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第22話 最強

断界獅子レオンブレイカーとアルトリアが衝突したその場所は、

もはや「森」ではなかった。

 大地はえぐれ、木々は裂け、舞う土煙が太陽を遮っている。

 空気すら震えて形を変えているようだった。

 カイトは息を呑んだまま、剣を握り締めていた。

 手が震えているのは恐怖だけじゃない。

 ――悔しさだ。

「……アルトリアが……一人で全部やってる……」

 それが現実だった。

 自分では、近づくことすらできない。

 気配だけで意識が削られる。

 獣の呼吸ひとつで膝が笑う。

 だが――

「目を逸らすなと言ったはずだぞ、カイト」

 アルトリアは断界獅子の爪を受け流しながら横目を向けた。

 砂煙にまみれながらも、その双眸は鮮烈だった。

「お前は、“見て学ぶ”段階すらまだ不十分だ。

 ならばまずは――見ていろ。全てを。逃げずにな」

 その言葉に、胸の奥が熱くなる。

 次の瞬間、断界獅子が咆哮とともに跳躍した。

 鋭い爪が空気を裂き、稲妻のように迫る。

 アルトリアは一歩踏み込み、剣を振り上げ――

 爪と刃が激突した。

 ギャリィンッ!!!

 耳を裂く金属音。

 衝撃の風が木々をまとめて薙ぎ払う。

 だがアルトリアは微動だにしない。

 むしろ、静かに呟いた。

「この程度か。

 第二層の守護獣としては……少し鈍っているな」

 断界獅子の黄金の瞳に怒りが宿った。

 巨体全てを叩きつけるような突進が来る。

「アルトリアっ!!」

「気にするな。

 お前はその場から――一歩も動くな」

 アルトリアは剣を引き、逆手に構える。

 獣が地を蹴る音と、空気が裂ける音が重なった瞬間――

 彼女の姿が、消えた。

 否――速すぎて消えたように見えた。

 直後。

 ドゴッ!!!

 断界獅子が横腹を斬られ、その巨体ごと吹っ飛ばされた。

 砂煙に紛れながらも、斬撃の閃光だけはカイトの網膜に焼き付いていた。

 カイトは震えた。

 恐怖ではなく――興奮で。

「……見えた……。

 ほんの一瞬だけど……本当に、一瞬だけど……!」

 断界獅子の斬撃軌道。

 アルトリアの踏み込み。

 地面の割れ方。

 全てが、一瞬“理解できた気がした”。

 その時だ。

 胸の奥で、カイトのステータスがかすかに光った。

【特性:無限の可能性】

──“戦闘観察による微成長” が発動──

 目に見えないほど僅かなステータス上昇。

 だが、それは確かに“力”だった。

「……俺にも、できる……。

 少しずつなら……!」

 拳に力を入れた瞬間。

 断界獅子が咆哮を上げ、アルトリアに向けて突進した。

 その目は怒りで血走り、四肢から黒い瘴気が噴き出している。

「アルトリア!!

 今のは……まずいんじゃ――」

「まずいさ。

 “本気を出してきた”という意味ではな」

 アルトリアは剣を構え直した。

 その姿には微塵も焦りがない。

 だがカイトは気付いていた。

 アルトリアの足元。

 土が僅かにめくれている。

 ――アルトリアでさえ、押されている。

 その事実が、胃の底に冷たく響いた。

「カイト」

「え……?」

「次の瞬間、私が“合図”を出したら……

 全力で飛び退け。

 いいな?」

「あ、ああ……!」

 断界獅子の本気の突進は、もはや災害だった。

 大木が砕け、地面が波打ち、衝撃が連続する。

 アルトリアはその全てを正面から受けとめ――

「――カイト、今だ!」

「っ!!」

 カイトは地面を蹴って後方へ飛んだ。

 直後、断界獅子の爪が地面を抉り、

 カイトがいた位置を粉砕した。

 土煙の中、アルトリアが吼えた。

「――カイト!! 目を逸らすな!!

 “ここから学べ”。

 お前が、これから魔王軍と戦うために必要な……

 第一歩だ!!」

 アルトリアの叫びは、獣の咆哮と同じくらい強く響いた。

 そして――

 断界獅子が、吼えながら跳びかかった。

 アルトリアは、真正面から迎え撃つ。

 その衝突の瞬間、世界が震えた。

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