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異世界帰りのハーレム王  作者: 津田智弘
ハーレムファミリー結成編
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第5話 雪女"雪華"




 呪術師どもを全員ぶっ飛ばし、華麗に勝利を収めた俺は、地面に尻もちをついて呆然としている美少女に振り返る。

 勝利の余韻に浸りつつ、声をかけた。



 

「もう大丈夫だぜ!かわい子ちゃん!」




 俺は自信満々に声をかけた。だって、これで助けられた美少女が俺に一目惚れ――なんて展開、期待しちゃうだろ?


 振り返った彼女――やっぱりとんでもない美人だった。

 目が合った瞬間、俺の脳内で鐘が鳴り響く。


 氷のように輝く銀髪、雪のように真っ白な肌、そして深い青色の瞳――。

 やべぇ、こんな子、二次元でしか見たことねぇぞ!!


 俺は必死にテンションを抑えながら手を差し伸べる。

 これだ、これが白馬の王子様ムーブだ!俺は今、最強にカッコいいはずだ!!


 


「怪我はないかい?」




 彼女はふわっと目を見開いて、少しだけ頬を赤らめながら答える。



 

「は、はい……ありがとうございました。」




 お礼を言う彼女。よし、完璧。俺のハーレムメンバー加入確定の瞬間が来たぞ!



 ――と、思いきや。


 

 ん?なんだ、この微妙な空気。

 俺が差し出した手を、彼女がじっと見て動かねぇ。

 いやいや、もうちょっとで握ればいいだけだぞ!?何を迷う必要がある!?


 俺は優しく笑いながら、さらにアピールする。


 


「お、おーい?手、つかんでもいいんだぜ?俺、全然OKだぜ?」




 だが、彼女はなぜか怯えたように瞳を揺らしながら、そっと目を伏せた。



 

「……ごめんなさい……手は……ちょっと……。」




 ――え、何それ!?



 おいおい、何だこの予想外の展開は!?

 俺のカッコいい手差しムーブが台無しじゃねぇか!?


 俺はショックを受けつつも、混乱しながら聞き返す。



 

「えっ?なんで?触れてくれていいんだぜ?俺、手洗ってるし清潔だぜ?」




 すると彼女は、少し申し訳なさそうな顔をして静かに言った。



 

「私が触れると……貴方が凍ってしまうんです。」



 

 ――凍る!?


 脳内が真っ白になる俺。いや、ちょっと待て。



 

「"凍る"ってどう言うこと!?」




 慌てて聞き返すと、彼女はさらに申し訳なさそうに、ポツリと答える。



 

「……たぶん、あなたの右腕が氷柱になります……。」




 右腕が氷柱!?


 パニック状態の俺をさらに追い詰めるように、彼女は静かに自己紹介をした。



 

「……私、雪女なんです。」


「雪女ぁぁぁぁ!?」




 俺は思わず声を張り上げた。

 美少女だけど、雪女。かわいいけど、触れたら氷柱。

 この状況、完全に俺の脳みそが追いついてねぇ!!



 触れたら凍る!?いやいや、そんな理不尽なことがあってたまるか!




 だが、俺の目はもう決まっていた。

 こんなに可愛い子の手を握らないとか、人生の損失すぎるだろ!!


 


「俺の右腕が氷柱になろうが関係ねぇ!!」




 俺はそう心の中で叫び、自分を奮い立たせた。


 ここで発動するのは、俺の“根源”――“俺”の力だ。

 「俺力(おれりょく)」を高め、自己強化モードに突入する。



 

「俺は無敵だ!俺は最強だ!俺は美少女に触れる権利がある!」




 そう念じるたびに、体の周りに青白い光が溢れ出し、力がみなぎる。

 俺力をフルチャージして、まるでオーラを纏う英雄のように姿を変えた俺は、堂々と彼女の手に向かって再び手を差し出した。



 

「大丈夫だ!俺の”俺力”で凍らせはしねぇ!!」




 彼女の目が大きく見開かれる。



 

「えっ……本当に触れても……?」


「信じろ!!俺が……いや、俺の”俺力”を!!!」




 勇気を出して差し出された手に、彼女は躊躇いながらもそっと手を乗せた――その瞬間、冷たい感触が俺の手に伝わる。


 だが、俺力は健在。


 


