第1章 奈良公園あたり 5 春日大社から白毫寺
春日山からなおも南へ歩くとやがて
「春日大社」の区域に入りますので、
ここは本殿まで行き参拝していきましょう。
春日大社は、
社伝によると768年藤原北家の藤原永手が
藤原氏の氏社として創建したといわれています。
主神は常陸の国の鹿島神宮から白い神鹿に乗って
飛んでやってきた武甕槌命で、
奈良の鹿はその神鹿の子孫という伝説であり、
だから神鹿なのです。
この神様はもともとは鹿島出身の中臣鎌足の家の祭神でした。
だから春日大社というのは
藤原氏が自らの繁栄を祈って作った家の神社なのです。
他に下総国の香取神宮(千葉県佐原市)から迎えられた
経津主命。
河内国枚岡神社(現大阪府東大阪市)からの天児屋根命、
少し遅れて鎮座した比売神。
併せて4神です。
このように藤原氏の氏神であることから、
藤原氏の氏寺である興福寺との関係が深く、
神仏習合が進むにつれ、
春日大社と興福寺は一体のものとなっていったそうです。
そういえば共に祭礼の時などは
藤原氏の家紋である下がり藤をつけています。
平安時代にはいると
藤原家の隆盛と共に春日大社も拡充され、
藤原一門による春日詣でがさかんに行われたそうですが、
藤原貴族たちは鹿に出会うと、
神鹿だといちいち輿を降りて挨拶のためおじぎしたので、
鹿におじぎの習慣が付いて
今も観光客を見るとおじぎするという話を聞いたことがあります。
途中に春日大社神苑として「万葉植物園」があり、
万葉集の勉強とこれにちなんだ植物を見ることが出来て
一石二鳥です。
次は新薬師寺に向かいますが、
春日大社の二の鳥居から高畑に抜ける約500メートルの小道は、
アセビの森が自然に作ったトンネルで、
「ささやきの小道」と言われています。
ここは奈良公園で恋人に愛をささやく最もふさわしい場所です。
この道を出るとそこは「志賀直哉旧宅」があり、
さらに南東に5分ほど歩むと「新薬師寺」があります。
新薬師寺は、奈良市高畑福井町にある華厳宗の寺院で、
本尊は薬師如来で、創立者は光明皇后または聖武天皇
と伝わっています。
奈良時代には南都十大寺の1つに数えられるほど
大きかったのですが、
今はこじんまりとした静かなお寺です。
国宝の本堂や奈良時代の十二神将像をはじめ、
多くの文化財を伝えています。
この東側に
大和の写真で有名な「入江泰吉記念奈良市写真美術館」があります。
さらに南東に15分ほど歩くと
「白毫寺」があります。
白毫寺は、閻魔大王を祀る寺で、
宝蔵に安置されている閻魔像は
運慶の孫の康円の作で鎌倉時代の仏像で、
迫真性に富む険しい表情の像です。
閻魔様の両脇には木造司命半跏像・司録半跏像(ともに閻魔王の眷属)がおられ、
さらには木造太山王坐像(閻魔王とともに冥界の十王の一人。)
など見応えある仏様達が並んでおられます。
高円山の山裾にある白毫寺は、天智天皇の皇子、
志貴皇子の山荘だった所と言われていて、
奈良の街が一望できる素晴らしい眺望を楽しむことが出来ます。