第9話 京都デート
よっ!みんな!飯田雷丸だ!
まず最初に言っておくけど、この小説はすでに完結まで書ききってるぜ!!
だから安心してくれ、毎日投稿が可能ってわけだ!
「え、毎日?本当かよ?」って思っただろ?
でも大丈夫!俺、やる時はやる男だからな!
つまり、毎日バッチリ更新されるってことだ!
だから――
ブックマーク、評価、しっかり頼むぜ!!
【京都駅】
「ついに来たぜ、京都ぉぉぉぉ!!!」
俺の声が京都駅の巨大なアトリウムにこだまする。
頭上に広がるガラスの天井、その下を行き交う観光客たちの喧騒。すべてが俺のテンションを引き上げてくる!
隣の雪華は、俺のハイテンションを見て若干引き気味だ。
「雷丸様、少し静かに……周りの人が見ていますよ……」
いや、そんなの気にしてる場合じゃねぇ!
京都!美少女妖怪!狐!これ以上テンション上がらないわけがないだろうが!!
俺は拳を突き上げ、さらに叫ぶ。
「聞け、京都の街よ!俺が今、降臨したぁぁぁ!!」
通行人たちが何事かとこちらを振り返る。
「なんやあの人、修学旅行生か?」「いや、ちゃうやろ」「テンション高すぎやろ」
すれ違う地元の人たちの視線?気にしねぇ!むしろ注目されるのはハーレム王として当然だ!
雪華は苦笑しながら小声で言った。
「そんなに目立っていたら、狐耳の妖怪も近寄りたくなくなるかもしれませんよ……」
ハッ!それは盲点だった!!
だが、俺はすぐに気を取り直す。
「大丈夫だ!俺のこの人徳、いやハーレム徳なら自然と可愛い子が寄ってくる!」
雪華は呆れ顔だ。
「本当に不思議ですね……その自信はどこから湧いてくるんでしょうか……」
俺たちの京都ハーレム探訪の旅が、こうして幕を開けた!
待ってろ、狐耳ちゃん!俺のハーレム、今日からもっと豪華にするぜ!!
――――――――――――――
「よし、まずは清水寺に行ってみよう!」
観光客で賑わう通りには、お土産屋や甘味処が並び、どこからともなく漂ってくる甘い香りが俺たちを包み込む。清水寺の荘厳な雰囲気とは対照的に、この通りはまさに「観光地の祭り状態」だ。
そんな中、雪華が突然立ち止まり、何かを指差した。
「雷丸様、あれを見てください!抹茶ソフトクリームです!……美味しそうですね…………!」
その声には、驚くほどの熱意が込められていた。指差す先には、これでもかというほど濃い緑色の抹茶ソフトクリームが回転台でぐるぐる回っている。目をキラキラと輝かせる雪華を見て、俺は思わず吹き出しそうになる。
「おいおい、そんなにソフトクリームにテンション上がるのかよ!
俺が笑いながら突っ込むと、雪華は全く動じることなく真顔で答えた。
「いえ、冷静です。抹茶ソフトクリームが極めて美味しそうだ、という事実に基づいた感想を述べただけです。」
「いや、その目の輝き、全然冷静じゃねえから!」
雪華は全く動じることなく、淡々と続ける。
「抹茶には抗酸化作用があり、美容にも効果的です。さらに、この温暖な気候において、冷たい甘味は体温調整にも有効かと――」
「ソフトクリームの理屈語り始めるな!ただ食べたいだけだろ!?」
「……雷丸様、お一つどうですか?ご一緒に食べれば、さらに美味しく感じるかもしれません。」
「結局食べたいだけじゃねーか!素直になれ、雪華!」
俺が全力でツッコむと、雪華は少しだけ顔を赤らめながら小さく呟いた。
「……はい、少し……食べたいです……。」
その素直すぎる告白に、俺は思わず爆笑してしまった。
「よっしゃ、買ってやるよ!ハーレムメンバーにひもじい思いは絶対させねぇ!お腹いっぱいになるまで食べさせるからな!」
雪華はわずかに顔を赤らめながら、「ありがとうございます、雷丸様」と小声で答えた。おい、その可愛さは反則だぞ!
