黒服の男
セアネシェレが捕らえられている建物の地下に黒服の男は現れて……。
レンヴィーノとジンフェルスがキッセルナ砂漠で戦い、セアネシェレの居るであろう方へ聖剣を追いかけ向かっているエミネデウス。
辺りは暗く寝ている人が多いせいか静まりかえっている。
そしてその頃、そうとも知らず廃墟の建物の地下でセアネシェレは自分の不甲斐なさに落ちこみ泣いていた。
(どうしたらいいのでしょう。これから私は……どうなってしまうの?
いいえ、このままではいけない。なんとかしなければ……)
どうしたらいいのかとセアネシェレは、ひたすら思考を巡らせる。
天井の扉が開いた。その扉から黒い服を身に纏った男が降りてくる。因みに目を覆う仮面と帽子までもが黒だ。
雰囲気だけなら紳士のようにみえなくもない。年齢は三十代前半ぐらいだろう。
「どうだ? 連絡では女勇者を誘拐すると聞いていたが」
そう言いながら水色髪の女性へと歩み寄った。
「これは伯爵さま……まさか、このような場所にこられるなどと思いもよらず。お迎えに出られなく申し訳ありません」
水色髪の女性はそう言いながら深々と頭を下げる。
「気を遣わずとも構わん。それよりも勇者をみたい」
何処に居るのかと黒服の男は部屋を見回した。
「こちらに居ります」
水色髪の女性は拘束され床に横たわっているセアネシェレへ向け指を差す。
「おおー……なんと可愛らしい。女勇者と聞き厳ついイメージを想像していた」
「はい、覚醒前とはいえ……この者が本当に勇者なのでしょうか? どうしても、そうは思えないのですが」
「聖剣が選んだのであれば、そうなのだろう。まあ……その聖剣も今は結界で封印され何もできないだろうがな」
そう言いながら黒服の男は、セアネシェレのそばまでくると見下ろした。
(誰なの? 顔を隠していてみえないわ。知らない人なのは間違いないけど……伯爵って言ってた。でも、この国の人なのでしょうか)
涙目で黒服の男を睨みながらセアネシェレは考えを巡らせる。
「フッ、勇者が現れたという事は魔王か……それに匹敵する者も現れるはずだ。勇者は必ず、その者をみつけだし討ち取るだろう」
中腰になると黒服の男はセアネシェレの顎を持ち顔を自分の方へ向けた。
「そうはさせるもんか! その前に君を汚し覚醒などさせないよ。まあ……殺した方が早いだろう。だが、それじゃつまらないからね……女だしな」
「伯爵さま……本当に、この世界を変えたいと思われているのですか?」
「ああ、勿論だ。そのために魔王となる存在を探していたのだからな」
どうやら、ただの誘拐犯じゃなさそうだ。
それを聞いたセアネシェレは黒服の男を睨みつける。しかし可愛すぎて迫力がなさすぎだ。
(魔王? じゃあ私が聖剣に選ばれたのって……そのため。ですが、よりにもよって……なぜ私の代でなのよ。
通り過ぎて次世代だって良かったと思いますのに……だけど、どうなるのかしら? 私が死んだら新しい勇者は産まれるの?
同じ血筋が何処かに居れば可能かもしれないわ。でも、すぐには無理よね。その間に魔王が復活するかもしれないし。
そうなると……やっぱり自分の力でなんとかしないと)
足をバタつかせセアネシェレは黒服の男の足を何度も蹴る。
「ククク……ワハハハッ!? 痒い痒い、それで抵抗しているつもりか?」
「んー……ん、ううん……」
「無駄だ。さて、これなら余裕で処理できそうだ。まあ……今のうちだがな」
キッと睨み黒服の男は、セアネシェレの頬を思い切り叩き気絶させる。
「弱い……弱すぎる。フンッ、まあいい。……連れて行くか。外に用意している荷馬車に運べ」
それを聞き水色髪の女性は頷いたあと、セアネシェレを抱きかかえ階段から一階へと向かった。
それを確認すると黒服の男は不敵な笑みを浮かべ階段の先にある扉へ視線を向ける。そしてその後、一階へと向かい歩き出した。
読んで頂きありがとうございます(^▽^)/
この黒服の男って何者なの? 一応は伯爵らしいけど。それに、ただの誘拐犯じゃなさそうだね。
汚すって言ってたけどセアネシェレを……まさか……流石にそれはまずいぞ。
このあとセアネシェレの運命はどうなるんだろうか?
と、いう事で……(/・ω・)/
では、次話もよろしくお願いします( *´艸`)




