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ドラゴンレセプター九《ココノ》  作者: 配康
ココノ始動編
7/18

第7話

ココノはゆっくり入ることにした。

自分はドラゴンから力を得るようになったが、力を得ることと使えるようになるのとは別物らしい。病院では禁止されるまでもなく、使う機会もなかったし、全く使い方が分からなかった。

皆の前で飛んだのが初魔法であったが、どうして飛べたのだろう、あのポーズが良かったのかも知れないとも思う。サキに言われるまでもなく、チャンと使えている訳ではないことは分かる。

サキのようなヨーヨーさばきやスウのような射撃の腕前は相当の練習の成果であろうし、イツキがココノを抱えた時の連携も一朝一夕に身に付いたものとは思えない。

ドラゴンを宿すために生み出されたような話だったから、それなりの才能はあったのだろうとは思うが、機械仕掛けの改造手術を受けた訳ではない。成長に時間がかかることは当然だと思う。

ココノは腹中にドラゴンを宿してから、魔素が体内に流れるようになるまでの1ヶ月間、体が動かないまま過ごし、その後、正座のあとの足のしびれが全身に行き渡るような感覚が2ヶ月以上続き、少しずつ、本当に少しずつ体が動くようになっていった。

初めに言われた通り3ヶ月で体は動くようになり始めたが、とても「自由に」とは言えなかった。

詳しいことは分からないが、筋肉を魔素で動かす仕組みは普通の人間の筋肉が動く仕組みとは異なるもののようだった。一学期の始業式には間に合うかと思っていたら、日常の行動が自然なものとなるのに7月までかかってしまった。

リハビリにこれだけかかったのだ。8人分の能力が使えると言って、それぞれを専門にする皆には到底敵わないだろうと思う。

とにかく焦っても得にはならないことは確かである。


今日の会合は簡単な顔合わせと概要の説明のみでお開きとなり、このあと3時半からは部活の時間とのことだった。

ココノは体操部に所属することが決まっていた。フウの妹分という話だからというだけの理由ではない。リハビリの延長で、まずは自分の身体をより自由自在に操ることから始めるべきとの判断だ。体が自由にならなければ電磁砲の標準もまともに付けられない。

その場を解散して直ぐ、体操部の練習場である第3体育館へ向かった。ココノは今日は見学ということであったが、体操着の試着もしようということになった。

入院中はユルユルした服しか着たことがない。ほぼ寝たきり生活だったこともあり、ブラを付けたのも2ヶ月前が初めてだ。レオタードなどというピッタリした服を着るのは、そこに同性しかいないとしても気恥ずかしいものがあった。

「うわ、ココノって体型もハイスペックなのね」

飛行ユニットも装着せずに、いきなり8mの高さの天井にロケットパンチをお見舞いするというのは、人外の飛行能力を有するフウから見ても規格外に思えたが、クッキリと体の線を見せられると、またため息が出てしまう。ココノはフウよりは大きいが、小柄と言って良い身長だ。しかし小柄なのは身長であってバストではなかった。

ドラゴンが腹中にいる=妊娠状態にあることで、バストサイズに補正がかかっているのではあるが、それはフウも同じ条件だ。しかし補正がかかってもフウは身長以外も小柄であった。

二つの胸の膨らみは、何でもできる証拠とはならないものの、実は魔素の一時保存場所になっていて、彼女たちのスタミナに影響していることは彼女たちの知らない事実である。

話を戻そう。

ココノは5時半まで見学した。高等部のフウは近く大会もあるから、まだ練習を続けるが、ココノは今日はこれで寮に戻るようにと指示された。


寮の入り口は、敷地は同じだが、まず門のところで高等部と中等部が別れている。門限が異なることがその理由だ。

それぞれで学年毎の棟が並行して建ち、共同棟と二本の連絡通路で繋がっている形だ。

戻るまでに敷地に入れば自室にいようが他の寮生の部屋に泊まろうが、はたまた庭でテントを張ろうが、それは自由となっていた。

玄関は各棟にあり、どの玄関から入っても良い。学院もそうだが自室まで土足の西洋式であり、下足箱にラブレターや果たし状が入っているというイベントは発生しない。否、自室のポストに入っていることはある。

ココノは警戒しながらおもむろに門をくぐり、警戒態勢のまま共同棟の玄関から自室に向かった。

午前のことがあり、今はクラスメイト、特に名も知らぬお嬢様には顔を合わせたくなかった。共同棟から入いればココノの部屋は近い。

食事や入浴もある程度自由で、時間は決まっているが共同棟の食堂を利用してもよいし、自炊する者もいる。

ココノは共同棟の大浴場へ急いだ。この時間ならまだ風呂に入っている者はいないだろう。

昨日は遅かったし気疲れもあったしで、風呂にも入らず寝てしまった。それで、午前に皆から避けられたのは自分が臭っていたせいだと思うことにし、クラスメイトに会うより早く、真っ先に風呂に入ってしまおうと考えたのだ。

案の定、大浴場には誰もいない。一番風呂に違いなかろうと思われた。

入念に体を洗って、さて湯船に浸かろうとしたが熱い。一番風呂だからかも知れない。寝たきりの時は勿論、リハビリ中も暫くは介助なしでは入浴できなかったが、いつもぬるめのお湯に慎重に入れてもらっていた。こんな熱い風呂は初めてだ。

体を熱さに慣らしながら徐々に体を沈めていく。

本当は長湯が好きなココノだが、やっと肩まで入ったところで既に逆上せ始めていた。

皆が入った後ならば適温にもなっているだろう。改めてゆっくり浸かりにこようと思うココノであった。

次話予告

お嬢様再登場。世間話に花が咲く。

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