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第三〇話 元・《魔王》様と、予想外な展開

 結局のところ、一日目はシルフィーが起こした騒動を除けば平穏無事に終了した。


 そして一夜明け、学祭二日目が開幕。


 本日も気持ちの良い青空が広がり、さんさんと輝く太陽が地面を照らす。

 客足は一日目に比べて増加傾向にあり、その賑やかさもまた増す一方である。

 そんな中を、俺は一人、警邏して回っていた。本日からは基本的に単独行動となる。シルフィーがクラスの出店内にて待機を言い渡されたため、その穴をイリーナが埋める形となった。無論のこと、彼女には常時監視が付けられており、何かあれば即座に連絡がくる。


 とはいえ。現時点において、《魔族》達はその存在の片鱗さえも見せていない。

 事前に送られてきた脅迫状は、偽物かなにかであったのだろうか。


 奴等の動向に疑念を抱きつつ、学内を回っていく。

 そうしていると。


「はぁ~。一時間待ちとかマジかよ。めんどくせぇ」

「まぁ、しょうがねぇだろ。高級食材使った料理を格安提供なんて、滅多にねぇんだから」

「だよな~。ま、適当にだべって待つとすっかね」


 ガヤガヤとした声の群れが、鼓膜を震わせる。

 そちらに目をやると、一件の出店に並ぶ長蛇の列が確認できた。

 途端、先刻耳に入った声が、下心に満ちたものであることを理解する。

 彼等が一時間以上も待って入りたい店。その名は――


 ビキニ少女喫茶である。


 彼等は高級食材など目当てにしていない。食欲ではなく、性欲を満たしに来たのだ。

 この、我がクラスの出し物に被りまくっている出店を運営しているのは――


「おやおやぁ? 大魔導士様の息子さんじゃないですかぁ。こんなところになんの用?」


 思考中、明らかな侮蔑の念を孕んだ声が、こちらへと飛んでくる。

 A組の生徒達であった。

 その全員が貴族で、五人固まり、こちらへ敵意溢れる視線を向けている。


「……特段、理由はございません。警邏の最中、偶然こちらを通りかかったまで」


 俺の返答に、彼等のリーダーが鼻を鳴らして笑う。


「どうだか。卑しい平民のことだ。我々の店舗を視察にでも来たんじゃないのか?」


 我々の店舗。その言葉通り、ビキニ少女喫茶はA組が運営するものだ。

 我がクラスのアイディアを大胆に盗んだだけ……であれば問題はないのだが、聞くところによると調理担当者に一流のシェフを起用し、従業員たる少女達も王都から選りすぐった美形揃いと聞く。


