懐疑
エミネデウスはハルナシアにこれからどうするのかと問いかけ……。
あれからエミネデウスは、なんとか……まだ微妙だが立ち直った。
「ハルナシアさんは、これからどうするのですか?」
「とりあえず他の人たちに気づかれないように城へ連行するつもりよ」
「そうなると宿屋はどうなるのでしょう?」
そう問われハルナシアは、クスッと笑いエミネデウスをみる。
「変わってるわね。この緊迫した状況で、この宿屋の心配をするなんて」
「どうでしょうか? 私は只、自分たちを含め泊まり客が困るのではと思いましたので」
「言われてみればそうね。まあ、それはアタシの方で手配しておくわ。エミネデウスは早く結界を解除した方がいいんじゃない?」
それを聞きエミネデウスは思い出したように聖剣の方へ視線を向けた。
「そういえば解除しようとしていたのでした。ですが、その前に……」
片手を頭上に掲げエミネデウスは詠唱し始める。
《無から生まれし属性 ――――……我が肉体へ刻め!!》
詠唱の一部だけ脳内で言った。
掲げた手が発光し頭上に魔法陣が展開される。すると魔法陣は、スッとエミネデウスの頭から足下まで降りて消滅した。
その後エミネデウスの体に激痛がはしる。それと同時に体全体が七色に発光して苦痛の表情を浮かべ頭を抱え蹲った。
「ちょ……大丈夫なの?」
心配になりハルナシアはエミネデウスの体を触ろうとする。
「クッ……ま、待って……まだ……触るな!……ハァハァハァ……」
「わ、分かったわ」
そう言うもののハルナシアは大丈夫なのかと不安に思った。
エミネデウスの体を覆う七色の光が徐々に消えていき息も段々落ち着いてくる。
「ハァハァ……申し訳ありません」
そう言いながらエミネデウスは、ゆっくり立ち上がった。
「だいたい何をしたか理解したわ。でも、ここまでする必要があるの?」
「自分の身は自分で護りませんと、さっきみたいに何時なにがあるか分かりませんからね」
「そうだとしても下手をしたら命に関わるんじゃないの?」
ニコッと笑みを浮かべエミネデウスは首を横に振る。
「一時的に苦痛を伴いますが、それほど危険ではありませんよ」
「そうなのね……でも毎回こんなことやってたら体力がもたないと思うけど」
「このぐらいの苦痛は問題ありません。どちらかといえば快感なのですよ」
エミネデウスは変態だったようだ。まあ体に罠を仕掛けること自体普通では考えられないのだが。
それを聞きハルナシアの顔は、ピクピクとひきつっている。
「そう……そうなのね。じゃあルゼバスを連行するから、あとのことは貴方たちに任せるわ。それと、このことを連絡しておきます」
「ありがとうございます。一つ聞きたいのですが……セアネのことも話すのですか?」
「一応は話した方がいいと思うの。勇者だと分かったうえで攫っているしね」
そう言いハルナシアは真剣な表情でエミネデウスをみつめた。
「それもそうですね。それなら、ありのまま話してくれませんか?」
「ええ、そのつもりよ。まだ覚醒前……それも、かなり弱い。そんな状態で祭り上げられたら覚醒の妨げになるかもしれないわ」
「それなら大丈夫ですね。では、よろしくお願いします」
エミネデウスはそう言うと頭を下げる。
「じゃあ行くわね」
軽くあげ手を振るとハルナシアはルゼバスを立たせ歩かせた。
エミネデウスはハルナシアが自分の方へ背を向けたことを確認すると脳内で詠唱し始める。それと同時にハルナシアの背中に向けて手を翳した。
(《…… ――監視の瞳 我が命じる 対象者を見張れ!!》)
そう脳内で言い放つとハルナシアの背中に魔法陣が現れ消える。
そのことに全く気づかずハルナシアは、ルゼバスと共に部屋から出ていく。
(これでいいです。信用するしないに拘らず……用心はしておいた方が良いですので)
何もなかったようにエミネデウスは聖剣の方へと向かった。
読んで頂きありがとうございますo(^▽^)o
エミネデウスは用心深いね。まあ、そのくらいがいいんだろうけど。
それにエミネデウスは結構勘がいいからなぁ。何かを察知したのかもしれないね。
と、いう事で……ヽ(^o^)
では、次話もよろしくお願いしますp(^_^)q