店で買った抹茶ソフトクリームを手にした雪華は、一口食べると、口元に少しだけクリームをつけたまま満面の笑みを浮かべた。
「美味しいですね……雷丸様、この街、とても良いところです!」
その笑顔が、まるで天使のような輝きを放っていて、俺の心臓を直撃した。
「かわっ……かわいい……!」
思わず頭を抱えながらその場にしゃがみ込んでしまう俺。
「雷丸様、どうされましたか?」と心配そうに覗き込む雪華。
「いや、ダメだ……その笑顔……俺には眩しすぎる……!」
「えっ……?」
雪華のキョトンとした表情がまた可愛い。おい、これ以上可愛さを盛られると俺が限界突破するぞ!
「もう、なんでお前、こんなとこでそんな可愛い顔するんだよ!観光どころじゃなくなるだろ!」
雪華は「??」と首をかしげているが、その仕草さえも破壊力抜群だ。俺は胸を押さえながら立ち上がり、心の中で密かに叫んだ。
――――雪華、お前、反則すぎるだろ!!!
――――――――――――――――
清水寺の境内に足を踏み入れた俺たちは、目の前に広がる荘厳な光景に言葉を失った。
「おお……これが清水寺か……!」
俺は思わず立ち止まり、その存在感に圧倒される。朱色の柱と緑の屋根が青空に映え、眼下には京都の街並みが広がっている。まさに「日本の絶景」そのものだ。
雪華も同じように足を止め、静かに景色を見つめながら呟く。
「雷丸様……この景色……なんて美しいのでしょう……。」
その声には、普段の冷静な彼女にはない感情が込められていた。まるでこの瞬間だけ彼女が感動を完全に開放しているようだった。
「なぁ、雪華。この景色、どう表現したらいいんだろうな?感動が大きすぎて、言葉が出てこねぇよ。」
俺が苦笑しながら聞くと、雪華はしばらく考えた後、真剣な表情で答えた。
「……詩的に言えば、『この朱塗りの柱は、歴史の重みを支え、我々を未来へと導く道しるべ』……といったところでしょうか。」
「めっちゃカッコいいじゃねぇか!詩人みたいだな、お前!」
「……いえ、自然に出てきた言葉です。」
「普通そんな言葉自然に出てこねぇよ!お前、本当すごいな!」
雪華は少し照れたように視線をそらしながら続ける。
「雷丸様も、何か感じたことを言葉にしてみてはいかがですか?」
「俺か?じゃあ……『清水寺、めっちゃでかい!すげぇ!』……とか?」
「……ふふっ、雷丸様らしいですね。」
笑顔を見せる雪華に、俺は一瞬見とれてしまった。
その時、突然どこからか観光客の歓声が聞こえた。振り返ると、大きなカメラを持った外国人観光客が俺たちを撮影している。
「え、何これ?俺たち写ってないか?」
「どうやら私たちの後ろにある清水寺の景色が目当てのようですが……ついでに写り込んでいるのかもしれません。」
「おい、これ完全に『清水寺カップル』みたいになってんじゃねぇか!」
「……悪くはないですね。」
「え、何その意味深な答え!?やめろ、俺がドキッとするだろ!」
雪華の微笑みと清水寺の荘厳な景色に心を乱されながらも、俺は改めてこの特別な瞬間を全力で堪能した。
「……やっぱり、来てよかったな。」
「はい、雷丸様。本当に……素晴らしい場所です。」
雪華の感動に満ちた声を聞きながら、俺たちは清水寺の空気に浸り続けた――が、後ろの外国人観光客が「あのカップル、すごく絵になる!」と大声で言っているのを聞いて、俺たちは同時に顔を真っ赤にしてしまったのだった。
――――――――――――――――
清水寺を堪能した後、俺たちは総本家ゆどうふ「奥丹 清水」に向かった。ここは、雪華をお腹いっぱいにさせたい一心で俺が予約した特別な場所だ。
