緋色髪の竜人と覚醒の兆候と攫われると
セアネシェレが眠ろうとしたその時、部屋の窓の一部が破壊されて……。
時は少し遡り……――ここはセアネシェレの部屋。
寝巻に着替えるとセアネシェレは、ゴロンとベッドの上に寝転がった。
仰向けになり天井をみつめ色々と考え始める。
(私は本当に勇者なのでしょうか? どうしても信じられないのです。こんなにも弱くて何もできないのに……。
これでは誰も護ることなんてできません。レンやエミネに護られているだけではいけない。
ああ……どうしたら強くなれるの? 覚醒……本当にできるのかしら)
自問自答しながらセアネシェレは、ハァーっと溜息をついた。
色々考えていたが眠くなり目を徐々に閉じていく。とその時……。
――ドガーン!!……バリッーン!!――
途轍もない音が周囲に響き窓……いや、壁ごと一部が破壊される。
「な、何が起きましたの!?」
何が起きたのかと思いセアネシェレは目を覚ました。そして上体を起こし音がした方へ視線を向ける。
「はて? あなたは誰なのですか?」
破壊された窓際に立って居る緋色でツンツンした髪の男をセアネシェレは目を凝らしみた。
緋色髪の男はセアネシェレのそばへと、ゆっくり歩みよる。その姿がハッキリしてきた。
その男の姿は人間じゃないようだ。
「これが勇者なのか? 只のお嬢様にしかみえん」
「それは私も疑問に思っていますわ。それよりも、その姿は竜人ですよね? レンの本当の姿に似ています」
その名前を聞きその男……緋色髪の竜人は嫌な顔をする。
「レン……もしかしてレンヴィーノのことか?」
「ええ、そうです。貴方はレンの知り合いなのですか?」
「よく知ってはいるが、あんなヤツの名前など聞きたくもない!!」
ピクピクと顔をひきつらせ緋色髪の竜人は叫んだ。
「嫌いなのですね。じゃあレンの敵という事でしょうか?」
「知るか! あーイライラする。まあいい……サッサと済ませて退散するか。こんだけ派手に破壊したから誰かくるだろうしな」
そう言いながら緋色髪の竜人は聖剣が置かれている低い棚の方へ視線を向ける。即座に片手を聖剣に向けると竜人語なのか聞きなれない言葉を発した。
《異なる物質 零からなるもの 猛毒付与 我が命じる 対象物に結界を張れ!!》
それに気づきセアネシェレは聖剣に何かされると思い咄嗟にベッドから下りようとする。
だが時既に遅し……セアネシェレはベッドから下り聖剣に触れるも結界が張られているため弾かれてしまった。
「イタッ!!」
それだけではない。結界に触ったため右の人差し指、中指、薬指が毒に侵され黒っぽい紫へと変色する。しかしなぜか少しずつ腫れが引いてきていた。
「嘘だろ? これも勇者の体質……能力という事なのか。そうなると既に覚醒しつつある。ってことは……余裕がないな」
そう言い緋色髪の竜人はセアネシェレに跳びつき抱きかかえた。
「キャアァー!?」
いきなり抱きかかえられセアネシェレは驚き大声で叫んだ。
「あーうるさい!! 仕方ない……手荒な真似はしたくなかったが」
これ以上大声を出されると厄介だと思い緋色髪の竜人は布でセアネシェレの口を塞ぎ窓の方をみる。そしてそのまま窓の方へ駆けだし緋色髪の竜人は翼を生やすと外へ飛び立った。
(それにしても……勇者か。レンヴィーノ……お前は、よくよく勇者に縁がある。いや、自ら勇者と関わろうとしてるのか?
まあ……いい。オレは頼まれた仕事をするだけだしな)
空を飛び緋色髪の竜人は、セアネシェレを抱えながら夜の暗がりの先へと消え去る。
そしてその後レンヴィーノとエミネデウスがセアネシェレの部屋へと入って来たという訳だ。
読んで頂きありがとうございます(^▽^)/
今回はセアネシェレ視点で書きました。やっぱり主人公だし流れ的に書かないとまずいかと思ったので(;^_^A
それはそうと、この緋色髪の竜人は何者なんだろうね? 仕事でセアネシェレを攫ったみたいだけど。それにレンヴィーノのことも知っているっポイね。
そういえば……前話の最後でレンヴィーノが聖剣を睨んでたけど、もしかして気づいてたのかな? それにやけに結界に対して慎重だったよね。
だけどエミネデウスには言わなかった。やっぱり気づいてないのか?
まあ、これについては次話で分かるだろう。
と、いう事で……(=゜ω゜)ノ
では、次話もよろしくお願いします(*^▽^*)




