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第六三話 元・《魔王》様と、護衛任務


 時が経つのは早いもので、修学旅行を終え、王都に帰還してから、一週間が経過した。


 この一週間はまさに平和そのもので、今までの騒動がまるで嘘だったかのように、穏やかな時間が流れている。


 現代に転生してから一六年ほど経過したが、これほどのどかな時間が続くのは、いつ以来だろうか。

 本日もまた、学園での一時は実に平穏なものだった。


 ……もっとも。


「シィイイイイルフィイイイイイイの馬鹿はどこだぁああああああああああああッ!」

「だわわぁあああああああああああっ!?」


 この二人は、相も変わらずやかましかったが。


 放課後の教室。皆が学業に疲れ、伸びをしたり欠伸をしたりする中、シルフィーが赤髪を引っ掴まれ、オリヴィアに引きずられていく。


「もはや我がクラスの風物詩って感じ、ですわねぇ」

「そうね。最初はビックリしてたけど、もう慣れちゃったわ」


 肩を竦めつつ、連行されるシルフィーを見つめるイリーナとジニー。

 そうしていると。


「パパ~」

「今日も一日頑張ったよ~」


 俺の両サイドに、二人の女子が飛びついてきた。


「撫でて撫でて~♪」

「褒めて褒めて~♪」

「本日もお疲れさまでした、ルミさん、ラミさん」


 はにゃっとした顔で、気持ち良さげに息を唸らせる二人。その姿は愛らしい少女のそれだが……何を隠そう、この二人は超古代にて滅んだはずの、《精霊》である。


 学内にて発生したとある事件に関わったことで、俺達は彼女等に出会い……

 まぁ、なんやかんやあって、今に至る。


「それにしても、最初はどうなることかと思いましたが……お二人とも、実に良く、学園に馴染まれましたね」

「そうそう~」

「修学旅行、楽しかった~」

「班活動、最初は不安だったけど~」

「カーミラもヴェロニカも、すごく優しかった~」


 カーミラと、ヴェロニカ。

 二人も我がクラスの生徒であり、各々、曰く付きの女子である。


「おや、ヴェロニカさん。本日はもうお帰りですか?」


 教室から出て行こうとする、金髪の女子。ヴェロニカに声をかけた。


「あれから、家族との関係にケリがついてねぇ。今日から家に早く帰ろうと思うの」

「おぉ。それはなによりにございます」

「ふふ。全部貴方のおかげよぉ。いつか借りは返すからねぇ? アード・メテオール」


 穏やかに微笑みながら、教室をあとにする。


 公爵家の令嬢たる彼女と、その家族とは、ちょっとした面倒ごとがあった。

 けれども、どうやら良い方に向かったようで何よりである。


「あ、あの。アード、君」

「おや、どうされましたか? カーミラさん」


 この銀髪の少女が、カーミラだ。

 この娘はイリーナと同じで、《邪神》の末裔であり……


 その身に流れる血は、大半が《魔族》である。


 ある村の因習に囚われていた彼女を俺とイリーナで救い出し、今に至る。


「ちょっと、今日の魔法学の授業で、わからないことがあったん、だけど。教えてもらってもいい、かな?」

「えぇ。もちろんです。イリーナさん、ジニーさん。帰宅までの時間が少し延びますが、よろしいでしょうか?」

「もちろんよ! むしろあたしも教えちゃうわっ!」

「私も、復習ついでに参加させてもらいましょうかねぇ~」

「ルミも~」

「ラミも~」


 皆と共に、楽しく学業に勤しむ。

 実に、素晴らしい一時だった。



 完全下校時刻。

 学園内に鐘の音が鳴り響き、生徒達に帰宅を促す。


 それを耳にしながら、俺はイリーナ、ジニーと共に校庭の中を歩いていた。

 シルフィーはまだ、オリヴィアにお説教を食らっているため、この場にはいない。


「明日は水泳の授業があるんだっけ?」

「ふふ。私の水着姿で、アード君を悩殺しちゃいますわ♪」


