第1夢「ワカレ」
つまらない。
一体この世界のどこが面白いのか分からない。
ねぇ・・・誰か教えてくれませんか?
第1夢〜ワカレ〜
僕は
買い物が嫌い
なぜなら・・・
わざわざ人の多いところに行かなくちゃいけないから
僕に関わる人が嫌い
なぜなら・・・
その人達の前では、頭が良くて、スポーツなんでも出来て、可愛い彼女がいる「夢野 無幾」を演じなきゃならないから。
僕の全ては「嘘」というオブラートにずっと包まれたまま。
気が付いたら3年という月日が流れてた。
「ねぇね!ナイク見て!」
「ん・・・」
「これ!可愛い」
「うん・・・そうだね」
日曜日のショッピング街。溢れる人込み、幸せそうな話し声。
「(あー、来るんじゃなかった)」
「今、何か言った?」
「いや、何にも。それ買ってくるよ」
ナイクは彼女のユイが持っていたネックレスをスッと取り上げた。
平日こそ学校に出ているが、それ以外は余り外で過ごすことはない。
昔から誰かと関わりを持つことを極端に嫌がっていた。
今日のデートもユイの方から「付き合って1年になるから」とメールが着て、なんとなくその気になってみただけだった。
「え?いいよ!だってこれ高いし・・・」
「いいよ。久しぶりに出掛けたんだし、このくらいはね・・・」
「あ・・・うん。アリガト」「(さっさ会計して、はよ帰ろ)」
会計の人にネックレスを渡す、何も考えていなかったせいか「プレゼントですか?」
と言う質問にいつのまにか「はい」と返事していた。
商品がラッピングされている間
「いかにしてユイを言い包め早く帰るか」を考えていた。
支払いをして、綺麗にラッピングされた商品をもらう。
別にたいしたものでもないのに、店の人はメッセージカードとボールペンを差出して
「一言どうぞ」といってきた。
「(さて、何を書こうか)」
ふと、ユイの方に目をやると僕が遅かったせいか 心配そうにこちらを見ていた。
「(いっつも、迷惑かけてるな)」
カードに「ありがとう」と、かいてみた。
そして、その前にもう一言付け加え、店員に渡した。カードを受けとった店員は少し青ざめた様子でカードをプレゼントに飾りナイクに渡した。
「ごめん。待ったよね」
「ううん、大丈夫!少しだけ心配だったけどね」
「そう。・・・はい、これ」「あ!可愛くラッピングしてもらったんだ、ありがとう。ナイク」
「どうも」
ユイは本当にうれしそうな顔でプレゼントを受け取ると
すぐにカードの存在に気付いた。
「ナイク、これ・・・」
「うん。・・・あのさ」
ナイクは今作れる最高の笑顔でユイに伝えた。
「別れよ。じゃね、バイバイ」
そう
ユイの持っているカードには、「今までありがとう」と書いてあったのだ。
………………………………
「ただいまー」
「ナイク、おかえり♪久しぶりのデートはどうだった?」
「別れた」
家に帰ると嬉しそうにナイクを出迎えてきた母、アケミは息子のことばに唖然とした。
「え?今何ていったの。」
「・・・」
母の問い掛けに応じる事無く、ナイクは二階の自室へと向かう。
アケミは、そんなナイクの様子を一切気にせずひたすら色々な事をナイクに問い掛けた。
なぜ別れたのか、どこに出掛けたのか、楽しくなかったのか、喧嘩してしまったのか・・・ナイクが部屋に着くまで後を追い掛け、問い掛けた。
しかし、ナイクは口を開かない。ドアノブに手が掛かったときアケミはもうダメだと思った。
不意に、ナイクがこちらを見て笑いかけた。
にっこりといかにも優しそうな表情で口を開いた。
「もー、母さんは心配性なんだよ!そんなだから皺も増えるんだ」
「なっ!!」
想像もつかないナイクの言葉にアケミは返す言葉が見つからなかった。
「まぁ・・・一応、傷ついてるんだから、あんまりえぐるような事きかないでよネ」
バタンッ
その言葉を最後に、ナイクの部屋のドアが閉まり、二人の間を遮った。
つづく
これから頑張ります。