「……それにしても。A組の皆様は随分と資金運用がお上手なようで」


 学祭の出し物は各クラスに支給される支度金の範疇でやりくりしなければならない。

 それなりのものを出したいなら支度金だけでは足りないため、金を増やす必要がある。

 ゆえに我がクラスでも先物取引などを行い、資金を倍額へ増やしたわけだが……

 A組の店舗事情を思えば、支度金は八倍程度に増えていると予想される。


「この短期間でいかにして潤沢な資金を得たのか。ぜひともご教授願いたいものですね」

「ふん。平民如きが貴族の資金運用法を知ったところで宝の持ち腐れというものだ」


 嘲笑してくる。が、その悠然とした顔には一筋の汗が流れている。

 なんともわかりやすい。不正行為をして金を水増ししたと、自白したようなものだ。


「……では、私は警邏中の身ですので、これにて失礼」

「せいぜい気張ることだな。まぁ、どう足掻いても我々の勝ちは揺るがないけどね?」


 あからさまにこちらを見下した笑い。それを背中に受けながら、俺は嘆息する。

 ちょっと叩いてやれば、いくらでも埃は出てくるだろう。そうすれば奴等を失格処分へと追いやることができる。しかし……あえてそれはやらん。


 このまま、相手が有利な状態のまま、勝負を続行する。そのうえで勝つ。

 そうせねば気が済まぬ。


 ……どうやら俺も、少々熱くなっているようだ。

 自然と、足が我がクラスの出店へと向かう。


 お色気メイド喫茶。これ以上なくわかりやすい看板が掲げられたその店には、A組のそれと比べても遜色ないほどの行列ができていた。


「ふむ。これは、入るのに時間がかかりそうだな」


 皆の働きぶりなどを視察しようかと思ったが、これではな。

 A組の連中にも言ったことだが、警邏中ゆえ、そこまで時間は割けぬ。

 盛況を確認できただけ、マシとしよ――


「うぉおおおおおおおおおお! なにしやがるのだわ、ゴラァアアアアアアアアアッ!」


 ……聞き慣れた馬鹿の声が轟いた直後。

 店の壁を突き破る形で、黄金色の奔流が駆け抜けていった。

 予定変更。不躾を承知で、俺は列に割って入り、待機客に謝罪しつつ店内へ。

 瞬間、俺の目に一人の少女が映る。

 露出度高めの改造メイド服を纏った馬鹿……シルフィーである。背伸びしまくったちんちくりんといった姿の彼女は、一人の客に対し聖剣・デミス=アルギスを構え、叫ぶ。


「アンタぁああああああああああ! 今アタシのお尻触ったでしょおおおおおおおおおおおおッ! 痴漢野郎には死の制裁をくれてやるのだわぁああああああああああッ!」

「ひぃいいいいいいいいいいいいいいいい!?」


 なんか、昨日も似たような光景を目にしたな。

 ……ともあれ。馬鹿の騒動を割って入って鎮圧し、狼藉を働いた客に関しては出入り禁止処分を言い渡してご退場願った。

 馬鹿のせいで空いた大穴については……仕方ないので、俺が魔法でなんとかした。


「す、すごい……! まるで時間が巻き戻ったみたいに……!」

「じ、時間操作までできるとか、アード君マジパないわ……!」

「あぁ、結婚したい……! 切実に結婚したい……!」


 改造メイド服姿の女子達が、熱烈な視線を送ってくる。


「……そんなにたいしたことはしておりませんよ。回復魔法の術式を少しばかり弄っただけのこと。これしきであれば、皆さんもできるようになります」


 そのように言い訳をした後、シルフィーに説教を食らわせる。

 十分に反省したところを見届けると、俺はため息をついて。


「では、私はこれにて失礼――」

「そんなこと言わないでくださいよっ! せっかくいらしてくださったんですし、私達のおもてなし、ぜひとも受けてくださいっ!」


 爽やかな笑顔と共にジニーが歩み寄ってきて、腕を組んでくる。

 そのままこちらの腕を自身の豊満な乳房へと押し付けてきて……肌色の双丘に腕が沈んでいく様子と、それに伴う極上の柔らかさが、理性を侵食する。それゆえ、


「わ、わかりました。では、ちょっとだけ……」


 咄嗟にこんなことを言ってしまった。

 ジニーはどこか黒さを感じさせる微笑を浮かべると、


「では皆さん! 訓練通りに行きますわよ! アード君の一〇〇人ハーレムに入れるかどうか、全てはここで決まると思いなさいっ!」

「「「イエス・マム!」」」


 それはまるで、統制された軍隊のようであった。

 手の空いている女子達だけでなく、接客中の女子さえも職務を放棄し、流麗かつ無謬の動作で躍動する。全ては、俺をもてなすために。……接客を投げ出すのはいかんだろう、というツッコミを入れられぬほど、女子達の顔には気迫が宿っていた。


 それはまるで、獲物を狩らんとする肉食獣のようで。


「まずはご挨拶っ! せ~のっ!」

「「「お帰りなさいませご主人様っ!」」」


 全員が一列に並び、一糸乱れぬ調子でお辞儀。……重力に従って地面へと垂れる乳房を強調しているのは、きっとわざとであろう。普段ならばそのエロティックな姿に、僅かながらも情欲の念を禁じ得なかったであろうが……