「雪華、今日はお前を絶対に満腹にさせるからな!」
俺が胸を張って宣言すると、雪華は少し驚いた顔をして首をかしげた。
「雷丸様、私はそんなにたくさん食べないので……」
「いや、いいんだ!今日は俺が全部おごる!遠慮すんなよ!」
「……ありがとうございます。でも、雷丸様がこうして予約してくださるなんて……少し意外です。」
「おい、どういう意味だよ!俺だって計画的なとこ見せる時あるんだよ!」
そんなやり取りをしながら、奥丹 清水の暖簾をくぐる。店内には上品な雰囲気が漂い、木の温もりと心地よい香りが出迎えてくれた。雪華が静かに感嘆の声を漏らす。
「……素敵な場所ですね。」
「だろ?こういうとこで豆腐料理を楽しむってのも悪くないだろ?」
「はい、雷丸様。とても……楽しみです。」
俺たちは席に案内され、次々と運ばれてくる料理に目を見張った。
湯どうふ、田楽、揚げ出し、胡麻豆腐――どれも見た目からして美味そうだ。
「これ全部、豆腐なんだな!」
「豆腐は身体に優しく、栄養価も高い食材です。これは……とても贅沢な食事ですね。」
雪華が慎重に箸を持ち、湯どうふを一口含む。目を閉じてしばらく味わい、静かに呟いた。
「……美味しいです……」
「だろ!?どんどん食えよ!今日は好きなだけ食べていいんだからな!」
俺が促すと、雪華は少し戸惑いながらも次々と料理を口に運び始める。田楽を頬張り、胡麻豆腐をゆっくり味わうその姿に、俺は思わず目を細めた。
「どうだ?満足してるか?」
「……はい、雷丸様。とても幸せです。」
その言葉に、俺の心は何とも言えない満足感で満たされた。
しかし、ふと見ると雪華の箸が止まっている。皿の上には揚げ出し豆腐が一つだけ残っていた。俺は首をかしげて尋ねる。
「どうした?もうお腹いっぱいか?」
雪華は少し困った顔をして答えた。
「いえ……最後の一つを食べてしまうのが、なんだか惜しくて……」
「惜しいってどういうことだよ!?食べろよ、残すのはもったいねぇだろ!」
「そうなのですが……これは雷丸様にも食べていただきたいと思いまして……」
「お前、俺に気を遣ってたのかよ!?」
俺は笑いながら箸を取り、最後の揚げ出し豆腐を半分に割った。
「ほら、これで半分こだ!一緒に食べようぜ!」
「……はい。ありがとうございます、雷丸様。」
雪華と一緒に揚げ出し豆腐を口に入れた瞬間、ふわっと広がるだしの香りに俺たちは同時に顔をほころばせた。
「これ、最高だな。」
「はい……本当に……美味しいですね!」
雪華が満腹で幸せそうな顔をしているのを見て、俺も満足感でいっぱいになった。やっぱり、こういう時間が何よりも大事だと改めて実感した――食後に雪華が「もう少し食べられるかもしれません」と呟かなければ完璧だったんだけどな!
――――――――――――
奥丹 清水を出て、雪華と清水寺の周辺を歩いていると、ふと彼女の視線が横にそれた。俺はその視線の先を追いかける。
「ぽんたこ佐倉」と書かれた看板。
そこには「多彩なソースやトッピングが選べる京風たこ焼き!」と美味そうなキャッチコピーが踊っている。看板の写真のたこ焼きが、湯気を立てながら輝いて見える。
雪華は、まるで吸い寄せられるようにその看板をじっと見つめていた。
「雪華、お前……」
雪華はすぐにハッとして視線を戻し、微笑みながら答えた。
「いえ、特に気にしていません。………………もうお腹いっぱいですので。」
いや、バレバレだろ!その微妙な言い訳と遠慮の目線が逆に怪しすぎるんだよ!
