表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンレセプター九《ココノ》  作者: 配康
ココノ始動編
6/18

第6話

ココノは思い出した。

ココノが泣き止むまで待って、レイ司令の解説は再開された。

「どこまで話したか覚えているかな」

確か魔物が生きるために私たちの体を利用しているという話だったはずだ。

「魔物は人類が誕生するより早く繁栄の極致に達していた。先程皆が見せたような、自らが発する電気や電磁を利用した文明を築いていた」

この話は幼い頃に聞いたことがあるとココノは思った。

「魔物には色んな種族がいて、大した知性もなく魔素を消費するだけの粘体から、優れた知性を持ったものまで。また、それらの中には先ほど皆が見せたような特殊な能力を持っている者も多数いた」

これも本などで読んだことのあることだ。

「例えば腕に電磁砲が具わっている種族、しかしそれを見た当時の人類は電磁砲など全く理解できない。それは弓だと考え、弓使いの妖精エルフと呼ばれた」

あ、スウって本当にエルフなんだ。いや、人間と融合してるからハーフエルフか。見た目ハーフはミイ先輩のほうだけど。

「また、背中にX形の電磁バーニアを背負って飛行する種族もいた。これも仕組みは理解できない。彼らを見た人類は細く光る4枚の羽根で飛ぶ妖精と考え、ピクシーなどと呼ばれた」

フウ先輩だな。うん。フウ先輩の可愛らしさは確かにピクシーだ。

「西洋の多くの地域では彼らは人類と対立したが、東洋では逆に仙人として敬われた」

「はい、質問があります」

「なんだい」

「そのような扱いの違いは何故ですか」

「人類が西洋で発生し東洋へ広がったことと、気候が関係している。まあ自然の成り行きだ。詳しい歴史は学院の授業で学んでくれ」

「はい」

「さて、滅亡に瀕した彼らはドラコンの生き残りと共存するようになる。ドラコンは大気中の魔素濃度が致死レベルとなったことで一気に滅んだが、その魔素が届かない所にいた一部のドラコンは生き残っていた」

あ、それでか。ドラコンと言えば洞窟の奥深くや火山ガスの噴出する火口の中、または海中の龍宮に住むという伝説を聞いたことがある。なるほど、そういう理由だったのか。

「我々が今いる出雲の近海に龍宮があってね。まあ、君たちの腹中にいるドラコンの、生物学的母親が今も生存している」

「あの、そのドラコンには会えますか」

「いずれ会わせることになると思うが、今は無理だな」

早く会ってみたいという思いが湧いてくるが、待つことには慣れている。いずれ会えるなら焦ることはない。

「それで、龍宮のドラコンから排泄される魔素を利用すべく、龍宮と隣接して魔物が暮らす施設である龍宮城が作られている」

そこの魔物が私たちと融合した訳ね。ココノは察しが良くなってきた自分を嬉しく思う。

「出雲は古くから魔物と協調し、彼らの優れた科学技術を基盤として日本や大陸の国家と渡りあってきた訳だ」

「すみません。出雲は日本ではないのですか」

「ああ、学院の授業で習うのは日本としての歴史だからな。表向きは出雲は日本に国譲りして日本の一部になったことになっているが、出雲自体は独立と言っていいほどの自治権を持ったまま存在している。それは出雲から派遣された技術指導官が日本中で神様扱いされていたのを、今の天皇陛下の先祖を神とする集団に統治を委ねたんだね。出雲は科学技術はすごいが政治には疎かった。日本は龍宮城の持つ科学技術を自国のものとしたいが、強引に攻め込めば龍宮ごと失いかねないからね。友好的協力関係を築くという形にしたのさ。大陸に取られたりしないよう、対外的には日本の所有物として主張している訳だ。」

全国の神様が年に1回出雲に集まるって話は聞いたことがある。なるほど、そういうことだったのか。

「いや、地域としての出雲は確かに日本の一部だな。他県や外国からの移住も拒まないし、出雲から出て日本政府に勤めている者や他県から移住した者が出雲市議会の議院になってる者もいるし」

「では独立というのはどういうことですか」

「龍宮や龍宮城と直面繋がっていて、ドラコンと魔物と人間の協調のシンボルでもあるの出雲における魔物文明の総本山、海上空中研究所たる出雲大社こそが独立組織ってことになるね」

へー、出雲大社って単なる神社じゃなかったんだ。

「学院はどういう立場なんですか」

「学院かい。出雲と日本との協同出資だね。生徒の大半は日本中から優秀な人材が集まってくる。彼らには秘密にしなきゃならないことも沢山あるが、日本のために伝えたい技術も沢山あるしね」

なるほど、ココノはここまでの話は納得できた。話を進めてもらおう。

「しかし、人間独自の科学力も近年飛躍がすごくてね。出雲の存在価値も軽くなってきた訳だ」

「そうなんですか」

「魔物は空気中の魔素と水を取り入れてさえいれば生きられる。そうして自らが強力な発電機だ。そのゆえ火や煙は苦手でね。生物は多様性に富むが、決して単体で万能というものはあり得ないからね」

単体では、という言葉でココノは自分の置かれた状況を理解したようなきがした。

「つまり、このままでは出雲ごと魔物もドラコンも滅んでしまうから、3つを組み合わせることで生き残りを図ると」

「まあそういうことだね。だから、君たちに与えられた最優先任務は自分が生き残ることだ。他者を助け、他者と協力するのは当然良いことだが、自分の命を犠牲にしては絶対にいけない。単に3人分の命というだけではないからね。まあそこは追い追い分かってくれればいい」

入院中も、死にたくない、生きたいと思い続けてきたココノであったが、自分が生きるということに新たな意味を与えられ、使命感のような新たな気持ちで一歩を踏み出す思いのココノであった。

次回、レオタード&入浴シーン。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