「続いて、お席にご案内っ!」

「「「イエス・マムっ! こちらへどうぞ、ご主人様っ!」」」


 全員、目が血走ってて怖い。肉食獣の群れに放り込まれたような気分だ。

 その格好こそエロスに満ちあふれたものだが……性欲を刺激されないのは、彼女等の下心が丸見えだからか。


「「「ご注文はなんでしょうかご主人様っ! ドリンク? ご飯? それとも、わ・た・し? わたしがお勧めですよっ! ご主人様っ!」」」

「……ではドリンクをお願いします。オレンジジュースを一つで」

「「「わかりましたっ! 特濃ミルクですねっ! わたし達のおっぱいをどうぞっ!」」」

「誰もそんなの頼んでませんが!?」


 大勢の女子達が、こちらの全身に胸を押し付けてくる。

 これはもはや、おもてなしという名の狩りであった。

 そんな乱痴気騒ぎの中、運命の悪戯か、イリーナちゃんが入店し――


「なっ、ななな、なにしてんのよーーーーーー!?」

「ご主人様へのご奉仕ですが、なにか?」


 ジニーとの舌戦が繰り広げられた末に。


「あ、あたしだって、ご奉仕ぐらいできるもんっ!」


 そう叫んで店の奥へと消えていき、少しして……


「ど、どう? 似合う、かな?」


 ジニーに対抗してのことだろう。イリーナちゃんが改造メイド服を纏い、やってきた。

 その姿が晒された途端、野郎共の歓声が飛ぶ。

 改造メイド服は、以前ジニーが見せたデザイン画の通りに制作された。

 上はマイクロビキニとメイド服が融合したような斬新かつ前衛的なデザインで……

 イリーナの白くて滑らかな肌と、豊かに育った乳房が大胆に露出。


 隠すべきところがもう少しで見えてしまう。そんな危うい状態である。

 その一方で、下に関してはもはや何も隠してはいない。スカートなどあってないようなもので、柔らかそうなお尻と黒いTバックの下着がほとんど丸見えである。


 ……彼女の姿を見て、前屈みになっている野郎共の眼球を、ことごとく抜き取ってやりたい。こ、こんな破廉恥な格好、お父さんは認めんぞ!