 他愛のない会話をしながら、寮への帰路を行く。

 完全完璧なる平穏。

 いつまでも浸かっていたいぬるま湯のような時間。

 だが――


 どうやら大いなる意思は、俺を放っておいてはくれんらしい。


 校庭内に、フルプレートの鎧を着込んだ集団を発見したと同時に、俺の第六感が危機の到来を叫んだ。そしてその予感通り、彼等はこちらへと近づいてきて、言った。


「アード・メテオール殿。イリーナ・リッツ・ド・オールハイド殿。陛下がお二人を呼んでおられる。ただちに王宮へ来られたし」


 まさかまさか、断るわけにもいかない。

 俺は嫌な予感を覚えつつも、イリーナを伴って王宮へ向かうのだった――


   ◇◆◇


 ラーヴィル魔導帝国首都、ディサイアス。


 国内随一の都市面積を誇り、首都の名に恥じぬ繁栄振りを見せるこの地には、女王陛下の居城が存在する。


 都市のちょうど中央に構えたそれは女王の威光を示すかの如く、極めて豪奢であった。


 敷地面積も相応に広大だが、その全てに完璧な手入れが行き届いている。

 中庭の景観はまさに芸術的。腕のいい庭師を何百人も雇って造らせた自慢の中庭であると、女王本人が語っていた。


 中でもとりわけ景観が素晴らしい場所には、観覧用の椅子とテーブルが設けられている。

 普段はここで庭の美麗さを眺めつつ紅茶など啜り、政務の疲れを癒やしているとのことだが……


 今、女王ローザを含めた三名の立会人が眺めているのは、美しい景観ではない。

 二人の魔導士……即ち、俺と対戦者の戦いであった。


「ふぅむ。やはりアード・メテオールの力量は規格外じゃの。弱冠一六にして、《第七格(セプタゴン)》を相手に互角の勝負を展開するとは」


 テーブル席につく三名の一人、美しき女王・ローザが、関心した様子で呟いた。


「ふっふん! あったりまえじゃないの! あたしのアードは無敵なんだからっ!」


 三名の一人、イリーナが自慢げに豊かな胸を張った。

 そして。


「ぬぅうううう……! なにをもたもたしておるのだッ! 最上位の魔導士がその程度の小僧に手間取るんじゃあないッ!」


 観戦者の一人にして、この戦いを仕組んだ男。

 老齢の宰相、ヴァルドルが苛立ちを露わにして叫ぶ。


 叱咤された男……目前の対戦者である魔導士が、こちらの攻撃魔法を防ぎつつ苦笑する。


 齢四〇にして、魔導士の最上位、《第七格(セプタゴン)》へと昇り詰めたこの男、どうやらただ腕が立つだけの脳筋ではないようだ。


 この戦いに勝利することで得られる栄誉(、、)と、背負わねばならなくなるリスク。それらを天秤にかけ、正確な判断を下すことが出来る人間だ。


 つまり、リスクが高すぎるため、あえて負けようという考えが出来る男であった。


 ……それゆえに、戦いは拮抗している。

 何せ、こちらもわざと負けようとしているのだから。


「……その歳で上級の防御魔法を無詠唱とは。さすが大英雄の息子か」

「いやいや。最年少で《第七格(セプタゴン)》に昇り詰めた貴方様には劣りますよ」

「いやいや。最年少記録など、君にすぐさま破られてしまうだろうよ」

「いやいや。そんなことは」

「いやいや。間違いない」

「いやいや」

「いやいや」


 激しい攻防の最中、我々は互いを褒め合う。

 敗北前の、前振りとして。


 ……まったく。この男、実に出来ている。

 こちらの思考を完璧に読み切り、敗北させぬよう巧妙に妨害してくるのだ。


 先刻の一合など、称賛に値するものだった。こちらが自然な形で転び、防御魔法が使えぬような状況をわざわざ作って相手の攻撃を受け、敗北を喫する……という直前、尋常ならぬ速度でこちらに(、、、、)防御魔法を発動。敗北を阻止してきた。


 長いこと生きてきたが、これほど正確に思考を読まれたのはいつ以来であろうか。


 この男、間違いなく傑物である。

 果たして、俺はこいつに敗北することが出来るのだろうか……?


