第十二話 "義姉"争奪戦
第十二話 "義姉"争奪戦
翌朝、街の外に出ると門を守るトカゲのアニマーワイルディに挨拶をして原っぱを道沿いに進む。
昨日約束した場所にはクリスティアが先に来ていていて挨拶をすると衝撃の事実を聞く。
「よし!ボクは準備はOKだよ。どっちが義姉になるか勝負しようか」
「はい?」
突然のクリスティアの発言に意味がわからない。
「ん?だから技を教え合うってのは義姉妹になることだよ」
なるほど、この世界、あるいはジーニィの世界ではそういう事なのか。しかし、どうにも話が飛んでいる。確認が必要だ。
「えっとーもしかして、ジーニィって強さで義姉か義妹か決まるものですの?」
「そうだよー」
あー、はい・・・ガチガチの戦闘民族でしたね。
もうこの際、姉でも妹でもこの際どっちでもいいんだが、この様子じゃクリスティアは引き下がる様子ないよなぁ。
それに技を教えあったら義姉妹とかもどうでもいいんだけどなぁ。
あれ?でもこの世界で技を教え合うってどうなんだろうねスキルになるのかな?
まぁ今は目の前の戦闘民族が先か。
「それじゃーノアはOK?]
「はい、いいですわ」
「じゃ!いくよ!年長者として、おねーちゃんの座は譲らないからね」
そう言うとお互い離れて構える。折角なので基本に帰って徒手だ。クリスティアも何もだしてないしな。
構えは基本的な半身の構えだ。右足を前ゆるく曲げて、左を後ろに膝をピンと伸ばす。
右手は胸の高さ左手はヘソの高さにし両腕は軽く曲げて指先は静かに伸ばす。
僅かに右足に重心を多めに置いて、心と体は静寂を纏い自然に力を抜き柔らかく置く。
「む、ノア、武器は出さないの?」
「必要になったら出すわ。武器がいつ、どこから出てくるか分からないのは怖い?」
ちょっと挑発してみる。
「まさか。じゃ、いくよ!」
そういうと地面を蹴って突撃してくる。よく洗礼されたクリスティアらしい真っ直ぐな一撃だ。だけどそれ故に動きがそのまま感じ取れる。
そのまま僅かに右足を外側にずらし軸、そこを中心にして回転する。ただそれだけでクリスティアの拳は空を切る。
「まだまだ!」
クリスティアは身体能力任せに、ターンして地面を蹴って襲ってくる。
右、左のコンビネーションで拳が出るが、見切って左から来た拳の肘の内側を右の手刀で受け止めずらし、
左の手刀をクリスティアの首筋に充て、その突撃してくる力のベクトルを変換させながら時計回りに回転して投げ飛ばす。
「くぅ!!」
地面に叩きつけられるも直ぐに立ち直り攻撃しようとしてくるのを今度はこちらから間合いを一気に詰める。
「―――――!」
急なこちらからの接近にクリスティアは驚き慌てて右の拳をだす。
その右の拳を外側に回り込んで腕と並行に体を並べると同時に、私の左の肘を相手の顎の真下につけ右の手刀で相手の軽く腰を抑える。
その後、左肘を中心にして腕ごと返すように回転させて相手の顎が浮き上がると全身は勝手に仰け反ってしまう。
そこから一気に足を入れ替えずに前進すれば、そのままクリスティアは体の制御を失って地面に叩きつけられながらすっ飛んでいく。
「うぐぐぅ・・・じゃ、見せてあげる。ソウルアーツを!」
そう、言いながら素早く立ち上がってくる。
素手ではあるが、とうとう本命が来るらしい。クリスティアが目を閉じて少しの間、集中すると一気に目を開く。
その瞬間クリスティアが僅かに発光して雰囲気が変わる。まるでバトル物の少年漫画の様だ。
地球で似たような事をする奴は・・・何人かいたな!
(―――――!!!速い!)
クリスティアの意識を感じ取って反射的に躱したけれど先ほどとは段違いの速さだ。
この速さでは普通に技はかけれない。
余計な事を考えていると追いつけなくなりそうだ。
数回打ち込んでくるのを相殺してるとかつて修羅場にいた時の感覚が戻ってくる。
クリスティアの攻撃の意識を完全に捉えると、脇の甘さが見えたのでそこに掌底に重心を込めて打ち込む。
自らの高速移動が仇になり派手にクリスティアは吹っ飛ぶが、そのまま重力を無視して飛び上がる。
そこから空中で何か溜めるしぐさをしてから両手を一気にこちらに伸ばすと光弾が飛んでくる。
ほぼ反射だけで躱すと爆音と共に自分がいた場所にサッカーボール程の穴が開いている。
一瞬、意識が光弾に向きすぎたことに気が付き、慌てて意識を相手に戻すと追撃はなく逆にクリスティアが力尽きて墜落していくのが見えた。
「クリスティア!」
慌ててエアロウイングで近づいてキャッチして、お姫様抱っこでゆっくり地面に着地する。
「え、へへ・・・負けちゃった」
「全く無茶するんだから」
「ノア・・・強すぎじゃない?結局、武器も魔法も使わせることが出来なかったよ」
「最後は出す暇なんてなかったのよ」
「そっか・・・。えへへ・・・ふぁ。ごめん、ものすごく眠くなってきちゃった。寝るね・・・」
「はい」
やれやれ全力すぎるだろう。しかしソウルアーツ凄い威力だな。消耗も激しすぎるけど。
そのまま休むのには丁度よさそうな大樹の下に座り膝枕でクリスティアを寝かせる。
悪さしそうな魔物はフライトゥンアイで威圧して片っ端から追っ払ていく。
優しいそよ風が私達を静かに撫でていく中、眠るクリスティアを眺める。
本当、寝てる姿は普通の少女なのにな。そう思うと、ふと美衣奈の事を思い出す。
あいつら元気にしてるかなぁ?
