14話 中隊長級ベベモット・グラウル
100個覚醒条件あるのは、やっぱ大変ですね、、、、、、
ただの音ではない。衝撃そのものだ。
大地が二、三度跳ねたように揺れ、木々がざわざわと悲鳴を上げて倒れこむ。
「な……なんだ、これ……っ!」
カイトが反射的に耳を押さえ、膝を折る。
アルトリアでさえ、鋭い視線のまま半歩だけ後ろへ重心を逃がした。
「来る……! 全員、構えろ!」
アルトリアの声と同時に、森の奥から“それ”が姿を現した。
黒い岩のような外皮。
燃えるような紅の双眸。
一歩踏み出すたびに、地面が陥没する“質量の暴力”。
魔王軍・中隊長級――
《ベヘモット・グラウル》。
見ただけでわかる。
今のカイトでは、完全に“格が違う”。
「……っ、デケェ……!」
カイトが思わず呟いた刹那。
グラウルの視線が、真っ直ぐカイトに向く。
そして――
「ォォォォォォオオオオオオオッ!!」
巨体が跳んだ。
ズドンッ!!!
着地しただけで、周囲の地形がえぐれ、爆風が襲う。
「伏せろッ!!」
「うわっ!!」
仲間の冒険者たちが吹き飛ばされ、空中でくるくると回転しながら地面へ叩きつけられる。
カイトは咄嗟に万年筆を構え、防御結界を展開するが――
バキィン!!
結界は一瞬で砕けた。
「うっ……ぐ……!」
胸の奥に重たい痛みが走る。
肺がひしゃげたように息が吸えない。
(ヤバい……反応できねぇ……!
これ、マジで“一撃で死ぬ”クラスだろ……!)
グラウルが再度跳ぶ。
今度は“踏み潰す”動きだ。
カイトの頭上へと影が落ちる――
「させるかぁッ!!」
アルトリアが割り込んだ。
剣と巨体が衝突する。
金属音ではない。轟音。地響き。
ガガガガガッッ!!!
「アルトリアさん!!」
「下がれ、カイト! 今のお前ではまだ早い!」
「でも――!」
「命令だッ!!」
怒号に近い声に、カイトの体がビクリと震えた。
同時に、グラウルの腕が弾き飛ばされ、巨大な爪がアルトリアの顔すれすれを通過する。
アルトリアの剣が深く食い込み、火花が散った。
しかし――
「固っ……!? くっ、これでも通らないっての!?」
魔王軍・中隊長級の格。
それは、アルトリアの攻撃さえ致命傷に届かないという現実。
「っし! なら俺も――!」
カイトが飛び出そうとした瞬間、アルトリアが叫ぶ。
「来るなッ!!」
「でも、俺も戦え――!」
「死ぬぞ、カイトッ!!」
その声は、今まで聞いたどんな叫びよりも強かった。
カイトの足が止まる。
アルトリアは再びグラウルに向き直り、低く構える。
「――全員、絶対に下がってろ。こいつは……本物だ。」
グラウルが口を開け、魔力を圧縮し始める。
黒紫に渦巻く球。
それは見るだけで生存本能を破壊する“死の塊”。
「魔王軍・中隊長の魔力砲……っ!」
アルトリアが舌打ちした。
(ヤバい……これ、森ごと吹っ飛ぶやつだ……!
でも俺……まだ覚醒条件が……!)
カイトは考えるより早く体が動いていた。
アルトリアの前に出る。
「カイト!? 退け!!」
「無理だ! ここで何もしなかったら……俺、死んでも後悔する!」
万年筆を逆手に持ち、空に向ける。
(頼む……! せめて、せめて一条件でも……!)
「発動……っ!!
【理力書換《Rewrite》】ッ!!」
文字が空中に浮かび、結界を構成していく。
だが――
「くっ……っ!? 足りない……!」
覚醒条件が揃っていない。
文字は途中で崩れ落ち、結界の完成には遠く及ばない。
それでもカイトは立ち塞がるのをやめなかった。
グラウルの魔力砲が放たれる。
ドォォォォォォォン!!!
黒紫の奔流が、世界を焼き払う。
「――――っっ!!?」
カイトの体が弾き飛ばされる。
背中から大木へ叩きつけられ、地面を転がる。
血が噴き出し、視界が赤と白にぐちゃぐちゃに揺れた。
「カイトォォォ!!」
アルトリアが叫ぶ。
しかし、その瞬間――
「あ?」
グラウルの背後に――
“影”が現れた。
ズガァンッ!!
凄まじい衝撃と共に、グラウルの巨体が横へ吹き飛ぶ。
誰も反応できなかった。
速度が違いすぎた。
倒れたカイトの視界に、ぼんやりと人影が映る。
銀の鎧。
巨大な大剣。
そして、背中に刻まれた一つの紋章――『王国騎士団・副団長』。
「……遅くなりました、カイト。」
アルトリアとは別の声。
でもどこか、聞き覚えがあるような、懐かしいような――
「アル……トリア……さん……?」
カイトの声は震えていた。
痛みではなく、驚きと安堵で。
銀の騎士は大剣を肩に担ぎ、グラウルへ一歩踏み出す。
「よく生きていました。あれを受けてなお立ち向かったあなたは――」
振り返らずに、静かに告げた。
「――私の弟子と名乗るに、十分です。」
森が凍りつく。
次の瞬間、空気が震えた。
副団長アルトリア(本物)。
その一歩で――空気の密度が変わった。
「あとは任せて、休んでいなさい。
あなたは……もう、十分に強い。」
意識が闇へと落ちていく。
カイトが最後に見たのは、
“魔王軍中隊長グラウルが、本能的に後退した”光景だった。
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