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ニュクスの灯ビザーファイル・黒蝶の羽撃きは、異世界の煌めき。  作者: 七枝 繁
イスー連続少女殺人事件編
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第十五話 雨

第十五話 雨



そんな何気ない日常と、何気なくない日常は、私が義姉になってから5日目で幕を閉じる。

その日は朝からどんよりした天気だった。

宿屋の窓から空を見上げて雨が降っていないか確認する。

恵みの雨っていう言葉がある通り、天候が多少優れないのは何も悪い事ばかりではなく気に掛ける事はないのだが、今日は妙に気分が塞ぎそうになる気がした。

そうだな、あの日もこんな天気だった・・・。

そう窓から空を眺めながら物思いに更けようとすると、ドアをノックする音が聞こえる。


「おはよーおねーちゃん」


どうやらクリスティアが迎えに来たようだ。

相変わらずタイミングのいい子だ。

クリスティアは何度か宿屋に遊びに来ていて部屋を知っている。昨日は、「なんかねー明日は雨降る気がする―」とか言うので迎えに来てもらう事となった。

そのクリスティアの天気予報は、当たり天気は下り坂である。


「おはよう、クリスティア」


そう言ってドアを開ける。


「ね!ボクの天気予報当たったでしょう」


自慢げに言ってくる。やはり、あの角に秘密があるんじゃないかと興味が沸いてくる。


「ええ、当たったわね。ジーニィはみんなできるの?」


「うーん、大体みんなわかるみたいだよ」


まったくジーニィとは不思議な種族だ。あ、でもアニマーワイルディとかなら分かりそうだな、特に猫タイプとかは。


「それじゃ、今日は街を見て歩くだけにしましょうか」


「そうだねー。あ、でもバリズディのとこには顔だしにいこうよ」


「そうね」


バリズディ、トカゲのアニマーワイルディで東門の門番だ。毎日出入りして挨拶しているせいか、お互い名前を教え合う仲となったのだ。

トカゲの顔で表情が分かりにくいので、ちょっと個人的にはとっつきにくい感じがあったが、話してみると気のいい真面目な青年だ。

そんな分けで東門に寄り道をしてバリズディに挨拶をしに行き、少しだけ仕事の邪魔にならない程度に話してから街を移動し露店を二人で見て回る。

どこの店主達もこんな天気じゃ早めの店じまいだなぁとぼやいていた。

ふとアクセサリー屋の前でクリスティアが立ち止まっているので近寄って見てみる。中々、センスのいいアクセサリーがそろっていた。


「ねね、ここのアクセサリー何か他のアクセサリーと違うきがする」


「お!嬢ちゃんわかるのかい?ウチのアクセサリーはみんな、魔法のギミックが仕掛けられてるんだ」


「へぇーそうなんだ」


「面白そうね。おじ様が全て作られているのですか?」


「おうよ、全部が全部じゃねーが、大半は俺造ったものだな」


見た目も商人より職人っぽい犬のアニマワイルディの親父が応える。あのモフモフの手でか?中々に器用だな。

その中で何となくデザインが気になったペンダントを取ってみる。銀色の羽の先にハートが小さくあしらわれていて、その中心には赤い石が埋められている。


「お、そいつが気になるのかい?そいつはもう一方の奴と対でな。魔力を込めると光が相方の方向を指す様になってんだ」


なるほど、隣には手に取った物とは左右対称のペンダントが置かれている。


「へー、じゃーこれがあればウッカリ迷子になっても直ぐに見つけられるね」


「おうよ!」


「おじさん、これちょーだい」


「あいよ。これは2つでセットの売り物だからちと値が張っちまうが、今日はこんな天気だ、安くしとくよ。5000ゴールドでどうだい」


「うん、いいよ。はい、これ」


「まいどあり!片方を渡すのは、こっちの黒髪の嬢ちゃんでいいかな?」


「うん、これでお互いはぐれても直ぐに見つけられるね」


「え?ありがとう。でもいいの?」


「うん、つけてあげるね」


そういって、さっきからずっと手に乗っていたペンダントを取って首にかけてくれる。


「ありがとう、クリスティアのも付けてあげる」


そういって手に取ったペンダントを付ける。

なんだか仲が良すぎて恋人同士みたいな行動とってしまってる気がするな。恋人同士か・・・。

どうしてだろう、こんな天気だからだろうか?もう随分前に忘れたはずの過去が気にかかってしまう。

それから店を離れた後、静かにしているとクリスティアから話しかけてくる。


「おねーちゃん?」


「ん?」


「今日は調子悪いの?あ、もしかして天気が悪いと調子が悪くなっちゃうタイプ?」


天気が悪いと調子が悪くなる?ああ、低気圧とかで調子が悪くなる人は確かにいるな。


「ううん、そんな事ないわ。なんだか空が今にも愁いを帯びて泣き崩れ落ちそうな気がしたのよ」


「ふぅん?おねーちゃんは詩人だねぇ」


「さて、お仕事お仕事」


「うーん。だけどもう6日もブラブラしてるけど何の音沙汰もないよねー。他の犠牲者が出てる様子もないし」


「そうだね。まぁ色々騒ぎ起こしてるから、囮というより警備になってる気もするわね」


「やっぱ、快楽殺人なのかな?」


「そうね。いくつかの現状証拠から、犯人は必要以上に短剣で被害者を切りつける癖があるわね。急所の一撃では殺さず、自由を奪って痛めつけるタイプね。後は、体の一部と身に着けていたアクセサリ等を持ち去るようね」


