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ドラゴンレセプター九《ココノ》  作者: 配康
ココノ始動編
5/18

第5話

前言撤回。

ドラコンの設定など詳しく説明するつもりでしたが、今回は見送りとなりました。

ココノは飢えていた。

「一通りの自己紹介は済んだね。では私からドラゴンレセプターの概要について説明します。皆もまあ復習のつもりで聞いてください」

レイ司令が話し始めた。

「少し長くなります。椅子に座ってください。ココノは一番前の真ん中に。質問があったらすぐ手を挙げて、その場で質問してください」

「はい、司令」

早速手を挙げたのはココノではなくフウだ。

「フウ、どうした?」

「ココノはまだお昼を食べていません。食べながら聞いてもいいですか」

タイミングよくココノの腹が鳴った。

「えー、それは可哀想過ぎるよぉ」

食べられないことが世界最大の不幸とでもいう声をムウが発した。

「勿論だ。君たちは食事を取るのも仕事の内だからね。君たちが栄養を補給するのに遠慮は要らない。授業中の早弁も許される。イチイチ許可を求める必要はないよ」

「という訳だから、さっきのお握り食べながらでいいからね」

「全員座ってくれたようだね。では説明を始めよう」

徐に全員を見渡してから司令は説明を始めた。

「君たちのお腹の中にはドラゴンの玉子が入っている。その玉子はへその緒を介して君たちから栄養を受け取り、老廃物としての魔素を君たちの身体に排出している」

この段階でココノに質問はない。命を預かるというのは契約時の話に聞いたし、その後お腹に何か入っている感覚もある。

どうやって入れたのかは質問も想像もしたくない。今食べているお米とは入り口が違うことだけは確かだ。

「魔素はドラゴンにとっての猛毒だったが、その魔素を唯一の栄養とする生物が魔物だ。一般の動物がミトコンドリアで酸素をエネルギーに変換するように、魔物はミトコングラタンと呼ばれる器官で魔素をエネルギーに変換する。しかし魔素はドラゴンからしか発生しない。ドラゴンがほぼ絶滅し、魔素が消費一方となり、涸渇したことで魔物は急激に衰退した」

ここにもココノに疑問はない。かつてドラゴンや魔物が繁栄し、その後滅んだというのは、この世界の常識として幼い頃にも聞いた話だ。

「一部の魔物は自らの体内にドラコンを寄生させ、そこから魔素を得られないかと考えたが、魔素が猛毒となるドラコンが魔素の塊といってよい魔物に直接は寄生出来ない。そこで逆に魔物のほうが一般の動物に寄生することにした。実際は寄生というより融合だな。胎盤を持つ哺乳類と融合、その胎内にドラコンを定着させ、へその緒を介すことで魔素がドラコンを殺すことを防ぎながら魔素を取り入れる方法を考案し技術を確立した」

それは初耳だ。ドラコンのことは自ら契約にサインしたようなものだが魔物と融合することに合意した覚えはない。

「はい。質問があります」

「うん。何だい」

「魔物との融合を契約したのは私の親ということでしょうか?」

「契約という訳ではないが、君の親が魔物との融合を承知していたのは事実だ。君は生まれた時からドラコンレセプターになるべくして生まれている」

やっぱりそうか。九番目を示す名前が付けられたということは、名付けた時にはすでに決まっていたということだ。まあ、それは問題ない。生まれた時から王位継承が決まっている王子様のようなものだし、皆と仲間になれたのは嬉しい。それを不幸とは思わない。

「融合は生まれた時からのものですか」

「いや、君に魔物が融合したのは君が7歳の時だ」

「7歳?確か私の病気もその頃からって、まさか体が動かなくなったのはその融合のせいですか?」

「その通りだ」

えっ、えっ、えっ。あなたに病気を治してもらったと思ったら、病気にしたのもあなたなの?それは流石にショックなんですけど。

「じゃ、他の皆も同じように」

「いや、君の場合は特別でね。まず、魔物には色々な種族がいて、種族毎にエネルギーの使い方が異なっている」

ああ、それで皆の能力も個性的なのか。って、それは今どうでもいい。

「それで他の8人にはそれぞれ一種類の魔物が融合しているんだが、君にはその全種類が融合している」

「えっ、なんでまた」

「全部盛りにした詳しい理由は私も知らされていない」

「はあ」

「ただ、それによりミトコングラタンのエネルギー効率が高まったものの、人間の活動に必要なミトコンドリアの働きが低下、ドラコンから魔素の供給がされるまで、筋肉にエネルギーが行き渡らなくなったと考えられている」

ダブルショックである。

病気だと思っていたら、病気というよりエネルギー不足、要は腹が減って動けなくなってただけってこと?

それなら点滴に魔素を入れるとか何とか方法が無かったものか。

「魔素入りの点滴ではあったのだ。しかし魔素の生産はドラコンにしかできない。生産量にも限界があってね。君の生命維持に必要な量を投与するのがやっとだった」

そう言われても、辛い入院生活を思い出すと、到底納得できない。確かに点滴で賄えるようなら最初から人間と融合などする必要もないのは分かるのだが。

「君には寂しい思いをさせたね。騙す意図は全くないが、秘密にしなければならないことは沢山あってね。それは赦して欲しい」

ココノは泣き出していた。と、その時ココノの右に座っていたフウがココノの手を握ってきた。左のサキは肩に手をかけてきた。左後ろのミイと右後ろのムウはそれぞれの側の太股に手を伸ばしてきた。真後ろのスウが頭を撫でてくれた。

ココノはフウの肩に顔を預けた。フウは肩を貸し、サキはココノの背中をさすった。

これまで寂しい時はキュウの言葉で何とか気持ちを紛れさせてきたが、勿論そこにふれ合いはなかった。

寝たきり生活で忘れかけていたが、自分は人とのふれ合いを、人の温もりを、こんなにも求めていたのだと、今さらながら気づいた。

ココノはお握りを食べ終えたお腹のように、満たされていくのを感じていた。否、大きなお握り一つ程度では、お腹はまだまだ満たされてはいなかったのだが。

次話予告

組織の活動方針の説明回になります。

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