「イ、イリーナさん。ふ、普通のメイド服に着替えてらっしゃい」

「やだっ! この格好でご奉仕するのっ!」

「し、しかし、恥ずかしいでしょう? その格好は」


 そう述べてみると、イリーナは顔を僅かに赤らめて、こちらから目を外す。

 そしてもじもじと太ももを擦り合わせながら、


「べ、別に恥ずかしくなんかないもん。む、むしろ……ゆ、誘拐されてから、あたし、素肌を見られたら気持ちよくなるっていうか……」


 誘拐というのは、エルザードの一件であろう。

 ……あのとき、この子は全裸に向かれ、その柔肌を多くの《魔族》共に晒したわけだが。

 その際、おかしな性癖に目覚めてしまったらしい。

 ……こうなってしまった要因たるエルザードと《魔族》に、この上ない憎しみが芽生える。特にエルザード。次に遭遇した暁には、必ずや血祭りにあげてくれようぞ。


「イ、イリーナ姐さん、す、すごくエッチなのだわ……! ぐへ、ぐへへへへ……!」


 どこぞの馬鹿もヤバい扉を開きかけているが、こっちに関してはどうでもよかった。

 ……かくして。


「給仕もご奉仕もあたしが全部やるからっ! あんた達は引っ込んでなさいっ!」

「横暴ですわ、ミス・イリーナっ! アード君は皆のご主人様っ! そこらへんをご理解くださいなっ!」

「「「そーよ、そーよっ!」」」

「あぁもう、うっさい! アードはあたしのなの! あたしだけのご主人様なのっ!」

「皆、揉めるのはよくないのだわっ! だ、だから……間をとって、こ、このアタシがご奉仕してあげても……いいわよっ!?」

「いえ、シルフィーさんは何もせず、大人しく待機してくださるとありがたいのですが」

「だわわっ!?」

 お色気メイド喫茶にはしばらく、少女達の姦しい喧噪が轟き続けたのであった。



 ……ご奉仕という名の戦争を終えて、店内にはようやく平穏が戻ってきた。

 そして客足が落ち着き始める時間帯となった頃。


「あのう。アード君、ちょっとお時間よろしいですか?」


 ジニーが声をかけてきた。これが色恋を期待した顔であれば、警邏を理由に断っていたのだが……その面持ちは真剣なもの。

 俺は彼女に了承の意を返すと、案内されるがままにバックヤードへと移動した。後ろにはイリーナやシルフィーが付いている。しかしジニーはこれを黙認し、小言すら漏らさない。そしてバックヤードにある従業員の休憩室へと入室。俺達以外には人がおらず、いかような話もできる空気が整っていた。


「……A組との売上勝負ですが、何も手を打たない場合、こちらの敗北は確実かと」

「えぇっ!?」


 不安げな顔のジニーに、シルフィーが驚愕の声を漏らす。イリーナもまた、困ったような顔で俺のことを見ている。


「ふむ。そうした予想は、何を根拠に立てたのですか?」

「はい。何度か人を出して偵察したんですが……女の子と料理の質、残念ながらどちらもA組が上と言わざるを得ないかと。その結果が、お客さんの数に直結しています」

「現段階で売上に差がついているということですか」

「た、たたた、大変だわっ! ど、どうすれば……!」

「具体的に、どれぐらいの差があるの?」

「さすがに正確な数字はわかりませんが……あちらの売上は、ウチの1.5倍ほどではないかと予想されます」


 ふむ。中々の差がついているようだな。


「な、何か手を打たなきゃ……! あっ、そ、そうだわ! 演劇をやるときにウチの宣伝をすればいいんじゃないかしら!? そうすればきっと、お客さんが増えるはずだわ!」

「そうですね。シルフィーさんがおっしゃる通り、我々には演劇という、宣伝の場があります。……とはいえ」

「A組の連中も、そこは織り込み済みよね」

「えぇ、間違いなく。だからきっと、なんらかの切り札を用意してますわね」


 ゆえに我が方としても、もう一つ、何か手を打つ必要がある。


「……ここは一つ、信頼と伝統のお色気じゃんけんを復活させるしか」


 何やらジニーが珍妙な単語を吐き出した、そのときだった。


『学内の皆様! 今年もやってまいりました、剣王武闘会! 三代目ラーヴィル王の御魂に捧げる、剣者達の祭典! 今年も学園内外問わず、広く参加者を募集しております! 本日昼二刻までが参加募集締め切りとなりますので、それまでに――』


