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第二話最初の条件

こんにちは!

今回の小説は短編連載にしていこうと思います。

短編連載をメインに活動していきます!

「……というわけで、まずは『世界樹の頂上で』ってやつから始めるか」

 俺、カイト・アサヒナは、目の前に座る幼い少女――予言の巫女リリアに、今日の作戦会議の結論を告げた。

 あれから数日、俺たちは村長の許可を得て、村外れにある古い小屋を拠点にしていた。リリアは魔物に襲われていたところを俺が助け、それ以来、なぜか俺に懐いて離れない。村人たちも、巫女様と呼ばれる彼女を大切に扱い、協力的な姿勢を見せてくれた。

 リリアは、潤んだ青い瞳で俺を見つめた。「カイト様、世界樹はここから東へ、険しい山脈を越えた先にあります。標高は非常に高く、普通の人間では登頂すら困難です」

「知ってる。地図で見たらエベレスト級の山の上に生えてるんだもんな」俺は頭を掻きながらため息をついた。「しかも、世界樹の頂上でってことは、山頂じゃなくて、その木の一番上ってことだろ? どうやって登るんだよ、あれ」

 覚醒条件リストを改めて睨みつける。

世界樹の頂上で、満月の夜明けに、古代種のドラゴンの鱗を煎じて作った薬を飲みながら、伝説級の聖剣で自分の小指の爪を切る。

 問題が山積みだ。「まず、満月の夜明けってタイミングがシビアすぎる。それから、ドラゴンの鱗。古代種ってことは絶滅危惧種か何かか? 聖剣も持ってない。爪切りは……まあ、百均で買ったやつが異世界転生特典でポケットに入ってたからあるけど、伝説級の聖剣ってなんだよ」

 リリアは静かに首を振った。「条件は一度に全てを満たす必要はありません。まずは世界樹の頂上に到達すること。それが最初のステップです。他のアイテムは、道中で集めるしかありません」

「まあ、そうだよな」

 俺は立ち上がって、腰に下げたボロボロのショートソードを握りしめた。これは村長がくれた唯一の武器だ。「じゃあ、準備するぞ。明日の朝一番で出発だ」


翌朝、俺とリリアは村人たちに見送られ、東の山脈を目指して旅立った。

 道中、俺は自分の非力さを嫌というほど思い知らされた。ゴブリン一体と戦うのにも一苦労で、何度も危ない目に遭った。その度に、リリアが持っていた「防御のタリスマン」というチート級の魔道具に助けられた。

「リリア、それ最初から使えたなら、俺がゴブリンに追いかけ回される必要なかっただろ……」

「ご、ごめんなさい、カイト様。これは一日に三回しか使えない貴重なものなんです」

 そんなこんなで、山脈の麓に到着するまでに二週間を要した。

 山は想像を絶する険しさだった。道なき道を進み、時には魔法生物に襲われながら、俺たちは少しずつ標高を稼いでいった。転移者である他の奴らなら、きっと「飛行スキル」とか「瞬間移動」とかで一瞬で来れるんだろうな、と何度思ったことか。

 俺にそんなチートスキルはない。あるのは、現代日本で培った「不屈の社畜精神」だけだ。

 標高5000メートルを超えたあたりで、空気が薄くなり、俺の体力は限界を迎えていた。

「もう……無理だ……」俺は雪の上に倒れ込んだ。

「カイト様、もう少しです!」リリアが心配そうに俺の顔を覗き込む。

 その時、俺のポケットの中にあるものが光った。それは、この世界に来てから肌身離さず持っていた、今は亡き父の形見の万年筆だった。

「父さん……」

 その光景を見たリリアが目を見開いた。「それは……伝説級のアーティファクト『記録するレコーダー』!」

「え? 万年筆だぞ?」

「違います! それは所有者の成長を記録し、必要な時に必要な力を引き出す道具です!」

 リリアが万年筆に魔力を注ぎ込むと、それは輝きを増し、俺の体に力が流れ込んできた。俺のステータス画面に、見慣れないスキルが表示された。

【スキル:登山技術(Lv. Max)】

【スキル:寒冷地適応(Lv. Max)】

【スキル:スタミナ回復(Lv. Max)】

 ……えええ!? いつの間にそんなスキル覚えてたんだ!?

