はい喜んで、そして斜め上の奇跡
その空気を一変させるのは、予想の斜め上を行く双子のような女の子二人組。
珍妙な注文に戸惑いつつも、それが奇跡のエネルギーとなり、厨房に温かな笑顔が戻る物語をお届けします。
その日、厨房にいつもの「はい喜んで!」の声がなかった。
田中くんはいつも通り元気いっぱいで注文を受けているが、今日はどこか力が抜けている。
「なんだか元気がないなあ……」
佐藤さんが心配そうにつぶやく。
そんな時、食堂のドアが軽やかに開き、
いつもの女の子二人組がやってきた。
彼女たちは注文時に、厨房を一瞬凍らせる。
あやかは言った。
「カツカレーで。…でも、カレーは無しで。カツだけ乗せてください!」
厨房中が一瞬沈黙。
二人目はさらに衝撃の注文を続ける。
「私は特盛そば。で、そのそばに、カレーをかけてください!」
厨房の佐藤さんも田中くんも絶句。
「え?」「は?」「いや、それは…」
しかし、彼女たちはまったく悪気がない。
むしろ得意げに笑いながら言う。
「これ、絶対美味しいって!」
元気のなかった田中くんも、
そんな斜め上の発想に思わず顔がほころぶ。
厨房全体に小さな笑いが広がり、
重たかった空気がすっと軽くなった。
その後、出来上がった皿を見て佐藤さんがこっそりつぶやく。
「変わった注文だけど、食べる人が喜ぶのが一番だよな……」
食べてみたら意外にクセになる味に、厨房の皆が驚く。
女の子二人は満足そうに笑い、厨房にエネルギーを残して去っていった。
■あとがき:
思わぬ斜め上の注文は、
疲れた心に小さな風穴を開ける魔法のようなもの。
厨房もスタッフも、
改めて「食べること」の楽しさを思い出した一日だった。