 休憩室にまで響く、学内放送。その途中、シルフィーがガタッと音を立てて立席し、


「こ、これだわぁあああああああああああああああッッ!」


 天啓を得た賢者の如く、仰け反りながら絶叫した。


「剣王武闘会に皆で出るのっ! アタシ達なら大活躍は間違いないのだわっ! そんで、戦うたびにお店の宣伝をするのっ!」


 ふむ。古代世界でも似たようなことはしていたな。闘技場にて日々争う闘士達に、商会などの名を刻んだ衣装を着させ、広告塔とする。シルフィーの意見はそれに似たものだ。

 そしてこの方法は、実のところ結構な利益を生む。


「いいわね、それ。あたしもちょうど、出たいと思ってたところだし」


 昔を懐かしむような顔になるイリーナちゃん。


「パパも昔、出たことがあるんだけどね。あのときのパパは格好良かったなぁ。優勝賞品の聖剣のレプリカを抱えてる姿が、すごく画になってて……」

「聖剣のレプリカ? なんですか、それは?」


 俺の問いに、ジニーが返答を寄越した。


「三代目ラーヴィル王から拝領した宝物、だそうですよ。三代目ラーヴィル王は《勇者》・リディアを崇拝してて、彼女が扱った聖剣のレプリカを作り、それを国宝にしたとか」


 ……奴の聖剣、か。レプリカとはいえ、正直、見たくもないな。何せあの剣は……


「それで、ですね。我が校が創設する際、聖剣を握るに値する人物の到来を願って、学園へ聖剣のレプリカを預けた、とのことです」

「……そんな大事なものを、優勝賞品にしてもいいのですか? 剣王武闘会は学園の内外問わず、参加が可能なのでしょう? となれば――」

「あぁ。外部の人間が優勝し、国宝を持ち去ることもある」


 俺が言葉を紡ぐ最中、いつの間に入室していたのか、オリヴィアが口を挟んできた。


「だが、あのレプリカには曰くがあってな。厄介なことに、すぐさまこの学園へと戻ってくるのだ。……収まるべき鞘を求めるが如く、な」


 まるで外部の人間が持ち去り、そのまま永遠に学園から失われることを望んでいるような口ぶりであった。そこについては気になるところであるが、彼女の様子からして、真実を教えてはくれまい。


「ともあれ。今年の剣王武闘会にはわたしも参加を表明している」

「それはそれは……もはや、優勝者は決まったも同然ですね」


 剣王武闘会は剣術と身体機能強化の魔法のみを用いての大会である。

 そのルールであれば、オリヴィアに勝てる者などこの世界のどこにもいない。

 それについては当人が一番自負しているであろうに、なぜ参加表明など――


「いいや。わたしが優勝となるかはまだわからん。なぜなら……アード・メテオール、貴様が参加するからだ」

「……は?」


 突然ブチ込まれた巨大な爆弾に、俺は思わず素の声を出してしまった。


「い、いやいやいや。何をおっしゃるのですか、オリヴィア様。私は参加など――」

「悪いが、貴様の参加表明書はわたしの方で勝手に書いて、勝手に提出させてもらった」


 なんてことをしてくれやがるのだ、この女。


「し、しかし、ですね。私は己の力を誇示することは――」

「やかましい。貴様の都合など知らん。もしも出ないと言い張るのであれば……わたしはとある案件について、一方的に決めつけてかかるが、それでもいいのか?」


 こ、こいつ……!

 とある案件というのは、俺が《魔王》の転生体であるか否か、という疑問であろう。

 身の潔白を証明するには、大会に出た上でオリヴィアの疑惑を払拭するような戦いをするしかない、ということか……!


「フフフフ。楽しみだなぁ。ここでようやく、決着がつくんだろうなぁ」


 思わず反吐が出てしまいそうな、素敵過ぎる笑顔を浮かべるオリヴィア。

 そんな彼女に、俺は冷や汗が止まらなかった。


「アード君が出るなら私も参加しよっかな。ぶつかっちゃったら、試合形式で手取足取り剣術を教えてくださいね♡」

「……剣術を教えてもらうってのはただの建前で。どさくさに紛れてえっちなことがしたいだけなんじゃないの?」

「まぁ。それは邪推というやつですわ、ミス・イリーナ」

「そうかしら。あんたらサキュバスって、年がら年中えっちなことばっか考えてる変態種族だから、信用できないわ」

「……ねぇ、ミス・イリーナ。私のことは悪く言っても構いませんけど、種族ごと侮辱するのはやめてくださらない?」

「やぁ~よ。事実を言ったまでじゃない」


 バチバチと火花を散らす二人。


「そういえば、以前のバトルイベントでは決着が付けられませんでしたねぇ。……今回はボッコボコにしてあげるから覚悟なさいな」

「やれるもんならやってみなさいよ、この淫乱サキュバス」


 激しい闘気が両者の総身から放たれ、互いの狭間でぶつかり合う。

 だが、そんな彼女等の様相など、今の俺には興味の埒外。

 我が脳内では、ある一言が永遠の如くリフレインしている。即ち――


 どうしてこうなった?



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