俺は腕を組んで少し考えたが、すぐに決断を下した。
「よし、行くぞ!」
「えっ……?」
驚く雪華を引っ張るようにして、俺は「ぽんたこ佐倉」に向かった。
店の前で、俺たちは香ばしいソースの香りに包まれながらたこ焼きを注文した。メニューを見ている雪華は、さっきの遠慮が嘘のように目を輝かせている。
「……この抹茶塩も気になりますし、明太マヨも美味しそうですし……えっと、チーズソースも……」
「おいおい、欲しいもの全部言えよ!好きなだけ頼んでいいからさ!」
「で、では……全部少しずつ……」
「全部だな!よし、俺に任せろ!」
俺が堂々と注文を済ませると、雪華が嬉しそうに小さく拍手してくれた。その笑顔を見て、俺は内心で「これだけで来た甲斐があった」と確信した。
運ばれてきた熱々のたこ焼きは、湯気と香りで俺たちの食欲をさらに煽る。抹茶塩、明太マヨ、チーズソース――どれもが鮮やかで美味そうだ。
雪華は箸でたこ焼きを掴み、慎重に一口。
「……あぁ……美味しい……!」
その言葉とともに、彼女の表情が幸せそのものに変わる。
「やっぱ、たこ焼きは別腹だろ?」
俺が笑いながら言うと、雪華が小さく頷く。
「……はい、雷丸様。たこ焼きは……本当に別腹です。」
次々とたこ焼きを口に運ぶ雪華を見て、俺は心底満足感を感じた。なんだろう、こういうちょっとした幸せってやつが、俺にはたまらない。
しかし、雪華が抹茶塩のたこ焼きを口に運ぶたびに「これは……やっぱりいいですね……」「明太マヨも捨てがたいです……」と迷い始める。
「おい、全部美味しいからって選ぶのに悩むなよ!」
「……はい、雷丸様。でも、もう少しだけ……食べたいです……。」
「全部頼んだだろ!?まだ足りねぇのかよ!」
俺は笑いながら追加注文を検討する。どうやら、雪華に「遠慮」はもう存在しないらしい――。
――――――――――
清水寺の観光とたこ焼きのグルメ旅を満喫した俺たちは、次の目的地、八坂神社へ向かうことにした。
八坂神社の鳥居をくぐった瞬間、目の前に広がる朱塗りの社殿。その荘厳な雰囲気に、俺と雪華は思わず立ち止まった。
「うわぁ……すごいな……。写真とかで見たことあったけど、実物は全然違うな!」
俺が感嘆の声を漏らすと、雪華がそっと手を合わせて小声で呟いた。
「……ここ、とても神聖な場所ですね。心が浄化されるようです……。」
彼女の真剣な表情に、俺は少し感動しながら頷いた。
「確かにな。こういう場所に来ると、日頃の悪事とか反省しちゃうよな。」
「雷丸様……そんなに悪いことしてるんですか?」
「いや、してねぇけど!なんか、そういう気分になるってだけだよ!」
境内を歩いていると、提灯が並ぶ風景が目に入った。雪華が立ち止まり、その提灯をじっと見つめる。
「雷丸様、あの提灯……可愛いです。」
「可愛いって……あれ、神社の提灯だぞ?なんかありがたい雰囲気じゃん。」
「でも、丸い形と赤い模様がとても親しみやすいです。あのデザイン、お部屋に飾りたいですね……。」
「いやいや!お前、神社の提灯を部屋に飾るとかどんな趣味だよ!」
雪華はそれでも提灯から目を離さず、真剣な顔で言った。
「……でも、これを見ていると安心感が湧きます。雷丸様もそう思いませんか?」
「まあ……そうだな。確かに落ち着くっていうか……って、俺も乗せられてどうすんだよ!」
拝殿にたどり着き、俺たちは並んでお参りすることにした。
まずは鈴を振り、深々と頭を下げて手を合わせる。静かな境内に響く鈴の音が、なんだか心を清めてくれる気がする。だが、俺の心の中は――。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!ハーレム!!ハーレム王に俺はなるぞ!!!」
もう、全力で叫んでいた。もちろん、心の中だけでな!
