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ドラゴンレセプター九《ココノ》  作者: 配康
ココノ始動編
2/18

第2話

サブタイトルの付け方を考えておらず、取り合えず第○話で投稿します。

ココノは固まった。

ココノの傍で担任教師が何やら喋っている。今日からこのクラスに通うココノのことを紹介しているのだ。ココノの前には5列4段に整列した机、そこに座る少女たちの姿がある。彼女たちは決して睨んではいなかったが、ココノは蛇に睨まれたカエルよらしく直立不動の姿勢で固まっていた。

キュウが側にいないと思うと、どうも調子が出ない。

二年生の7月半ばという、どうにも中途半端な時期の初当校である。秘密を抱えながら仲良くなれるだろうか。不安が先に立ってどうにも体が固くなる。

否、秘密を抱える以前の問題で、実際はまだ自分も詳しい話は何も聞いていなかった。

契約した時の話では、動けるようになったら詳しい説明をしてくれるはずであったが、病院では話せないこともあるなどと言われ、退院後は全寮制の学院に入ること、他にも魔法少女がいるが一般的の生徒も多数おり、魔法少女であることは一般生徒や教師、寮のスタッフらは魔法少女について何も知らないこと。彼らには絶対秘密であること、ココノの生活費その他は全て組織から出るがお小遣いは期待できないこと、その程度の説明しか受けていなかった。

あの時キュウかと思って話していた人がココノ好みの渋い男性であったことは嬉かったが、その人が何者かも含め、ほとんど何も知らないまま連れて来られた形である。

さすがに退院当日から当校とはならず、まずは寮へとつれて来られた。

寮は個室であった。それは入院中と変わらない。少なからず残念な気もしたが、仲良くなれば他の寮生の部屋へ泊まることは自由とのこと、近い内に友達を作ってお泊まりしたいと期待に胸を膨らませたが、とにかくもう少し詳しい話を聞かなくては勝手に動けない。

退院が夕方で寮監からの説明がやたらと長かったため、自由になったのは夜の9時を回っていた。クラスメートやココノ以外の魔法少女との引き合わせは翌日行うとだけ説明されていたし、大人しく寝るしかなかったが。寝つきは最悪に近かった。

ただでさえ一人妄想に耽る日々を送ってきたココノはアレコレ余計な考えを巡らして身動きが取れなくなっていた。

その夜はまだ良かった。ココノには一人の時にも話し相手になってくれる相方がいて、妄想の暴走に歯止めをかけてくれたから。しかし縫いぐるみを教室に持ち込む許可は下りなかった。

「わわわわわわわ」

盛大に吃ってしまった。恥ずかしさに俯く。クラスの反応は確かめようもないが、かなり浮いてしまったに違いない。

「上を向いていこうよ」

そこにいないはずのキュウの声がした。キュウの声と言っても、ココノが演じているもう一人の自分の声というのがその正体であるから、縫いぐるみ本体は実は不要なのである。

キュウは、ココノが泣きそうになると、いつもこのセリフでココノを励ました。

仰向けで寝ていてるのだから基本上向き姿勢のココノは苦笑するしかなかったが、それでも悪化の一途を辿る病態の中にいて「私は上向きの女」と冗談めかすことは救いになった。

全くの気のせいではあるが、キュウの声が聞けたことでココノは少し落ちついた。否、それまで落ち込んでいたのが落ちついたのというのはおかしな気がする。ここは立ち直ったと言い直させてもらおう。

大きく息を吸いながら頭を後ろに倒し、見上げた。そこには見慣れぬ天井があったが、天井なら見慣れたものだ。

敵地のど真ん中からホームグラウンドに帰ってきたような心地がした。

息を吐きながら向き直し、ニコッと微笑んでみせた。

「私はココノです。長らく入院していたので世間知らずですが、皆さんと仲良くなりたいと思います。宜しくお願いします」

それだけ言って一礼し、担任が示した窓側の一番後ろの席に歩いた。

一時間目が終わって二時間目が始まるまで10分の休憩がある。今日の授業は午前中の三時間、午後からの予定は決まっている。友達作りに動けるのは、2回の休憩と学院内の食堂での昼食時のみ。

最初の休憩、さてどうしようと考えていたところへ5人の少女がココノのところへ集まってきた。

いかにも良いとこのお嬢様とお付きの者たちといった雰囲気だ。

そのお嬢様はココノの机に腰掛け、お付きの者はぐるりとココノを囲い込むような形で立っている

「ココノさんでいらしたかしら」

「はい」

「先程のアレ、面白かったわよ」

「はい」

「長いこと入院してらしたんですってね」

「はい」

お嬢様は名乗りもせずに一方的にココノに言葉を投げ掛ける。

完全に上から目線で威圧感がすごい。自分の情報は一切与えずにこちらの情報を根掘り葉掘り聞いてくる。こちらからの発言は一切受け付けない空気がどんよりと漂っている。

否、相手の情報は与えられている。自分だけ特別偉いと思い込んでいる嫌な奴だということは分かる。

休憩時間が終わるまでその態度は変わらなかった。

イライラが頂点に達し、今にも立ち上がってお嬢様に一発かましてやりたくなったところで、またキュウの声がした。

「おい、今は我慢だぜ」

「分かってるわよ」

しかし、机の下で長いこと強く握りしめられていた拳は、中々動いてくれなかった。

次話、ココノを含めた9人のドラコンレセプターの紹介シーンです。

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