 と、ほんの一瞬、不安を覚えた矢先のことであった。


「ぬわっ!?」


 攻防の最中、突然、男が後方へと吹っ飛ぶ。

 こちらの魔法によるもの、ではない。奴は俺に攻撃魔法を仕掛け、その直後、なぜか大仰に吹っ飛んだのである。


 そうして地面をゴロゴロと転がり、止まった先で苦悶を漏らしながら、


「ぬ、うぅ……! な、何をしたのだ、アード・メテオール……!」

「……は?」

「ま、魔法陣の顕現は確認出来なかった……! にもかかわらず、このダメージ……!」

「いや、ちょっと」

「た、立てぬ……! く、悔しいがこの勝負、当方の敗北だっ……!」


 いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。

 何を言ってるのだ貴様。


「おぉっ! さすがアード・メテオールじゃ!」

「魔法陣を顕現させずに魔法を使うだなんてっ! やっぱりアードはすごいっ!」

「いや、ちょっと待ってください。私は何もしていないのですが」


 冷や汗を流しつつ、弁明の言葉を続けようとするのだが。


「な、何もしていない、だと……!? 先ほど見せた未知の技術は、君にとって何もしていないに等しい、つまらぬものだというのか……!? な、なんという天才だ……!」


 対戦者の男が、俺の発言を極めて厄介な方向性へとねじ曲げてしまう。

 それゆえに。


「やはりアード・メテオールこそが此度の任務(、、、、、)に相応しいのうっ! もはや異存はないな、ヴァルドルよ?」

「ぐぬぬぬぬ……! イ、インチキだっ! そう、何かインチキをしたに違いない!」


 ヴァルドルが皺塗れの顔を真っ赤にして怒鳴った。彼は初対面の頃からずっと、何がそんなにも気に入らんのかは知らないが、俺のことを目の敵にしている。


 だが、今はそれが、実に好都合だった。


 素晴らしい。ありがとうヴァルドル。助け船を出してくれて。

 俺は彼の発言に、全力で乗っかることにした。


「そ、その通りでございます、ヴァルドル様っ! これはインチキですっ! 私は――」

「そう、まさにインチキ。アード君が行った魔法は我々にとって、まさしくインチキとしか言いようがない、規格外の内容でありました……」


 こちらの思惑を、対戦相手がまたもや潰してきた。

 その結果。


「くっ! ちょ、調子に乗るでないわ、アード・メテオール! 儂は絶対に認めんぞ!」


 負け惜しみのように吐き捨てて、ヴァルドルはこの場から遁走する。

 それに併せて、対戦者もまたいそいそと離脱した。

 その際、奴はこちらをチラリと見やり……視線だけで、己が意思を伝えてきた。


『上手な負け方を学んだ方がいい。我々にはそういう技術も必要だ』


 ……心の底から思う。

 敗北が知りたかった、と


「ヴァルドルの意見はもはや関係ない。これにて事前の話通り、アード・メテオール、そしてイリーナ。そなたらがわらわの護衛役(、、、)じゃ」


 にこやかな表情でそう語ると、女王ローザは優雅に紅茶を啜った。

 そう、先ほどの戦いは、彼女の護衛任務を請け負う者を決めるためのものだったのだ。

 ……脳内にて、今に至るまでの出来事がフラッシュバックする。


 騎士に連れられ、ローザに対面してからすぐのことだった。


「宗教国家・メガトリウム。この名は知っておるな?」


 開口一番、女王の口から放たれた問いに、俺とイリーナは首肯を返した。


 宗教国家・メガトリウム。大陸の中心部に位置するこの国は、さまざまな意味で個性的である。

 まず国土面積。基本的に国家というものは複数の大都市を有するものだが、メガトリウムは一つの小さな街程度の国土しか有していない。


 しかしそれでいて、大陸内における絶対正義であり、国際社会において最大の発言力を誇っている。


 なぜか?

