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ドラゴンレセプター九《ココノ》  作者: 配康
ココノ始動編
3/18

第3話

ココノは浮いていた。

次の休暇時間、先程のお嬢様軍団はココノの所へ来ないどころか、ココノからの話し掛けもあからさまに無視した。

どうやら先程の対応がお気に召さなかったらしい。畏縮して崇め奉るとでも思ったか。ああいう、権威を振りかざしてくるような輩は生理的に受け付けない。お嬢様もお気に召さなかっただろうが、ココノも全くお気に召していなかった。

まあ、クラスの中に気の合わない人がいるのは仕方ない。他にもクラスメートはいる。と思ったら、どうやらクラス全体がお嬢様軍団に牛耳られているらしい。申し訳なさそうな顔もチラホラ見えるが、誰もココノの相手をしようとはしない。完全にシカトを決め込んでいる。

それでもココノはめげない。仲間と呼べる人たちはこのクラスの外にいるはずだからである。

放課後、学院内の食堂いわゆる学食には大勢の女子がいた。基本的にクラス単位で島になっているようだ。ココノのクラスも大方ひと塊りになって座っていた。

クラスの皆とは一緒いられないだろうし、かと言って他のグループのことは余計に知らない。さて何処で食べたら良いかしら。

学食の入り口から先に進めないまま立ち往生している間にも時間は過ぎていく、すると食堂の奥の方から聞き覚えのある明るい声がした。

「あれぇ、ココノ?何入り口で突っ立てるの?もう食事終わったの?」

「あ、フウ先輩。コンニチは。えっと、いえ未だ」

フウはリハビリ中何度か見舞いに来てくれたことがある、高等部2年生の、現在ココノが知っている唯一の、魔法少女の先輩だ。

大っぴらに見舞うことはできないが、事前に誰かと繋ぎを作っておくべきだからと、魔法少女たちの中でも最も人当たりの良いフウがその役に抜擢されていた。

「ふーん」

フウは、ココノが何も言わない内から、ココノの事情を察した風で言葉を続けた。

「よし、ここはお姉さんに任せなさい」

フウの身長はココノより10㎝ほ低く小学生と間違えられるほど小柄だ。見た目は完全フウのほうが妹である。

ココノを連れて配膳カウンターに進むと

「お姉さん、ごめん、この子にお握り一つ作ってやってくんない。そう、私と同じで二人分のやつ」

暫く待つと大きなお握りが一つできてきた。

「いつもありがとね。あ、この子ココノっていうの。私の妹分だから宜しくね」

そういうと、今度はココノのクラスの島に足を運んだ。

「ここ、いいかしら」

「えっ、は、は、はい。ど、どうぞ」

声を掛けられたのは件のお嬢様だ。フウの顔を見て随分と慌てた風である。

ココノのはまだ知らないが、フウは昨年の高校総体で一年生ながら優勝したほどの体操の選手である。学院では知らない者のいない有名人であり、後輩の面倒見もよく絶大な人気があった。

「ココノがお世話になってるんですってね」

「えっ」

お嬢様の顔がみるみる青くなる。まさかココノがフウ先輩の知り合いとは。自分を敵に回せばクラスに居所を無くすのは造作もないが、フウ先輩を敵に回せば学院内に自分の居場所がなくなる。

「私の妹分が色々と迷惑かけるけど、優しくしてやってね」

「は、は、は、はい。勿論」

「ではココノ、皆もう待ってると思うから行くわよ」

そういうとフウはさっさと前に歩いていく。ココノはクラスの皆に軽くお辞儀をして、フウのあとを追いかけた足取りは軽やかであった。


いかにも、というていの秘密通路を抜けてたどり着いた部屋は天井も高く教室二つ分の広さがあった。入るなりココノは待っていた皆から盛大な歓迎を受けた。

ココノとフウを除いては七人の少女と、一人の男性は契約の時の彼がそこにあった。

一頻り少女たちからの歓迎の拍手を浴びたのち、男性がまず挨拶した。

「ドラコンレセプター指令部へようこそ。私は司令官のレイです。ドラコンレセプターや組織の説明は後にして、皆、先ずは番号順に自己紹介しよう。サキくん宜しく」

番号順と聞いて、ココノは「あ、もしかしてそういうこと?」と、あることに気付いたが、それは後から説明されると思って黙っていることにした。

「はい。ではご指名をいただきましたので僕からいきます」

サキくんと呼ばれたのはスラッとした体型で、何となく男の子っぽい雰囲気の美形であった。

「僕は高等部2年のサキです。ドラコンレセプター隊の隊長を任されています。主な能力は通信とこれです」

そういうとポケットから何かの塊を取り出した。どうやらヨーヨーのようであるが糸は付いていない。

サキはそのヨーヨーをポンと前に放り出した。当然放物線を描いて床に落ちると思われたそれは、見えない糸が付いているかのように、弧を描いてサキの足許を通過し背中の方から後頭部に回ったかと思うと、サキは一切動いていないのに、急に進路を変えてサキの手に戻ってきた。

まだ魔法を使ったことはないが、魔法少女としてここにやってきたココノである。サキのやったことが手品ではなく本当の魔法なのだと疑う余地はなかった。

「今のは超電磁ヨーヨー。体を磁石のようにしてって、あぁ説明は後回しでしたね。では取り合えず僕の自己紹介は以上です。あ、いや一つだけ。僕はこう見えて中身は男なんで、そこんとこ宜しく」

はっ?ここは女子校でありレセプターは女性と決まっているはずでは?

サキいきなり爆弾発言である。しかし、ココノ以外全員、それが当たり前のような顔をしている。ココノも取り合えずスルーすることにした。

「次はフウの番だね。フウの得意技はこれ」

そういうとフウは突如宙に浮いた。いつの間にか背中にX型の何かを背負っている。そのまま天井に頭が付くところまで上がると、前方宙返りをしてから着地もせずにそのまま後方宙返りをし、急降下で床にキックする形で着地した。

「えー、今のが雷打ライダーキックね」

いかにも体操選手らしい技だと思った。カッコいい、ココノも飛んでみたいなぁ。そう思いながら右腕を上に突きだして、左腕は胸の横で折り曲げる、漫画でよくみる姿勢を真似てみた。

アッという間にココノの足は床を離れ、そのまま相当な勢いで天井にパンチを食らわせていた。

さっきはサキの言葉にココノだけ目を丸くしていたが、今度はココノとレイを除く全員が目を丸くしていた。

次話で残りの六人を紹介します。

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