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森田くんの申告が届かなかった日

その日の昼休み。

森田くんはいつものように、木村や坂井と一緒に食堂の列に並んでいた。


列はゆっくりと進む。しかし、木村が用事を思い出して列から外れる。

その時、森田に注文を頼んでおいた。


そして、森田は自分の番が来るのを静かに待っていた。


やがて、なぜか木村の分を頼まれた別の社員、山本さんが近づいてきた。


「すみません、木村さんの分、代わりに頼んでいいですか?」


森田は少し驚いた。

「え、ぼくが頼むんじゃないの?」という気持ちが胸の中で膨らんだが、言葉にできなかった。


山本さんが厨房に向かう。

森田は木村の分を頼むチャンスを失った。


山本さんの声が響く。


「木村さんの分、大盛りでお願いします!」


厨房はいつもと違う声に一瞬ざわついた。


森田は、自分の分の申告を聞かれるまでの間、

心の中で小さな葛藤を抱えていた。


(自分で頼めばよかったのか。いや、山本さんが頼んでくれるなら、それでいいのか?)


その後、森田の番。


「中盛りで……」

いつものように静かに申告したが、どこか声に力がなかった。


席に戻ると、坂井が話しかけてきた。


「山本さん、木村の分頼んでくれたんだな。どこかで聞いてたんかな。

 森田はちょっと遠慮したのか?」


森田は少し考え、答えた。


「そうですね……でも、正直、なんだか置いてけぼりにされた気分でした」


坂井は笑いながら言った。


「まあまあ、今日はそういう日さ。

 でもお前、もう自分の言葉を持ち始めてるんだよ。

 次はきっと、自分で頼む番だ」


午後のデスクで、森田はそっとメモを残した。


「次は、自分のために頼もう」


■あとがき:

人の代理をするということは、時に自分の存在が薄れる瞬間を伴う。


森田くんの「声が届かない」体験は、

自己主張の難しさと成長の過程を象徴している。


次第に彼は、

「自分の言葉で、自分の腹を満たす」勇気を持つようになるだろう。


人は誰しも成長のための“試練と挫折”があります。自己表現の大切さがわかった日だったのかもしれない。

明日も更新いたします。ぜひ見に来てください。

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