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24話 第三層

断界獅子レオンブレイカーとアルトリアの衝突は、

 森そのものを崩壊させながら続いていた。

 狂化状態に入った獣は、もはや暴風と化している。

 爪が閃くたび、大地が裂ける。

 咆哮ひとつで、空気が震える。

 そしてアルトリアは――

 その全てを受け止めていた。

「ァァアアアアアアッ!!」

「吼えるな。集中力が散るぞ」

 アルトリアは冷ややかに言い放ち、

 断界獅子の爪をいなす。

 黄金と黒の残像が交差する。

 カイトはその場にしゃがみ込みながらも、

 必死に目で追っていた。

(やっぱり……すげぇ……!

 目を逸らすなんて、もったいねぇよ……!)

 恐怖も、焦りもある。

 だがそれ以上に、胸が熱い。

(俺も……いつか……!)

 狂化した断界獅子は、もはや理性のかけらもない。

 ただ破壊本能のみ。

 暴走した筋肉から、黒い蒸気が噴き出し続けている。

 体温が上がりすぎて、地面に着いた足跡から煙が立ち上っていた。

「ァォオォォオオオッ!!」

 獣が突進する。

 アルトリアは動かない。

(え、避けないのか!?)

 カイトの心臓が跳ねた瞬間――

 アルトリアが一歩、前へ踏み込んだ。

 その動きは、静かだった。

 だが、世界に“線”が引かれたように鋭かった。

「――終わりだ」

 剣が揺らめく。

 たった一閃。

 斬ったというより、

 “通り過ぎただけ”のように見えた。

 だが次の瞬間――

 ズ……ガァァァァァンッ!!!

 断界獅子の巨体が、真横に吹き飛んだ。

 大地が抉れ、木々が砕ける。

 黒い血を撒き散らしながら、巨獣が転がった。

 やがて止まり、ぐらりと身を起こす。

 傷は深く、呼吸は荒い。

 それでも、戦意は消えていなかった。

「ァ……グルルル……!」

 立ち上がろうとする。

 その姿を見て、カイトは息を飲んだ。

(立つのかよ……あれで……!)

 けれど、その前にアルトリアがすでにいた。

 静かに獣の前へ立ち、剣を下げる。

「……よく耐えたな。

 だがもう、戦う力は残っていない」

 断界獅子は、荒れた呼吸のままアルトリアを見上げた。

 その目に宿っていたのは――

 怒りでも狂気でもなく、

 ――誇り。

「……この森の守護獣としての、意地か」

 アルトリアは短く息を吐く。

「ならば、その意地……受け取ろう」

 剣が光を帯びた。

 風が止まる。

 世界が静まる。

「――断界を制す者。その名に誓って」

 そして――一閃。

 断界獅子の瞳がゆっくり閉じられる。

 巨体が崩れ落ち、静かに大地が震えた。

 戦いが終わると同時に、

 森の風が優しく吹いた。

 カイトは立ち上がろうとして――膝から崩れ落ちた。

「は……はぁっ……!」

 限界だった。

 戦いを“見るだけ”で、全身が痺れている。

 そんなカイトの前に、アルトリアが歩いてくる。

「よく耐えたな、カイト」

 彼女は手を差し出す。

 その手は温かく、そして誇り高かった。

「お前が見続けたこと。

 それが一番の成果だ」

「……俺……見ただけだぞ……?」

「違う。

 “逃げなかった”。それだけで十分だ」

 アルトリアがふっと微笑む。

 戦いの時とは違う、柔らかく静かな笑みだった。

「殺意の森――第二層の守護獣を前に立ち会い、

 戦場から退かず立っていた。

 それは、お前自身の『才能』だ」

 カイトの胸が熱くなる。

(……認められた……!

 アルトリアに……この人に……!)

 そのとき――

【特性:無限の可能性】

──第二層特異スキルの“条件片段”を獲得──

【恐怖耐性:微】が生成されました。

 カイトは思わず笑った。

「……やっと……少しだけ進めた気がする……!」

「進んでいるさ。

 だが――」

 アルトリアが空を見上げる。

 その目が、わずかに険しくなった。

「断界獅子が倒れた今、この森の“第三層”が静かに起動する。

 そして……魔王軍も動き始めるだろう」

 風が冷たくなる。

「カイト。

 ここから先は――本当の修行だ」

 カイトは拳を握った。

「望むところだ……!

 俺は……絶対に強くなる!!」

 アルトリアは満足げにうなずく。

「なら、ついてこい。

 地獄の続きだ」

 二人は、破壊された森の奥へと進んでいく。

 その先に待つ地獄を知りながら――。

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