「それだけの事を見つからない様にするって難しいよね。しかも護衛が気が付かないように連れ去ってるようだし」


「恐らくは、何かの魔法かアイテムの効果かもしれないわね。どちらにしても普通の殺人鬼ではないから注意が必要ね」


「そうだね、でもボク達二人がいれば負ける事なんてないよね」


余裕そうなクリスティアと反対に何故か私は何故か不安に感じていた。


「え、ええ。負けるつもりはないけれど過信は禁物よ。相手は、冒険者や傭兵、兵士なんかの戦闘職かもしれないわ」


「そんな戦いをしてる人たちがわざわざ、か弱い人間なんて襲うかな?ボクだったら強いほうがいいけどね」


「時々いるのよ。うっかり殺してしまったり、その現場を見てしまった事でその興奮を忘れられなくて止められなくなってしまう人たちが・・・」


「ふぅん。困った人がいるんだね」


やはり、そのクリスティアの言葉に緊張感はなく少し焦りを感じてしまう。


「・・・ねぇ。もし、もしもだけど、私がそうなってしまったらクリスティアは私を殺せる?」


私は何故かそんな質問をしてしまう。


「え?やだなぁ。おねーちゃんはそんな狂った人にはならないでしょ?それにボクの腕じゃ返り討ちにあっちゃうよ」


「そう、よね・・・」


「変なの。もしかしておねーちゃんは不安?大丈夫だよ。ボクとおねーちゃんなら絶対犯人を見つけて捕まえられるんだから」


「うん。そうね」


なんとも言えずにただ、合図知の様に答えてしまう。


「よし!ボクがサクッと見回りして犯人みつけてきちゃうんだから!おねーちゃんはちょっとここで待っててよ!」


そういうと、脱兎のごとく走り去っていくクリスティア


「ちょっと、クリスティア!?」


そう名前を呼んだ時には、可憐な後ろ姿は小さくなっていた。

はぁ、もう、相変わらずに勝手すぎるだろ?

まぁ見た目通りの子供じゃないし、何よりソウルアーツがあるから大丈夫か。そんな事を思いながらどんどん小さくなっていく後ろ姿を見つめていた。


そう・・・。

あの時もこんな天気だった。もう何年前だろうか?

アレは確かニュクスの灯のメンバーになって2年くらいが過ぎた頃だったか。

力の使い方も覚え、任務も安定してこなせる様になって色々充実し初めていた頃、俺は・・・同じ組織の女性と恋仲にあった。

任務も時には一緒にこなし信頼関係を築けていたと信じていた。

だが事件はすぐ自分のそばで起こっていた。

異常な連続殺人という事件が・・・。



「なぁ、本当に犯人はお前なのか・・・?」


「あら、この現状を見てもまだ信じられないの?なら貴方の能力で私の記憶を共有してみたらどう?」


「っ・・・・」


「甘いのね。これから先そんなんでは生き残れないわよ?」


「――――――――!!!」


俺は、意を決して彼女の記憶を共有した。そこには確かに吐き気がしそうな光景が残っていた。


「ね?私ってこういう女なのよゴメンね」


「どうして・・・」


「どうして?どうしてかしらね。わからないわ。でもね、半分は貴方が悪いのよ?だって貴方を本気で好きになればなるほど、貴方をバラしたくてたまらなくなってくるの」


「・・・え?」


「だからね、我慢してた。してたけど、耐えられなくなっちゃった」


「・・・そんな・・・」


「ねぇ?私の事、愛してくれるのでしょう?こんなんだけど。だったらさ・・・私の為に・・・バラされてよ!」


そう言い切ると恐ろしい形相に変えて突然襲撃してくる。

後は良く覚えていない。とにかく反射的に身体が勝手に動いてただけだった。

そして気が付けば土砂降りの雨の中、俺の刀が彼女の胸を深く貫いていた。

俺は倒れる彼女をなんとか抱きしめて名前を叫んでいた。


「・・・は、はは・・・やっぱ、謙ちゃんは強い・・・ねぇ・・・」


彼女は血を吹き出しながら声をだす。


「もう、しゃべるなよ」


「へへへ・・・謙ちゃんなら・・・さ、止めてくれると・・・信じてたよ・・・」


「もう・・・いいから・・・」


「ありがとう・・・どうせ、まともな・・・死に方は出来ないって、思ってた・・・最期は、せめて・・・好きな、人の腕の中ならさ、し、あ・・わせ・だよ・・・ね・・・」


そのまま彼女の体から力が抜けていくのを感じる。


「―――――――――!」


後は声にならない叫びが響いてただけで、もう涙なのか雨なのか何もわからなくなっていった。



はぁ・・・どうして思い出しちまうかな。

気が付けば私は何故かベンチの上で体育座りでうずくまっていた。

・・・、・・・。

はぁ。まぁそうだな向こう側にいっちまった奴はもう命を終わらすことでしか救えないだろうから出来れば、静かに終わらせてやりたいものだな。

ん?雨か。ポツリポツリと冷たい滴を感じる。やれやれ猪娘は猛進したまま、まだ帰ってこないか。

確か、壁際の露店が傘を売っていたな。ちょっと買っていくか。私はそもそも傘を所持すらしてないしな。

折角なので服に合わせてフリルがついた可愛い物を選んでみた。ペンダントのお礼にクリスティアの分も買っておく。

さてさて、どこを探しにいけばいいかねぇ。


「あ!プロテノアさん!大変です」


そう声を掛けてきたのは見覚えのある若い騎士だった。この事件を手伝うにして少しだけ話した事があったな。名前は・・・忘れた。


「どうかしましたか?」


「クリスティアさんの姿が突然消えました!」


「え?」





次回、第十六話「叫び」

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