願いを込める俺の姿は、外見だけ見れば真面目に祈っている風だが、頭の中では完全に別世界だ。俺の野望をこの神聖な地で宣言するなんて、もし神様が聞いてたらドン引きだろう。
俺が祈り終わって顔を上げると、隣の雪華が目を閉じて真剣に祈りを捧げている。
その姿があまりにも神々しいというか、無垢すぎて――正直、俺は自分の願いを少し反省しかけた。
雪華が祈りを終え、静かに目を開ける。
「雷丸様、何をお願いしたのですか?」
そう聞かれて、俺は一瞬言葉に詰まった。さすがに「ハーレム!」なんて言えるはずもなく、慌てて誤魔化す。
「え、えっと、みんなが元気でいられるように……とか?」
「それは素敵な願いですね!」
雪華が嬉しそうに微笑む。その純粋すぎる笑顔に、俺は胃のあたりがキュッとなるのを感じた。
だが次の瞬間、俺は心の中で拳を握りしめてこう叫ぶ。
「違う!俺はハーレム王になる男だ!俺の願いは誰にも止められねぇ!」
そして、ふと逆に俺が雪華の願いを聞いてみたくなった。
「なあ、雪華は何をお願いしたんだ?」
雪華は少し照れたように目を伏せて、小さな声で答える。
「……雷丸様がいつも無事でいられるように……と。」
その瞬間、俺の脳内でなぜか雷が落ちた音がした。
「えええええええええ!!?」
心の中で全力で叫びながらも、表向きは動揺を隠しきれない俺。
「そ、そんな願い事……?」
「はい。雷丸様がいなければ、私は何をすればいいのかわかりませんから……。」
その言葉に、俺は胃がキュッとなるどころか、頭が真っ白になった。
「いやいやいや、俺なんて大したことないだろ!?」
「そんなことありません。雷丸様がいるから、私も頑張れるのです。」
――待て、雪華。その純粋な瞳でそんなこと言うのは反則だろ!?
俺はもはや、ハーレム王を目指す自分を心の中で問い詰めたくなるくらいだった。
「神様……俺、もしかしてとんでもなく幸せ者なんじゃないですか……?」
そう思いながら、俺は深く息を吐いて、目の前にいる雪華の笑顔をただただ眺めるしかなかったのだった。
――――――――――――――
境内を出ると、参道には美味しそうな屋台がずらりと並んでいた。雪華がその中から目を輝かせて指差したのは――みたらし団子。
「雷丸様、あの団子……とても美味しそうです!」
「またかよ!さっきたこ焼き食べたばっかりだろ!」
「でも、たこ焼きと団子は別の食べ物ですから……。」
「そりゃそうだけどさ!お前、ほんとによく食うよな……。」
それでも俺は雪華のために団子を買った。彼女が串から一つ団子を取って嬉しそうに頬張る姿に、なんだかんだで俺も嬉しくなってしまう。
「雷丸様、どうぞ一つ。」
「え、俺も?」
「はい。せっかくですから。」
俺が団子を一口食べると、その甘じょっぱい味が口いっぱいに広がった。
「おお、これめっちゃ美味いな!」
「そうでしょう?やっぱりここに来て良かったですね。」
八坂神社の静かな夜空の下、俺たちはみたらし団子を頬張りながら、しばし観光の余韻を楽しんだ。
――――――――――
祇園の石畳の道を、俺と雪華は並んで歩いていた。昼間とは違い、夜の祇園はまるで別世界だ。提灯の柔らかな明かりに照らされた通りは、歴史を感じさせる家々が静かに佇み、何とも言えない幻想的な雰囲気を醸し出している。
「雷丸様……とても綺麗な場所ですね。」
雪華が小声で呟く。珍しくその瞳がキラキラと輝いていて、なんだか見ている俺まで嬉しくなる。
「だろ?これが祇園の魅力ってやつだ!さすが観光地って感じだよな!」
俺が得意げに答えると、雪華はふわっと笑みを浮かべた。
「はい……でも、観光地なのに、騒がしくないのが素敵ですね。」
確かに、静けさの中に漂う上品な空気。それが祇園の醍醐味だ。
――と思っていた矢先、観光客の集団が後ろからやってきて、大きな声で写真を撮り始めた。
「……雷丸様、静けさが……。」
「まぁまぁ、観光地だし、仕方ないだろ。」
俺は肩をすくめながら、観光客の賑やかさをやり過ごした。が、ふと気づくと、雪華の視線がどこか一点をじっと見つめている。
「どうした、雪華?」
「……あそこに……舞妓さんが……!」
雪華が指を差した先には、美しい舞妓さんが歩いていた。白い肌に真紅の口紅、華やかな髪飾り――夜の街に溶け込むその姿は、まさに祇園の象徴だった。
「すごいな、本物だ!」
俺が興奮して言うと、雪華は微かに微笑んで頷いた。
「……雷丸様、私、あのような美しい方々と並んで歩くことが、夢だったんです!」
「いやいや、雪華だって負けてねぇよ。お前も十分綺麗だからな。」
俺がつい本音を漏らすと、雪華は一瞬驚いた顔をした後、少しだけ赤くなった。
「そ、そんなこと……。ありがとうございます……。」
「お、おう……。」
なんだ、この微妙な空気。俺、今ちょっと恥ずかしいこと言ったか?