そんな事を考えながら、つい何となく銀色の頭を撫でてしまう。
膝で寝ている猫を撫でるように優しくしていると、とあるものが気になってしょうがない。
角というには短かいデコのデッパリだ。あんまり気になるので触ってみる。
「は、はうぅーーん」
え・・・?もっかい優しく触ってみる。
「はぁうぅぁぁん」
なんかエロイ声がでてくる。
あーこれって・・・もしかして角ではなく本当は触覚みたいなもので感覚器官が詰まってるのかな?
あんまり触って変な物に目覚めてもいかんのでこれ以上はやめておこう。
青い空を見上げながら優しい木漏れ日と心地よい風が吹く中でまったりしていると時間の感覚がなくなっていた。
それからどのくらい経ったのだろう?クリスティアが目覚める。
「うーん。おはよう、ノ・・・おねいちゃん」
「おはよう。クリスティア」
まぁそうなるんだろうなぁ。さて、じゃーあのソウルアーツを習ってみますかねぇ。
そんなこんなでソウルアーツの説明してもらったんですが、魂を燃やすとかなんとかで、説明は要領を得なかった。
最大の理由はこんな感じだ。
「えっとねー、こうやってギューッとしてからドッカーーーンって感じで魂を燃やすんだよ」
うん、なんど脳内再生しても意味が分からない。
なので実際やってるのを見てこちらで感じとるしかない。こういう時に共有の能力があれば一発なんだけどな。ない物を嘆いてもしかたない。
とりあえず、観察して今まで色んな技術を共有し覚えてきた記憶を統合し応用して答えを探す。
なんとなくの感じからすると今まで自分が得意としてきた心技の逆の様な気もする。
後は・・・そうだな地球にない物といえば大量の魔素であって、そこら辺をまとめて考えながらやってみる。
魔素を感じ取りながら一気に感覚を内側内側へと集中させる。いつもの外へ外への反対である。さらに周りから中に中にを意識を集中させる。
魔素を体内で圧縮させる感じにしていくと何か感覚が変わってくるのを感じる。
「ああ、すごい!すごい!もうソウルアーツが発動しかけてるよ!」
そう声を聴くと一瞬で集中力が切れたのか魔素は拡散していってしまった。
「ふぅ・・・今ので良かったのかな?」
「うん、すごくよかったよ。いきなりあそこまで出来るなんてやっぱ、おねいちゃんは凄いや!」
これを以上の事を戦闘しながら使っているクリスティアも相当すごいと思うんだが。
それからひたすら練習して僅かに発動するまではたどり付けた。
ソウルアーツは、ある種の魔素の使い方の別の形態とでも言った感じだろうか。
魔素を波動や流れにして魔力に変換するのが魔術だとすれば、ソウルアーツは魔素を限界まで凝縮して核融合の様な現象で別の力を生み出して使用する力。
しかし、やたら疲労感が出るのは何故だろうな、慣れてるクリスティアですらダウンする始末だし。
考えても分からないから、練習を優先するしかないな。おっと、そのまえにクリスティアの方を教えないとな。
教える側をクリスティアと交代して先ずは基本動作を教える。
流石は戦闘民族だけあって覚えは驚くほどに早かった。それに、普段から無意識で使ってる動作も混ざっているんだろう。
後は、練習を積み洗練させていけば更に強くなる。
そして投げ技については、型という形式で教えた。これも基本的な物は直ぐに覚えた。
ただ、本質にたどり着いていないので威力も強制力もさほどない。所謂、日本の古武術に伝わる "呼吸力" をまだ手にしていないのもある。
一応、技の理論を教えたが感覚派のクリスティアには無用の長物といえばいいのか、馬の耳に念仏と言えばいいのか、あの様子では理解していないだろう。
しかし、共有の能力なしで地道に武術を指導するなんて久しぶりだ。何年ぶりだろうか?
まだ一般人で道場に通っていた頃に師匠の手伝いとして、少年・少女の部を指導していた頃を思い出す。
今では、その技を異世界の異種族に伝えている。全く不思議なものだ。
師匠元気にしてるかな?もう結構な歳ではあるからなぁ。
ただ、その技で人を殺しもしてきたから道場に顔を出せた物ではないが、顔を出さないのも出さないで礼に欠くと言う物で心苦しくもある。
ふぅ、ちょっと柄にもなくセンチになってしまったか。
しかし、クリスティアは楽しそうに練習する。そんな姿を見ているとちょっと下り気味な気分も何処かにかき消されていった。
次回、第十三話「BAR 穴」どうぞよろしく。




