Mission3 「遊びの始まり」
黒いバラがトンネルのようになっていて、その道を俺たちは先へ先へと進んでいく。
辺りは真っ暗で、冷気が漂い気味悪い。
真っ直ぐ進んでいくと出口が見えてきた。
出口を出た先は、辺りは薄暗く、空は赤く濁った色が広がっている。
『くすくすくすくす……』
出口を出た瞬間、不気味な笑い声が聞こえた。
『おにいちゃん、おねえちゃん、あそびましょ。あそびましょ』
幼い声は、楽しそうに、そう話しかけている。
『おにいちゃん、おねえちゃん、ぼくをつかまえたら、なんでもねがいを、かなえてあげる。
でもね、ぼくいがいのモノに、つかまったら……』
幼い声が止んだ。と思ったら
『ゴロジデャル……。ナンドモ、ナンドモ、ゴロジデャル。アハハッ、アハハハハハハハハ』
さっきの幼い声から、狂った声に変わり、ケタケタケタケタ笑っている。
黒い煙幕のような風が急に吹いて、俺の視界を奪う。
煙幕が晴れると俺の目の前に、少女が現れた。……ひなただ。
「ひなた!」
ひなたは俺に気付いていない。空をジッと見て怯えている。何を怯えているのだろうか。
空を見ると何十本もある先の尖った鉈が現れて、急に、ひなたを狙って落ちてきた!
ひなたが何度も空を確認しつつ怯えた表情で、必死に走って逃げ回る。
「ひなたっ!!」
助けに行こうと駆け寄る。だが、見えない壁によって遮られる。壁を何度も叩く。
俺に気付いた様子だったが、逃げるのに必死だからか声を出さない。
こけて服に鉈が刺さる。身動きが取れなくなり必死で外そうと引っ張っていた。
ふいに、こちらを振り向き、ボロボロと涙をこぼしながら
「助けてっ……!!」
その言葉の後……一瞬の出来事だった。鉈が、ひなたを目掛けて……
ザクッザクッザクザクッと嫌な音を立てて刺さっていった。
ひなたが血まみれで倒れたまま、右手を俺の方へ伸ばす。
「あ゛……ぁ゛……だずげで……い゛だぃ゛……い゛だぃ゛よ゛……や゛……ど……」
ザジュッ。頭に鉈が突き刺さった。上げていた右手は地面に落ちてピクリとも動かない。
頭は……脳みそらしきものが、ドロリと出てきて……見るも無残な状態。
……死んだ。ひなたが、死んだ。
「ひ……ひなたぁぁぁぁああああ!!!!」
パンッと誰かに頬を叩かれた。はっと気が付く。
目の前には、ひなたではなく緑色の液体を出しながら気色悪く動く肉の塊だった。
「……え……? どういうことだ……?」
「ま、学! そんなっ……いやぁぁああああ!!」
「灯さんも、しっかりしてください!」
咲が灯を、思いっきり平手打ちする。
「……え? ……学は……?」
「2人とも、魔法か何かで、あの気持ち悪い肉塊が大切な人に見えたんですよ」
俺と灯先輩は、ショックのあまり呆然としていると
『アハハハハハハ! にんげんって、バカだね! おかしくて、しかたない!
……あれぇ? なんで、おねえちゃんは、たいせつなひとにみえないの?』
と、さっきの幼い声が、どこからか聞こえる。
「さぁ? なんででしょうねぇ? 耐性でもあるんじゃないですかぁ?」
咲は空に向かって返事を返す。
『へぇー。おもしろいひと、みっけ! ぼくは、いえで、まってるから、あそびにきてね』
「はーい。ぶっ殺しに行くんで、よろしくお願いしますねぇ」
咲は、へらへら笑って空に向かって手を振っている。
『そのまえに、ぼくのまほうが、おねえちゃんを、ころすとおもうけど。アハハハハハハ!』
ザザァァァッ。と強い風が吹くような音がした。風は吹いていないのに。
「……いなくなりましたね」
「わかるんですか?」
「そんなの、わかるの?」
「わからないんですか? 異常な力、というか……。魔女の道って呼ばれているし、
魔力なんですかねぇ。そんな感覚がするじゃないですか」
全く理解が出来ない。
俺たちが引っかかった幻は、あの声の主の言う通りかかっていないようだし。
咲には、何か霊感のようなものがあるのだろうか?
「……どうやら、もう遊びは始まっているみたいですねー」
咲は、そう言って一点を見つめている。
その見つめている方向を見た。『何か』いる。
黒くて、足が何本もあって……こっちに……来る!
カサカサカサカサカサカサカサ、とゴキブリみたいな足音を立てて『何か』が来た。
「とりあえず、逃げましょう! なにボサッとしてるんですか、2人とも!」
「え、ええ。行くわよ。暁くん!」
「は、はい!」
──捕まったら殺される。魔女との遊び……鬼ごっこが始まった。
グロイ表現、怖い表現って難しいですねぇ……。