「よし、来たぁぁぁ!!!」




 俺の右手は凍ることなく、しっかりと彼女の手を握りしめた。

 その瞬間、彼女の頬がふわりと赤く染まった。


 


「……本当に……凍らない……!」


「だろ!?俺力、すげぇだろ!?」




 俺の手を握ったまま、彼女は驚きで目を大きく見開いていた。

 その瞳はまるで氷の湖のように澄んでいて――だけど、今は何かが解け始めているみたいだった。


 彼女の口が小さく動く。



 

「これが……人の肌……」




 その言葉には深い感動が込められていた。俺の手を、まるで大切な宝物みたいにじっと見つめながら、もう一度呟く。



 

「あったかい……」




 その瞬間、俺の心は完全にノックアウトされた。



 

「は、反則だろ……そんなセリフ!」




 内心そう叫びながらも、俺は真剣な顔で彼女を見つめる。

 その時だった。



 

「う、うぅ……」




 突然、彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれ始めた。



 

「えっ!?泣いてるの!?え、ちょっと待って!?どうしたの!?」




 俺は焦って彼女の顔を覗き込む。泣き顔も、これまた絵になる可愛さだ。

 でも、これ、どうすりゃいいんだ!?



 

「わ、悪かった?俺、なんかやらかした?」




 俺が慌てて聞くと、彼女は首を横に振りながら、鼻をすすりつつ言った。



 

「違うんです……ただ、こんな風に人と触れたの、生まれて初めてで……。あたたかくて……嬉しくて……!」





 ――その瞬間、俺の心がぶっ壊れた。



 

「……天使かよぉぉぉぉぉ!!!!!」




 俺はその場で天を仰いでガッツポーズを決めた。



 

「俺が助けた美少女が、こんな感動的なことを言ってくれるなんて……異世界で頑張ってきた甲斐があった!!!」


「えっ?」




 突然の俺の奇行に、彼女が目を丸くしているのがわかる。


 でも、俺には関係ない。



 

「よし!俺がもっと温かさを教えてやる!この俺力でどんどん握手しようぜ!!」




 彼女は照れくさそうに笑いながら、「少しずつお願いします……」と小さく頷いた。


 こうして、俺の”俺力”はまた一つ、新しい道を切り開いたのだった――美少女の涙と共に。


 

 


 ――――――――――――


 


 


 俺たちは近くのファミレスにたどり着いた。

 深夜、美少女とファミレス――これ、どう考えてもデートだろうが!!


 

 俺はすかさずコーヒーを注文。もちろん、カッコつけるためだ。

 大人っぽく見せるにはコーヒー一択。苦くても飲み干す覚悟だ。


 

 対する彼女――雪女の彼女はメロンソーダを注文した。

 最初、「お金がないから」と遠慮してたけど、俺のしつこい説得でようやく頷いてくれた。



 その結果――テーブルの上には、俺のブラックコーヒーと、彼女のキラキラ輝く緑色のメロンソーダ。

 正直、俺のコーヒーより100倍オシャレに見える。



 

「メロンソーダと雪女……なんか似合いすぎじゃね?」




 俺は心の中でツッコミながら、少し緊張した手つきでコーヒーを一口飲む。


 

 ……苦っ!!!苦すぎんだろこれ!!!

 でもカッコつけるため、顔には出さない。全然出してない。たぶん。


 

 彼女は、ファミレスのメロンソーダという未知のドリンクに興味津々だ。

 目の前でキラキラ輝く緑色の液体を見つめるその姿は、まるで初めて地球に来た宇宙人のようだ。


 ストローをそっと咥えて、恐る恐る一口。



 

「……甘い……!」




 その瞬間、彼女の目がまん丸に見開かれ、口元が少し緩む。

 驚きと喜びが入り混じった、まさに純粋無垢なリアクション――。


 

 やばい、これだけで俺の心は完全ノックアウト。

 何だこの破壊力。メロンソーダのCMに起用されてもいいレベルだろ!


 

 しかも――

 彼女は自分の素肌に触れると凍るという特性上、袖でグラスを掴んでいる。



 

 ……これがまた可愛いんだよ!!



 

 手袋の代わりに袖で持つなんて、可愛さの塊か!?

