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はい、喜んで!と、神の指導

昔のバイト先“昭和の居酒屋ノリ”を引きずる新人と、神対応の佐藤さん。

カレーに「はい喜んで!」はちょっと違う。

そんな微妙な空気感の中で、“接客とは何か”を丁寧に教える話


新人の田中くんは、元気だけが取り柄の19歳。

厨房に入ってまだ3日目。

だが接客の返事は、なぜかいつもこうだった。


「カレー、中盛りで」


「はい、喜んで!!」


「ピーマンの肉詰め、小盛りで」


「喜んでぇっっ!!」


明らかにトーンが浮いていた。

食堂は社員の休憩の場。

お祭りじゃない。戦場でもない。


周囲はざわつき、厨房の奥では軽く笑いが漏れた。


その日の昼下がり、厨房の佐藤さんは田中くんを静かに呼んだ。


「田中くん、喜んでるのはいいことだ。悪いことじゃない。

でもね、“お昼を落ち着いて食べたい人”にとっては、

その“元気”が、ちょっと重い時もあるんだよ」


田中くんはきょとんとしながらも、黙って聞いていた。


佐藤さんは微笑んでこう続ける。


「“はい、かしこまりました”には、“敬意”がある。

“喜んで”には“勢い”がある。

どっちを出すかは、相手によって変えるんだよ」


翌日から、田中くんは言葉を選び始めた。


「トンカツ、中盛りで」


「はい、かしこまりました」


「今日はカレー気分で」


「かしこまりました、ちょうど炊きたてですよ」


すると、常連の橋本くんがぽつりとつぶやいた。


「…なんか、最近あの子、落ち着いたな。いいな」


厨房では佐藤さんが密かにガッツポーズをしていた。


■あとがき:

接客における“声の温度”は、時として味よりも大切。


元気だけじゃなく、

相手の気持ちに寄り添うことで、

本当の“神対応”は育っていく。


佐藤さんはまた一人、厨房に新たな“職人の芽”を植えたのだった。

明日も更新いたします。ぜひ見に来てください。

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