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第3章 西の京 3 薬師寺

近鉄西の京駅をおりて東へ5分も歩かないところに

薬師寺があります。

薬師寺は、興福寺とともに法相宗の大本山で、

南都七大寺のひとつに数えられていますが、

680年天武天皇の発願により、

飛鳥の藤原京の地に造営が開始されて、

平城遷都後の8世紀初めに現在地の西ノ京に移転したものです。

平城京の薬師寺はその後の火災や戦乱で多くの建物を失い、

創建当時の伽藍をしのばせるものは

焼け残った東塔(国宝)だけでした。

1960年代以降、名物管長として知られた高田好胤氏が

中心となって写経勧進による白鳳伽藍復興事業が進められ、

1976年に金堂が再建されたのをはじめ、

西塔、中門、回廊の一部、大講堂などが次々と再建されました。


東塔は総高34.1メートルで屋根の出が6か所にあり、

一見六重の塔に見えますが、

下から1・3・5番目の屋根は裳階もこしであり、

構造的には三重の塔です。

塔の先端部の相輪にある青銅製の水煙すいえんには

飛天像が透かし彫りされており、

奈良時代の高い工芸技術を現代に伝えていますが、

こうした特徴的な姿から、

この塔を評してしばしば「凍れる音楽」と言われることは

良く知られています。

この東塔は解体修理が(平成31年まで)が予定され

しばらく見ることが出来なくなりますが、

工事の始まる10月末ごろまでは初層も開扉されるので、

ぜひそれまでに拝観したいところです。


金堂に安置される薬師寺の本尊の薬師三尊像(国宝)は

奈良時代(7 - 8世紀)の作で、

中尊は薬師如来、

左脇侍(向かって右)に日光菩薩にっこうぼさつ

右脇侍に月光菩薩がっこうぼさつを配しています。

日本の仏像彫刻が、

独自の古典様式を完成した奈良時代の作品のなかでも

最高傑作の1つとして古来名高いものです。

両脇侍像は首と腰を軽くひねり、

頭部、上半身、下半身がそれぞれ異なった角度を表す

「三曲法」と呼ばれるポーズを示しています。

中尊像の台座は宣字座の上に裳を広げた裳懸座ですが

ギリシャ、ペルシャ、インド、中国などに淵源をもつ

葡萄ぶどう唐草文、異国風の人物像、

四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)などの意匠が

あしらわれているのでぜひ見てください。


薬師寺のもう一つの国宝は東院堂本尊の銅造聖観音立像で、

像高約189センチで、

奈良時代の金銅仏の代表作の1つです。

観音像のまさにスタンダードと言っても良いと思います。

他に珍しいものとしては仏足石が大講堂内にあります。

これは礼拝対象としての仏陀(釈迦)の足跡を刻んだ石で、

天平勝宝5年(753年)の作ということです。



薬師寺も他のお寺と同様様々な法要が行われますが、

私が実際に立ち会ったのは3月末から4月5日までの

花会式はなえしき

年末の「お身ぬぐい」でした。

花会式は正式には薬師寺の修二会のことで、

東大寺ではお香水を汲み上げられる行事から

「お水取り」と云われるように、

薬師寺では十種の造花を本尊薬師如来に供えられることから

「花会式」と称され、

奈良に春を告げる行事として親しまれています。

薬師寺の修二会は、薬師如来の前ですべての罪過を悔い改め、

心身ともに清浄の境地を得たのち、

国家繁栄、万民豊楽、天下太平、五穀豊穣、

仏法興隆などを祈願する法要で

ひときわ華やいだ雰囲気に包まれていました。

この法要は4月5日まで

午前3時から午後8時半までに6回行われると言うから大変です。

私が見たのは午後7時からのでしたが

まず鐘が撞かれ南都声明が繰り返し唱えられます。

結願を迎える4月5日は初夜法要のあと、

金堂の前で『鬼追式』が行われます。この鬼追式ですが、

薬師如来のお力を受けた毘沙門天が

暴れまわる5匹の鬼を鎮めるという行事です。

節分には豆を撒いて鬼を追う行事が各家庭で行われていますが、

この鬼追式に因んだものになっているとのことです。


「お身ぬぐい」は、

伽藍内の諸尊像のホコリを払い、

身を清める年末の恒例行事です。

午後1時から、式衆と呼ばれる10人ほどの僧侶が読経し

法要がはじめられ

朝に餅つきをしたお湯で、

般若心経が5回ほど唱えられるあいだに

青年僧や50人ほどの学生(中高生くらい)たちがが、

はしごに上り清巾じょうきんと呼ばれる手ぬぐいを使って

仏像の顔から隅々まで丁寧に磨いていきます。

また金堂では、同時に、

薬師如来の前立ちになっていて

正月15日までの間だけ開帳される

「吉祥天女画像(国宝)」が目の前で開かれましたが、

その開かれる瞬間は興奮を禁じえませんでした。

もし機会があればこうした行事が行われるときにお参りすれば

普段ではなかなか味わえない

お寺の雰囲気を楽しむことが出来るのです。

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