「カイト様、あなたがこの山を登るために費やした時間と努力が、この万年筆に記録され、スキルとして具現化したのです!」

 なるほど、チートはなかったが、泥臭い努力がチートを生み出したってわけか。俺は立ち上がり、再び山頂を目指した。もはや疲労感はなかった。


万年筆の力もあり、俺たちはついに世界樹がそびえ立つ山頂に到着した。そこは氷に覆われた平原で、中央には天を貫くかのような巨大な樹木が立っていた。

「でけぇ……」

 世界樹の幹はあまりにも太く、樹皮は鉄のように硬そうだ。登頂方法を話し合っていると、突然、地響きと共に巨大な影が現れた。

「グルルルル……」

 それは巨大な白銀のドラゴンだった。覚醒条件にあった「古代種のドラゴン」だ!

「やべぇ、ボスキャラじゃねーか!」俺は腰の剣を抜く。

「カイト様、このドラゴンは世界樹の守護者です。戦闘は避けて、説得を試みましょう!」

「説得って……言葉通じるのか?」

 俺は意を決して、ドラゴンの前に進み出た。「あのー、俺、この木に登りたいんですけど、ちょっと通してもらえませんか?」

 ドラゴンは鼻先で笑った。「ケッ、人間ごときが世界樹に登ろうたぁ、片腹痛いわ。登りたいなら、俺の『古代種の鱗』を剥いでからにしろ」

 ……通じた! しかも、向こうから鱗の話をしてきた!

「鱗を剥げばいいんですね! 望むところだ!」俺は剣を構える。

「馬鹿め。貴様のような非力な人間が、この俺の鱗を剥げると思っているのか?」

 ドラゴンの言う通り、俺の剣はドラゴンの硬い鱗に弾き返され、歯が立たなかった。

 絶体絶命のピンチ。その時、俺の万年筆が再び光った。

【スキル:採集(Lv. Max)】

【スキル:解体(Lv. Max)】

 これもいつの間にか身につけていたスキルだ。森で木こりをして、ゴブリンを解体して食料にしていた経験が活きた!

 俺は剣を捨て、素手でドラゴンの足元に飛び込んだ。ドラゴンの巨大な爪が振り下ろされる直前、俺は解体スキルをフル活用し、ドラゴンの足の指の付け根にあった、少しだけ柔らかい部分に指をかけた。

「うおおおおぉぉぉ!」

 メリメリ、と嫌な音がして、一枚の銀色の鱗が剥がれた。

「ぐああぁぁ! 貴様、何をする!」ドラゴンは激痛に叫んだ。

 俺は剥がした鱗を掲げた。「やったぜ! 鱗ゲットだ!」

 ドラゴンは怒り狂うかと思いきや、なぜか満足げに頷いた。「ふん、やるではないか。その根性、認めよう。世界樹には、この俺の鱗を道標にすれば登れるだろう。好きにするがよい」

 ドラゴンはそう言い残し、雪原の向こうへと飛び去っていった。ポカンとする俺とリリア。

「……意外と話のわかる奴だったな」

 こうして、俺たちは最初の難関である「世界樹の頂上」への道標と、「古代種のドラゴンの鱗」というアイテムを手に入れたのだった。

 残るは「満月の夜明け」のタイミングと、「伝説級の聖剣」だけだ。最強への道は、少しだけ開けた気がした。相変わらず条件はむずすぎるけどな!




どうでしたか?楽しんでいただけると幸いです。

明日の8時40分頃更新予定です。

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