その時、雪華が再び口を開いた。
「雷丸様、祇園には美味しい甘味処も多いそうですね。少し寄ってみませんか?」
「え?まだ食うのかよ!さっきたこ焼きまで食ったばっかじゃねぇか!」
「別腹です。」
断言する雪華の目は輝いている。俺は思わず苦笑いしながら言った。
「まぁ、せっかくだから行くか。お前を満腹にするのも俺の使命だからな!」
「ふふ……ありがとうございます。雷丸様、優しいですね。」
またしても直球で褒められ、俺の胃がキュッとなる。
こうして俺たちは、祇園の甘味処を目指して静かに歩き出した。雅な祇園の夜は、俺たちの笑い声でほんの少しだけ賑やかになった――気がする。
――――――――――――
祇園の風情漂う通りを歩き、「祇園辻利 祇園本店」に到着した俺たち。京都といえば抹茶、そして抹茶といえば辻利!というわけで、俺と雪華は二人で「抹茶オレ」を注文することにした。
カウンターで受け取った抹茶オレは、緑の濃さが見た目にも鮮やかで、カップから漂うほのかな抹茶の香りがたまらない。
「雷丸様、この香り……素晴らしいですね。」
雪華が目を細めてカップを手に取り、ゆっくりと口元に運ぶ。その仕草がなんとも上品で、抹茶オレが一瞬高級ワインに見える錯覚を覚える。
「おいおい、そんなにゆっくり飲むなよ。冷めちまうぞ。」
俺は勢いよくカップを一口飲み干す――。
「ふおおおっ!なんだこれ!うますぎる!」
思わず声が漏れる。濃厚な抹茶の苦味と、ミルクのまろやかさが絶妙に混ざり合い、俺の舌を優しく包み込む。
「雷丸様、少し落ち着いてください。せっかくの一杯ですから、もっと丁寧に味わわないと。」
雪華がくすっと笑いながら俺を諭す。
「いやいや、これ、丁寧とか関係なくうまいだろ!まじで口の中が京都になってる気分だ!」
「……口の中が京都、ですか。」
雪華は一瞬不思議そうな顔をするが、すぐに小さく吹き出した。
「雷丸様らしい表現ですね。でも……その通りかもしれません。この味は、確かに京都そのものです。」
雪華はもう一度カップを手に取り、慎重に一口味わう。
瞳を閉じて味わうその表情は、なんだか幸せそうだ。
「……美味しいですね……雷丸様、一緒に来て良かったです。」
「だろ?俺が選んだ店だからな、間違いないんだよ。」
俺が得意げに言うと、雪華は少し赤くなった顔を隠すようにカップを傾けた。
店の窓際の席から外を見ると、祇園の街並みが薄暗くなり始め、提灯の光が少しずつ灯っていく。そんな光景を眺めながら、俺たちは無言で抹茶オレを飲み続ける。
「……こうしていると、なんだか時間が止まっているみたいですね。」
雪華がぽつりと呟く。
「ああ、そうだな。」
俺も同じ気持ちだった。抹茶オレの温かさと雪華の穏やかな笑顔が、なんだか特別な時間を作り出している気がした。
「でも、雷丸様、もう少しゆっくり飲んでくださいね。」
「え、もう飲み干しちまったけど。」
「早すぎます……。」
雪華が呆れ顔でため息をつく中、俺は空のカップを手に「もう一杯頼むか!」と提案するのだった。
――――――――――――
京都観光を楽しんでいる最中、ふと雪華が道端のお地蔵さんに目を留めた。
小さな石のお地蔵さんが、赤い前掛けをして静かに佇んでいる。
「雷丸様、あれは……?」
雪華がそのお地蔵さんを指差しながら、少し興味深そうにこちらを見上げてくる。
おいおい、そんな大真面目な顔で聞かなくても、お地蔵さんくらい誰でも知ってるだろ。
「ああ、あれはお地蔵さんだ。道端とかに立ってて、旅人を守ったりするんだよ。」
そう説明すると、雪華はしばらくお地蔵さんをじっと見つめていたが、急にニコッと微笑んでその前に歩み寄った。
「……なるほど。では、きちんと挨拶しなくてはなりませんね。」
えっ、挨拶って……お地蔵さんに?
