうだな。
ちなみに私は膝などつかず立っている。私はあくまでメイドの変装であり、ぶっちゃけただの雇われ人だからなー。忠誠心なんてない。
そんなこんなで準備や打ち合わせが終わると、侯爵一行は街を抜けトースン州に向かう。
構成は、侯爵、執事、メイド?とその付属品の飛竜の子供が馬車に乗り、護衛の騎士3人、人の馬車と荷台の馬車の馭者が2名と荷台専用の使用人が一人だ。
「デュフフ、ノアたんと馬車に乗るなんて出会った時を思い出すんだな」
「あれから二週間ほどしかたっていませんわ」
「確か、タクルゥティオ様とノア様がお会いしたのは確か、ルーガス王国からの帰り道でしたか」
「デュフフ、そうなんだな。その後ルーガス王国の男爵の娘が殺され、その犯人を突き止めたのがノアたんとはルーガス王国とはやはり縁を感じざるをえないんだな」
確かに、道を間違えなければ恐らくそのルーガス王国にたどり着いていた可能性は高いな。
あの時、本来つくはずの街の名前は確かイキドーだったはずだ。折角だし聞いてみるか?
「もしかして、ルーガス王国にイキドーという町はありませんか?」
「デュフフフ、イキドーこそルーガス王国の端にある我が国から最も近い町なんだな」
黒眼黒髪で蝶を操る "胡蝶の歌姫" の故郷の国へにまず最初に行かそうとし、名前まで同じ物を用意していたていた神々。
偶然にしては出来すぎかもしれないな。一体、私に何をさせようと言うのか?
(・・・)
(どうしたリリィ?)
(何でもないわ。どういう未来が待っていても私は貴方の味方よ)
(まるでロクでもない未来が待っていそうな言い方なだ)
(ううん、そうじゃないわ。ただ、神って奴はロクでもない事ばかり起こしているからね~)
(なるほど、神の傍にいた経験者は語るか)
それから何時間馬車の中で揺られながら座っていただろうか。流石に疲れて来たので魔物でも襲ってきてくれればありがたいのだが、そんなに世の中甘くなかった。
気分転換に走っている馬車の中から飛びながら外に出て屋根の上で寝っ転がることにした。
ついでに私がいない間にどんな話をするか気になったのでリリィを馬車の中に残しておいた。
思念の会話は中外構わず話しが出来るのでリリィが馬車にとり残されたことをブーブー文句言ってきた。
その中でリリィが聞き取った会話の中に興味深い物があった。
「セバス、戻るのか?」
「はい、色々と申し訳ありません」
「しかし、アレはもう既にかつてのメリ姉ちゃんじゃない」
「ですが、私には義務があり、また責任があります」
「そうか・・・分かった。もう言わぬ。すまぬな」
やはり、セバスには何かあるようだ。しかし、メリ姉ちゃんか。
昨日、少しばかり調べたが現在の公爵は、メリーメイ・アルファウトル。女性が当主である。
侯爵の方も公爵と親しい仲で、それも子供の頃からの可能性が高いという事か。まぁ貴族同士で隣の州であるなら何も不思議ではなくそれは普通か。
ふーむ。なんか、考えることが色々ありすぎてもうやんなって来たな。本当、魔物でもでてどつきたい気分だ。
色々面倒くさくなってゴロゴロしてみる。舗装されていないダートロードって奴に入ってしまっているのでこんな硬い屋根では寝れそうにない。
おや、少し速度が落ちたか? 何やらガルヴァスとケスノーが話している。前方を見ると何やら戦闘中のようだ。
暇つぶしにちょっと暴れるか。そう思うとリリィに話し馬車を離れることを伝えて魔法で飛んで行く。
ガルヴァスとケスノーが何か言った気がするが気にせず飛んでく。我ながらクリスティアの感覚がうつってきたかもしれない。
人間の馬車がゴブリンの群れに襲われている状況である。警備の騎士が単騎踏ん張っているが、流石に数が多いのと限界が近いな。
なんでこんな状況になっているのかは不明だが、とりあえず暴れるには丁度いい。
「メテオフレイム」
空から巻き込まない様にゴブリンの群れの端っこを狙って爆音と共に周囲を焼き尽くす。
突然の爆音と炎に生き残ったゴブリン達は同様して動きを止める。一匹が宙に浮く私の存在に気が付き叫ぶと大半のゴブリンがこちらを見上げる。
その時には既に時遅し、天に向かってあげた右手の上には太陽の様な火球が既に出来上がっている。
「ブレイジングエクスプロージョン」
魔力圧を調整してギリギリの弱さで人間を巻き込まない様に狙うが、結局騎士も爆風をもろ受けていた。
まぁゴブリンに殺されるよりは全然いいだろう。
大分減ったな。さて、ストレス解消タイムだ。取り出したのはいつもの "光切兼忠" ではなく、二日前に武器屋で買った鈍器である。
一部の聖職者は刃物を使えないので武器屋に鈍器が置いてあるだ。その中でも金属バットにトゲをつけただけなのに妙に恐怖を誘う鬼の金棒の様な奴を選んで買って来た。
そいつを遠慮なくブン回す。撲殺モードだ。うむ、余りのえげつなさぶりにボロボロになった騎士がドン引きしている視線を感じる。
だけどしょうがないじゃん?この状況で刃物で切りまくったら、返り血まみれで服が台無しよ。汚れた服の代わりにアレを着せられるのはいやよ?
