表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/28

23話 狂化

断界獅子レオンブレイカーとアルトリアが激突した瞬間、

 森そのものが悲鳴を上げた。

 木々は根こそぎ倒れ、地面は波のようにうねり、

 衝突の衝撃だけで衝撃波が四方に広がる。

 その余波を真正面に浴びたカイトは――

「――ぐっ……!!」

 膝をつき、必死に地面に爪を立てて耐えていた。

(……これが……これが“上位の戦い”……!)

 圧力だけで肺が潰れそうになる。

 視界が揺れるたび、心臓が跳ねる。

 それでも、アルトリアの言葉が耳から離れない。

――“目を逸らすな。ここから学べ”――

(……見てやる……! 何があっても……!)

 カイトは歯を食いしばり、顔を上げた。

 砂煙を切り裂き、断界獅子が跳んだ。

 黒い瘴気が尾を引き、まるで影そのものが獣になったよう。

「ォォオオオオオオッ!!!」

 咆哮とともに振り下ろされる、一撃必殺の爪。

 対するアルトリアは――

「遅い」

 わずか一言。

 だがその声が、断界獅子の動きを嘲笑うように響いた。

 刹那、アルトリアの姿が“霞んだ”。

 否――速すぎて形を留めていないだけだ。

 断界獅子の爪が地面を抉るより早く、

 アルトリアの剣が獣の肩口を斬り裂く。

 ドッ!!

 巨体が横へ吹き飛び、木々を三本まとめてへし折った。

「す、すげぇ……!」

 カイトは興奮と恐怖で声が震えた。

 アルトリアは息ひとつ乱れないまま、静かに言う。

「まだ終わりじゃないぞ、カイト。

 “ここから本性”だ」

 言葉通り、断界獅子が立ち上がった。

 肩から黒い瘴気が噴き出し、

 その瞳はさっきまで以上に凶暴に光っている。

「ォォオ……オオオオッ!!」

 断界獅子が地面を蹴る。

 その速度は――

 もはや“獣”ではない。

 音すら追いつかない。

「速っ……!」

「怯むな。目で追えているうちは、まだ戦える」

 アルトリアが剣を構え直す。

 刃先は獣の喉元へとわずかに向いている。

(……読んでる……!

 動く前から……全部……!)

 カイトは震えながらも見ていた。

 断界獅子の筋肉の収縮。

 地面のひび割れ。

 風の流れ――

 そして、アルトリアの剣先の角度。

(……分かる……!

 さっきより……少し……!)

 その瞬間――

――カチッ。

 カイトの胸の奥でまた光が走る。

【特性:無限の可能性】

──戦闘観察による微成長・第二段階──

俊敏+0.3 洞察+0.2

 誤差ほどの成長だ。

 だが、確かに体の反応が変わった。

「……見える……!」

 断界獅子の動きが、今だけほんの少し遅く見えた。

「アルトリア!! 左だ!!」

 叫んだ瞬間、断界獅子が左側へ瞬歩していた。

 アルトリアは一度も振り返らず――

「いい判断だ」

 短く告げて、剣をそちらへ向ける。

 断界獅子の爪と、アルトリアの剣が再び激突。

 ドゴォォォォォッ!!!

 爆発のような衝撃。

 二人の戦いは暴風のごとく続く。

 爪。

 剣。

 噛みつき。

 受け流し。

 跳躍。

 斬撃。

 一瞬一瞬が死線。

 カイトはその全てを――焼き付けるように見ていた。

 そして。

 戦場に、大きな変化が起きた。

 断界獅子の全身から、

 “炎のような黒いオーラ”が滲み出した。

 アルトリアがわずかに目を細める。

「……来たな。

 第二層の守護獣、最大の脅威――“狂化状態”」

「狂化……!?」

「あぁ。

 理性を完全に捨て、肉体の限界を突破する。

 攻撃の威力も速度も、さっきの二倍だと思え」

「二倍って……!」

「だが――」

 アルトリアは剣をゆっくりと構え直した。

 その動きは静かで、美しく、恐ろしく精密だった。

「――私に勝てると思うなよ?」

 断界獅子が吼える。

 アルトリアは踏み込む。

 次の瞬間――

 二つの影がぶつかりあい、世界が白く弾けた。

つづく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