俺が驚いて見ていると、雪華はスッと背筋を伸ばし、お地蔵さんの前に立つ。
そして、まるで誰かに敬意を表するかのように、静かにお辞儀をした。
「こんにちは。雪華と申します。」
その言い方が妙に丁寧で、なんだか笑いそうになる。
いやいや、待て。今は真剣な雪華を邪魔するわけにはいかない。
「雷丸様と一緒に、楽しく京都を巡らせていただいております。」
あれ、なんかすごく丁寧な自己紹介が始まったぞ……。
お地蔵さんにそこまで挨拶する人、見たことねぇけど?
雪華はそのまま続けた。
「これからも、どうか雷丸様と私をお守りくださいませ。」
そう言って、もう一度深々とお辞儀をする雪華。
おいおい、そこまで本格的にお願いしなくても……!
でも、雪華の顔は真剣そのもの。お地蔵さんに向かって全力で礼儀を尽くしている。
俺はその様子を見て、思わず笑いをこらえながら心の中で呟いた。
「……いや、そんなにちゃんと挨拶されると、お地蔵さんもビックリするんじゃねぇか?」
すると、挨拶を終えた雪華が、満足そうな顔で俺の方に振り返った。
「これで、雷丸様も安心して旅を続けられますね。」
いやいや、俺が安心するかどうかは別として、お地蔵さんにはしっかりと雪華の敬意が伝わったはずだ。
「あ、ああ、ありがとうな。雪華。」
雪華の真剣な姿に少し感心しながら、俺はそっとお地蔵さんにも心の中で「よろしく」と呟いた。
――――――――――――
「おお……これが金閣寺か!」
俺たちは金閣寺に到着した。
目の前には、太陽の光を浴びて黄金に輝く寺がそびえ立っている。
いや、これが本当に金ピカってやつか……!
思わず口が開きっぱなしになる。
隣の雪華も、金閣寺の姿に目を奪われている。
その表情に、うっすらと感動が浮かんでいるのがわかる。
「雷丸様……あれが、本当に金でできているのですか?」
「ああ、そうだ。金箔ってやつで覆われてるんだぜ。」
金閣寺が目の前でキラキラと輝いている。
その光景はまさに非現実的というか、絵の中にいるような気分だ。
雪華も、驚いたように何度も見直している。
「……美しいですね。」
彼女が感慨深げに呟いた。
その声は、まるでこの瞬間にすっかり魅了されたかのようだ。
「おいおい、こんなすごいの見ちゃったら、他の観光スポット霞むんじゃねぇか?」
俺は冗談めかして言ってみたが、雪華は真剣な顔で金閣寺を見つめたままだ。
「確かに……この場所には何か特別な力が宿っているように感じます。」
おいおい、そんなに感動するなんて、意外とロマンチストだな。
俺も少し感化されながら、金閣寺をもう一度じっくり眺めた。
目の前の池に、金閣寺の美しい姿が反射している。
その水面に揺れる黄金の寺が、風に揺られながら優雅に映り込んでいるのがなんとも言えない神秘的な光景だ。
いや、これ写真とかじゃなくて、リアルで見ないと伝わらねぇな。
そして、観光客も多く、皆がこの輝く寺を見て感動しているのが伝わってくる。
やっぱり、日本に来たら一度は見ておかないといけない場所なんだな、これ。
その時、雪華が急に立ち止まって俺の方を見た。
「雷丸様……写真を撮りましょう。これほど美しい場所に来たのですから、記念に残さなくては。」
おお、いいじゃねぇか!
俺たちは早速スマホを取り出して、金閣寺を背景に記念撮影を始めた。
金色に輝く寺をバックに、雪華が少し微笑んでいるのがなんだか新鮮で、俺はその笑顔に一瞬見惚れてしまった。