第十三話 BER 穴
第十三話 BER 穴
そんなこんなで、4日ほどは修行と街をブラブラするという怠惰な日々を繰り返していた。
本来、私はバケーション中なのだからこれくらいダラダラする事は問題ないだろう。それに犯人が事を起こさなければ何もできないのもある。
何か変わったことがあったかと聞かれれば、クリスティアの義姉になってから2日目の夕暮れの帰り道にちょっと・・・いや、かなり変わった店を見つけた。
「BAR 穴・・・?」
はて?こんな場所にBAR・・・酒場なんてあっただろうか?
イスーは魔物襲撃備えて街全体が壁に囲まれている。それ故に人口が増えるにつれて上へ上へと成長しやすくなっている街構造だ。
勿論、城壁を移動させて拡張工事も計画的にされてはいる物の、需要と供給の差で高低差がどうしても多くなる。
住居区は特に顕著で外の通路が二階の入り口にそのままつながっている建物も珍しくない。もう、どこが一階でどこが二階なのか判断できない感じだ。
そんな街の低層にある壁に突然ドアと看板だけを取って付けたような店があった。妙に気になるので入ってみることにした。
自分が未成年の姿であることをすっかり忘れてBERと書かれている看板の店に入っていった。
ドアを開けると、カランカランとベルが鳴る。
「いらっしゃい。おや、珍しい可愛いお客さんだ。ん・・・?いや違うねぇ、これは失礼した」
そう声を掛けてきたのは、細身で左目の下に泣きほくろのある女性だった。年齢を推し量るのが難しい美人タイプだ。
それより気になるのは店の内装だ。壁はみなショーケースになっている。
しかも店の真ん中には、地球で言う "大型バイク" と酷似し物が飾られている。
またショーケースや壁には煌びやかな刀剣が立てかけられてると思えば、その横にはズラリとライフルや銃としか判断出来ない物まで自慢げに陳列されている。
ついでに、意味不明な形状をしたものからSF映画から持ってきたかのような謎のガジェットも沢山並んでいる。
これは一体どういうことなのだろうか?
「どうだい?面白い物がいっぱいあるだろう?」
「え?ええ・・・これは何処で手に入れたのですか?」
「何処からともなくさ。これらはみんな待っているのさ、自らを必要としてくれる持ち主を」
「待っている?」
「ああ、君の様に時も空間も異なる世界を彷徨う主をね」
この店員、妙な事を言った。いや、妙というより常識ではあり得ぬ事実を正しく言っている。
「何を知っているんです?」
「何も知りはしないさ。ただ君を必要としてる品々がわかるのだよ。例えばコレとかね」
そういうと女性は蝶番のついた箱を取り出し、蓋を開けてこちらに見せる。
「――――!パファダー2nd」
そこには確かに向こうで古代巨兵に一撃を喰らわせた拳銃が入っていた。
「へぇそういう名前なのかい。さてコイツは君を必要としていて君もコイツを必要としているようだが、ただでは渡すわけにはいかないな」
「おいくらですか?」
「おっと、お金はいらないよ。ここではお金なんて何の意味も持たないからね。そうだな君が必要としていなく君が持っている物がお代さ」
「必要としてなくて私が持っている物・・・?」
「例えば、その腰にぶら下げてるケースの中に入っている衣類とかはどうだい?」
「あ!」
そう指摘されると思い当たるものを取り出して見せる。
・いつかつかうであろうヒラヒラメイド服 (破壊不可・破棄不可・紛失不可)
・仕事で多分つかうよ?セクシーネグリジェ(破壊不可・破棄不可・紛失不可)
・やっぱバケーションは海でしょ?セクシー水着(破壊不可・破棄不可・紛失不可)
・紳士殺しの悩殺スク水(破壊不可・破棄不可・紛失不可)
・こんなこともあろうかと女王様ボディスーツ(破壊不可・破棄不可・紛失不可)
「うん、中々いい物を持っているね。こっちのメイド服とネグリジェは、どうやら君が持っておくべき物のようだから返しておくよ」
「え・・・」
なんだか必要と言われてしぶしぶポシェットに入れなおす。つまり彼女は遠まわしにいつか使う時が来ると言っている。それを理解した瞬間軽い眩暈がした。
「うん、助かるよ。ではこれを。そうだ、それを使うにはこれも必要なんだろ、持っていきな」
そう言って渡された銃と箱に詰められた弾丸を手に取って確認する。確かに間違いない。
"D魔術対応型回転式拳銃 パファダー2nd .357マグナムDM"
小さな傷が所々についたバレルの様子で確かに私が使っていた唯一無二の銃だと分かる。そして弾丸にも細かく魔法陣が刻まれている。
「ありがとうござます」
「こちらこそ、助かるよ」
「あ、そういえばその服、紛失不可とか変な項目がありますが大丈夫ですか?」
「ああ、ここにある品はみんなそんな物がついてる。むしろついている物しか扱わないから大丈夫さ」
そう聞いて試しにポシェットに銃と弾丸を入れてステータスを確認してみると確かに付いていた(破壊不可・破棄不可・紛失不可)と。
命を預けて来た拳銃を愛でたいという流行る心を抑えて、今一度礼をいって店を出ると一直線に宿屋に向かった。
その翌日、私は何時もより早く街の外に出てクリスティアが来る前に何度か試射した。
思った通り、自分の手が小さくなっているので以前よりも安定性がなくなり、以前の様に使いこなすには練習が必要そうだ。
その後、私は何度か店のあるその場所に向かったが何処を探してもあのBARは無かった。ただただ壁があるだけである。
そんな状況ではあったが、私は不思議なことにまたあの店を訪れる事になるだろうという予感が頭から離れなかった。




