森田くん、大盛りにされて戸惑う日
森田くんの意思を無視され、勝手に「大盛り」にされてしまう
そんな「他者による決定」の葛藤と、彼の内面が大きく揺れる日。
昼休みの食堂。
いつものように並ぶ森田くん。
今日は後輩の佐々木くんも一緒だ。
列の進み具合に合わせて、佐々木くんがニコニコと声をかける。
「森田先輩、今日も中盛りですか?」
森田は少し考え込んでから、
「ああ、そうだな…」
そう答えた矢先
佐々木くんが厨房へ駆け寄り、
「森田先輩の分、大盛りでお願いします!」
厨房の佐藤さんが驚いた顔で、
「あれ?先輩、ご自身では?」
佐々木くんは明るく返す。
「先輩、いつも控えめだから、これくらいでちょうどいいと思って!」
森田くんは厨房から戻る佐々木くんを見つめる。
心の中はざわつく。
(言い返せばいいのに…でも、どうしても声が出ない)
席に着いた森田は、自分のトレーを見る。
そこには、いつもより明らかに多い大盛りのご飯が盛られていた。
隣の佐々木くんが楽しそうに食べているのを見て、
森田は小さく呟いた。
「ありがとう。でも、俺は…」
言葉はそこで止まり、結局何も言えなかった。
午後の仕事中、森田はノートに小さく書き込んだ。
「いつか、自分の言葉で言いたい」
■あとがき:
優しさは時に、押し付けになることもある。
佐々木くんの行動は後輩らしい好意だが、森田くんにとっては重く感じられた。
しかし、言い返せない森田くんの葛藤こそが、
人間の弱さと成長のリアルな一面を映し出す。
ゆっくりでいい。
いつか彼の声が、しっかりと厨房に届く日が来るだろう
明日も更新いたします。ぜひ見に来てください。
 




