16話 牙
配信予定は
月火水木金をメインに活動です!
土曜日はやる時間があれば、投稿します!
日曜日は完全休憩です。
来週の火曜からしばらくお休みさせていただきます。
もし、今のうちにストックがたくさんあれば、投稿だけさせていただきます。
夜が明けるよりも早く、カイトは訓練場に立っていた。
昨日、アルトリアから見せられた“本当の顔”──淡々とした優等生の仮面の裏に潜む、鋭い眼と冷徹な判断力。
その姿が脳裏にこびりつき、眠れなかったのだ。
「……来たか、カイト」
声がして振り向くと、まだ薄暗い訓練場の中央にアルトリアが立っていた。
黒を基調とした軽装。髪をまとめ、表情は仮面のように静かだが、瞳だけが鋭く光る。
「今日から、お前に“牙”を教える」
「牙……?」
「お前は今まで、力をただ“振るう”だけだった。
だが──“牙”とは、獲物を仕留めるための技。
攻撃、防御、間合い、すべてを“殺すため”に最適化する。
半端な覚悟なら、やめておけ」
言いながら、アルトリアは腰の剣を抜いた。
鋭い金属音が、朝の空気を裂く。
「俺は……やる。昨日、あんたに見せられた背中……あれに追いつきたい」
「ふっ。なら──来い」
瞬間、アルトリアの姿が消えた。
「速──っ!」
気付くとすでに懐に入り込み、木剣の切っ先がカイトの喉元を狙っている。
ギリギリで防御した……つもりだった。
「遅い」
軽く弾かれた衝撃だけで、カイトの足元の土が抉れた。
「“力任せ”はもう卒業しろ。
お前には動きの無駄が多すぎる」
アルトリアは淡々と言い放つと、木剣を肩に担ぐ。
「まずは型を壊す。
お前の癖を、すべて叩き直す」
「癖……?」
「例えば――」
アルトリアはカイトの背後に回り、腕を軽く引いた。
「こうして振る時、お前は肩に力を入れすぎている。
それでは速さも鋭さも出ない」
「……っ」
「剣は“押す”な。
“通す”。
力を乗せるんじゃなく、流すんだ」
アルトリアはカイトの手を取り、剣をゆっくり振らせた。
力を抜くほど、剣の軌道は滑らかになり、空気が切れる音が変わる。
「……これ、が」
「そう。それだ」
アルトリアが小さく頷く。
「だが、技だけじゃない。
お前の本当の弱点は――“心”だ」
カイトは息を飲む。
「戦う理由が曖昧なら、力は伸びない。
昨日、お前は言ったな?
『俺は誰かを守りたい』と」
「……言った」
「だが、守りたい“誰か”を曖昧にしたままでは駄目だ。
本当に守りたい相手の顔を思い浮かべろ。
その覚悟が“牙”の根だ」
アルトリアの語気がわずかに強くなる。
「顔を思い浮かべろ。
名前を、心に刻め。
守りたいのは誰だ?」
カイトは唇を噛む。
──守りたい人。
──守れなかった記憶。
──失った背中。
胸の奥が痛む。
「俺は……」
絞り出した声は震えていた。
「……守れなかった過去がある。
その分……今度は、目の前の誰かを絶対に守りたい」
アルトリアは静かに目を細める。
「いい目をした。
なら……“牙”は必ず生える」
剣先が朝日を受けて光った。
「覚悟のある者だけに、私は技を授ける。
さあ、始めるぞカイト。
今日からお前は──私の手で、狩人になる」
「……ああ!」
その瞬間、朝の空気が震えた。
アルトリアの“真の顔”を知ったカイトは、
ここから本当に、強くなり始める。
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