 このメガトリウムが、世界最大の宗教……統一教の総本山だからだ。


《魔王》崇拝が文化の根幹を支配する現代において、教会の権限は極めて強い。そんな教会の元締めゆえに、メガトリウムは特別中の特別、といった立ち位置にある。


「……それで。メガトリウムと我々の呼び出しは、どのような関係を持つのです?」

「うむ。近々、かの国にて会議が行われる。我がラーヴィル魔導帝国を始めとした、大陸の覇者と呼ぶべき五大国。その全ての首脳が一堂に会する……極めて重大な会議じゃ」


 この時点で俺は、呼び出しの理由を察することが出来た。

 賢いウチのイリーナちゃんもまた、同様であったらしい。


「あたし達に護衛を頼みたいってことねっ! そうでしょ、ローちゃん!?」

「うむ。此度の会議が秘密裏に行えるものであったなら、そなたらを煩わすこともなかったのじゃがな。会議の末に決める内容がまぁ~、大陸全土に影響するものゆえ、大々的に会議のことを発表せざるを得んのじゃ」

「……決める内容、とは?」

「五大国間における平和条約。互いに不可侵を貫くのは当然のこと、あらゆる機密事項の共有、技術提供などなど……メガトリウムを中心として、大陸を一つの国家に纏めるような条約となっておる」

「それはなんとも、大胆な内容ですね」


 ラーヴィル魔導帝国を含む、五つの国家が大陸の覇者であることは、先刻彼女が述べた通りである。これら五大国は古来より大陸の覇権を巡って争い合っており、依然として決着はついていない。

 そんな五大国が一つに纏まる理由があるとしたなら――


「ここ最近、《魔族》の活動が活発化しているとは聞きますが。大国同士が手を結ばざるを得ぬほどのレベル、だったのですね」

「うむ。我が国にはそなたを始め、数多くの英雄がおるゆえ、大事はさほど起きておらぬが……他国では結構な事件が起きておる。密偵が得た情報によると、ある国では《魔族》による大規模な儀式が行われ、都市が一つまるごと失われたという」

「……なるほど。もはや争い合っている場合ではない、と」

「左様。このままではいずれ、どこかの国で再び《邪神》が復活するじゃろう。そうなる前に手を打たねばならぬ。その一環として、此度の平和条約を教皇猊下直々に提案されたのじゃ」


 教皇とはメガトリウムの王であり、統一教の頂点に君臨する聖職者である。

 現代において、教皇の意見は民意そのものとされ、逆らうことは難しいという。

 とはいえ、此度の案件に関しては五大国の総意もあって、すぐさま内定したらしい。


「もはや大国同士で争っている場合ではない。よって我等は手を取り合うことにした。民衆はこの条約を受け、対《魔族》という目的のもと一致団結するじゃろう」

「国同士だけでなく、民衆同士の繋がりも強化する……となれば、なるほど、確かに秘密裏に会議を行うことは出来ませんね。しかしそうなってくると、《魔族》によるテロ活動などが推測される。ゆえに護衛が必要となるため……我々を選んだ、というわけですね」