それにほら出来るだけちゃんと一撃で殺してるし。
「お待たせ致しました、聖女様。見事な撲殺っぷりに敬服いたしました。一知半解の身ではありますが聖女様と共に戦う事をお許しください」
「では、サー・ケスノー。貴方の武功を見せて頂けるかしら?」
「御意」
そういうと、剣を抜きゴブリンをバッタバッタと切り倒していく。なかなかやるじゃないか、そう思ってはいたのだけれども・・・。
「サー・ケスノー?後ろが狙われてますわっよ!」
そういって、隙だらけの背後を襲おうとするゴブリンの脳天をカチ割る。
「有難うございます」
それにしても数が多いな。それにケスノーが結構な速度で切り刻んで行くから、返り血を浴び無い様に立ち回るのが大変だ。
しかもケスノー自身、背後の隙が大きすぎるので余り離れるとゴブリンにやられてしまいそうだ。
「サー・ケスノー、馬車からゴブリン達を離しますわよ。幸い此方を完全に狙っているようですし」
「撲殺聖女様の仰せのままに」
誰が撲殺聖女だ。その言い方だと天使のドク□ちゃんのパクリになってしまうだろ?
だが、ケスノーは中々やるな。上手くゴブリンを切り離している。
よし、魔力増幅魔法陣、魔力圧縮魔法陣、魔力高流動魔法陣2重展開!
あと数メートルは引き離したい所だな。
よしよし、いいぞ。ぐんぐん引き離れていく。
「サー・ケスノー、全力で逃げて下さい」
「ハッ」
その、返事が来る頃には空高く上げた私の右手の上に先ほどとは比べ物にならないほどの輝く光球が浮いている。既にそれは炎という形をとっていなかった。
その圧倒的なプレッシャーを放つ光球にゴブリン達は反射的に身動きが取れなくなる。おかげでケスノーが楽に逃げ出せているのはありがたい。
「先ほどの比ではないですわよ!塵一つ残さず燃え尽きなさい! ブレイジングエクスプロージョン!!!」
着弾と共に激しい轟音と爆風と閃光が辺りを包む。ちとやりすぎたか?だが流石にこれなら吹き飛んだだろうな。
魔法が消え去って辺りの様子を目視で確認すると、魔法の影響を受けた地面は真黒なすすだけが残っていた。
「――――!」
"核光魔法・デウス ソル パルウス"
久々の耳鳴りだな。しかし核光魔法?ていうか核?ここまでくると、もう何でもありで色々やばいな。
「爆炎の撲殺聖女様!大丈夫でしょうか?」
いや、その呼び方はどうなのだろうか?それにアレに多少は巻き込まれたはずだが元気だな?ケスノー。
「私は大丈夫ですわ。それよりサー・ケスノーは大丈夫ですか?巻き込んでしまったように思われたのですが?」
「はい!大丈夫です、日々鍛錬していますので!ですが爆炎の撲殺聖女様にこの身を心配して頂けるとは恐縮至極」
「あの、サー・ケスノーその爆炎の撲殺聖女というのはやめていただけませんか?まるで無頼の女のようですわ」
「これは失礼しました。それでは・・・そうですね、滅殺の聖女とかいかがでしょうか?」
こいつ・・・私を中二病にしたいのか?いや、ケスノーがやばいくらい中二病なのか?真面目にこれがカッコイイと思ってるぽいしな。
「私の事はノアでいいですわ・・・」
「御意、聖女ノア様」
どうやら聖女は消えないようだ。まぁ撲殺聖女よりはましか。
「いやー派手にやりましたなぁーミス・プロテノア」
ガルヴァスがやってくる。
「思った以上に威力が出てしまいましたね。どうも私、魔法の出力調整が下手くその様ですわ」
「ハッハッハー。ご謙遜を、あれだけの魔法が使える者など一国に一人、二人いるかいないかぐらいですな」
相変わらず楽しそうなガルヴァス。
そういえば、あの襲撃受けていた騎士は生きているのだろうか?
「爆炎の撲殺聖女、助けて。貴方の魔法でああなった。何とかして」
突然背後から声がしたので振り向くと、白髪赤眼の白い肌をしたアニマーの少女がメイド服を着て立っていて、ひっくり返った馬車を指している。
「貴方は・・・。いえ、不可抗力とはいえ私がやったのは確かですね。なんとかしましょう」
しかし、見知らぬ少女からも変な名前で呼ばれてしまった。
明日の更新は、もしかするとないかもしれません。
ここらでノアのメイド(?)姿の絵をいれたいなーとか思ったりしてます。
ついでに、日刊で上げていくのがちょっとパッツンパッツンで手がいっぱいです。
読んでくれる人がまだまだ少ないので頑張りたいところではありますが普通に仕事もありますしね。
それでは、次回、二十六話、まだタイトルは決まってませんがどうぞよろしく。




