知り合いの宿屋
セアネシェレ達はレンヴィーノの知り合いがやっている宿屋に来て……。
ここは宿屋。二階建てで結構大きな建物だ。他にもあったが、なぜかレンヴィーノは迷わずここに入る。
「おっ、レンヴィーノじゃないか。何年ぶりだ? って云うか……流石は竜……」
「おい、ルゼバス。言葉に気をつけろよな」
「あ、そうだったな。それで今日は、なんの用だ?」
この男は宿屋の主でルゼバス・ガンテと云い、どうやらレンヴィーノの知り合いのようだ。年齢は三十代ぐらいである。
「なんの用って泊まるために決まってんだろ」
「待ってください。もしかしてレンの知り合いなのですか?」
「ほう……珍しいじゃねえか。お前が仲間連れとはな。それも一人は可愛い少女だし……どうやって口説いたんだ?」
品定めするような目でルゼバスはセアネシェレをみた。
そう聞かれレンヴィーノは言い返そうとする。
だがセアネシェレは、それを遮り話し出した。
「まあ……可愛いだなんて、お誉め頂きありがとうございます。私はレンに助けて頂きました。いえ、エミネにもでしたね。二人に助けてもらい……それから一緒に旅をしていますの」
その発言のせいで口説いたという言葉がかき消される。わざとなのか只の天然なのかセアネシェレらしいと云えばそうなのだろう。
「そうなのか。何があったかは分からんが、いい仲間をみつけたみてえだな。そんで知ってんのか、お前の正体を?」
「そのことはあとで話す。今は腹がすき過ぎてヤバい」
「まさか飲まず食わずで、ここまで来たのか?」
そう聞かれ三人は首を横に振った。
「流石にそれはありません。一応、私が保存食を持って来ていたので」
「じゃあ……レンヴィーノだけが足りなくてってことだな。仕方ねぇ……俺の部屋にこい、タダで食わせてやる。その代わり話を聞かせろ」
「ああ、悪いな。その前に三部屋、二部屋でもいい……用意してくれ」
そう言われルゼバスは棚から番号が書かれている鍵を三つ取るとカウンターの上に置く。
「並びで空いてるのは、この三部屋だけだ。いい部屋じゃないが大丈夫か?」
それをみてレンヴィーノは、カウンターに置かれた鍵をとる。その後、言われたことに対し答えた。
「構わない。セアネにエミネ、問題ないよな?」
「ええ、泊まる所があるだけマシだと思っていましたので」
「私も大丈夫ですわ」
それを聞きレンヴィーノはカウンターに置かれている宿帳に記載する。その後、三人は部屋へと向かった。
✦*✦*✦
三つあるうちの真ん中の部屋の前。ここに来たセアネシェレ達は部屋をどうするか話し合っている。
「んー……この場合、真ん中の部屋をセアネシェレにした方がいいのか?」
「そうですね。セアネは、それで大丈夫ですか?」
「ええ、それで問題ないですわ」
ニコッと笑いセアネシェレはレンヴィーノとエミネデウスをみた。
「じゃあ、あとは両脇のどっちにするかだけだ」
「そうなりますね。先程、三部屋をみましたが……私は向かって左側にしたい」
「別にそれで構わない。でもなんでだ?」
不思議に思いレンヴィーノは首を傾げる。
「まだ……マシかと思いまして」
「あーなるほど……左側の部屋は、どちらかといえば綺麗だったな。オレは別にどこでも寝れるから、それで大丈夫だ」
「は、あ……そうなります。ですが本当にいいのですか?」
そう問われレンヴィーノは、ニカッと笑みを浮かべ頷いた。
その後、レンヴィーノは二人に鍵を渡す。
そして三人は各自部屋に向かったのだった。