「左様。そなたら以上に信用出来る者達はおらぬからのう」


 この褒め言葉を受けて、イリーナは素直に喜んでいたが……

 俺は真逆だった。


 正直、護衛任務など受けたくない。それがもたらす結果は、きっと悪目立ち以外のなにものでもなかろう。


 どうせアレだ。護衛の任を果たすことによって、今回も望まぬ大活躍をして、国内はおろか大陸内にさえ我が名が轟いたりするのだろう。


 そうなれば必然、我が姉貴分たるオリヴィアは、俺=《魔王》という確信を深め、実に素晴らしい笑顔を見せてくれるに違いない。


 それだけは絶対に阻止せねばならぬ。


 そう考えた俺は、なんとか任務を受けぬための言い訳を考えようとしたのだが……

 その直前のことだった。


「畏れながら、女王陛下。このヴァルドルめは、アード・メテオールの同行に反対いたします」


 ローザの傍に控えていた宰相、ヴァルドルが声を上げた。


「反対? なぜじゃ?」

「は。此度の会議、彼の者の同席は相応しくないかと」

「相応しくない?」

「左様にございます。アード・メテオールには同席の資格がございません。イリーナ男爵令嬢はそれを有しておりますが。……理由は言わずともご理解いただけますでしょう?」


 ほんの一瞬、我々の顔に緊張が走る。


 ……この男、ヴァルドルもまた、イリーナの正体を知っている。今し方の発言はそれを示すものだった。


 イリーナはただひたすら可愛いだけの、美少女エルフではない。

 彼女とその父、ヴァイスの一族は《邪神》の末裔であり……


 このラーヴィル魔導帝国における、真の王族なのだ。


 ローザはいうなれば影武者である。本来はイリーナの父にして、英雄男爵の異名をとるヴァイスこそがこの国の王であり、彼の娘であるイリーナは、王女という立場にある。


《邪神》の末裔が王族であると知られたなら国家存亡の危機となるゆえ、ラーヴィル魔導帝国は古来より表の王族……影武者達を、裏の王族がコントロールして政治を行うという、極めて特殊な機構を取り入れていた。


 それを思えば確かに、イリーナは会議に同席する資格を持っていると言えよう。

 なにせ彼女は、本物の王族なのだから。


「一方で、アード・メテオールはただの平民にございます。此度の会議には各国の首脳陣も参られるわけですが……その護衛は皆、やんごとなき出自でありましょう。そうした中、陛下のみが平民などを連れ歩いているとなれば……これはもう、国家全体の恥かと」


 その通りだ。いいぞヴァルドル。お前は完全に正しい。

 ここは一つ、奴の意見に乗らせてもらおう。


「ヴァルドル様のおっしゃる通りかと。私のようなただの村人を護衛にしては、女王陛下が他国の首脳陣に舐められてしまいます。よって私は護衛の任から外――」

「ふぅ~む。それならばアード・メテオール。そなたは今より公爵じゃ」

「「はぁっ!?」」


 俺とヴァルドルの声が、同時に響きわたった。


「いやいやいやいや! 何をおっしゃいますか!」

「平民がいきなり公爵!? そんなもの、暴挙どころではありませぬぞ!」

「え~? しかし、それで全て解決じゃろ? 出自が問題ならば変えてしまえばよい。よってアード・メテオール。そなたとそなたの一族は今より公爵家じゃ」

「「いやいやいやいやいやいやいや!」」


 またもや、俺とヴァルドルが同時に声を上げた。


 一方で、イリーナは関心したように、「さすがローちゃん! 頭いい!」とか言ってるが、こっちからしてみれば馬鹿にもほどがある。


 ……それからまぁ、頭が痛くなるような話し合いを続けた末に。


「このヴァルドルめが、完璧な出自の、完璧な護衛役を用意しております! 彼とそこな平民を争わせ、勝者となった者が護衛の任を負う! 結果はどうであれ、アード・メテオールは平民のまま! これでよろしいな!?」


 そういうことになった。


 ……で、現在。


「いざゆかん、宗教国家・メガトリウムっ!」

「あたしとアードにかかれば、護衛任務なんてちょちょいのちょいよっ!」


 こういうことになったわけだ。


「そなたらが護衛役である以上、恐れるものなど何もないっ! 此度の一件は観光旅行みたいなもんじゃっ!」

「今回の旅行はゆっくりと羽を伸ばせそうねっ!」


 肩を組んで楽しげに笑う二人を見つめながら、俺はため息を吐いた。

 かくして。

 俺は護衛の任を果たすべく、女王達と共に宗教国家へと赴くことになった。


 ……どうしてこうなった?




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