 グラスを挟む袖口から、ひんやりと冷たい空気がふわっと漏れ出ているのが見える。

 俺のコーヒーはすでに冷たくなりかけてるけど、それすらどうでもよくなるくらい可愛い!!



 

「メロンソーダって、雪華に似合うよな。」




 つい、そんなことを口走ってしまった俺。


 雪華は不思議そうに首を傾げ、ほんのり赤くなった頬を隠すように俯いた。



 

「そ、そうですか……?」




 その反応、可愛すぎるだろ!!俺の心臓が雪崩起こしてるわ!!


 

 俺はこの瞬間、確信した。

 彼女こそ、俺のハーレム計画における最高のピースだ、と――!! 



 

「俺の人生、異世界以上に神展開かもしれん……!」




 俺はそんな自分のテンションを抑えながら、自然な流れで切り出した。



 

「俺は飯田雷丸。かわい子ちゃんの名前はなんていうんだ?」



 

 ――どうだ?このセリフ!

 気負いすぎず、でもちょっとカッコいい感じに聞こえただろ!?


 彼女は、まだ涙で少し赤い目を瞬かせながら、俺の方を見て、静かに口を開いた。


 


「申し遅れてすみません。私の名前は……雪華です。」




 その瞬間、俺の脳内にまた鐘が鳴り響いた。

 雪華……!なんて可憐で、美しくて、名前まで神がかってるんだ!?


 俺は勢い余って拳をテーブルに叩きつけそうになったが、何とか平静を装う。



 

「いい名前だな、雪華。うん、なんか俺たち、運命感じちゃうよな?」




 彼女はちょっと恥ずかしそうに笑って、小さく頷いた。



 ――――――よし、来た!これでハーレムメンバー加入確定だろ!!

 俺の中で祝福の鐘が鳴り、内なる俺力がさらに高まっていく。


 

 次の一手はどうする?どうやってこの距離をさらに縮める?

 異世界仕込みのカッコよさをもう一度見せるべきか、それとも優しさ全開でアピールするか――


 俺が悩みながら頭の中でシミュレーションを繰り返していると、ふと視界の端に何かが動いた。


 彼女の手元だ。

 視線を向けると、雪華が静かにストローを吹いて、メロンソーダの中に小さな泡を作っていた。



 

「ぷくぷく……」



 

 ……え?



 

 ちょっと待って、何この無防備な仕草!?

 泡がポコポコ浮かんで、メロンソーダが微妙に揺れてる!?


 しかも彼女、真剣な顔して泡作りに集中してるぞ!?

 いやいやいや、可愛すぎるだろ!!!



 

「……ぷくぷく……ぷく……」





 俺の中で謎の感情が爆発する。

 カッコつけた台詞とか、異世界仕込みの技とか、全部どうでもよくなってきた。


 思わず俺は、声を出してしまった。



 

「え……なんか、それ……めっちゃ可愛いんだけど!?」




 雪華は「え?」と顔を上げて、少し驚いたように俺を見る。

 その表情がまた可愛い。なんだこれ、可愛さの無限ループか!?



 

「あ……すみません。ちょっと懐かしい感じがして……」




 恥ずかしそうにそう呟いて、また視線をメロンソーダに戻す雪華。




 ――この子、反則じゃないか!?




 俺はそんな彼女を見て、異世界で戦ったあの最強の魔王よりも、こいつには勝てねぇな、と心の底から思った。



 俺は真剣な顔で雪華に尋ねた。



 

「なぁ、雪華はなんで狙われてたんだ?」




 そりゃあ、こんな可愛い子が呪術師どもに追いかけられるなんて、よっぽどの理由があるに違いない。

 俺の脳内では、壮絶な背景や感動的な理由が次々と浮かぶ。


 

 ――例えば、雪華が禁断の秘宝を守っているとか、異世界の姫君だとか、世界を救う鍵を握ってるとか、そんな感じか?


 

 でも、雪華は顔を伏せ、小さな声で答えた。



 


「それは……コンビニで……廃棄弁当を……漁っていたのが……バレて……」


「……え?」





 一瞬、俺の思考が停止した。

 聞き間違いか?廃棄弁当?


 雪華はさらに続ける。




 

「その……ゴミ箱を漁っていたのを見られてしまって……しかも、その店員さんが呪術師で……」


「は?」




 ここでようやく俺は理解した。

 つまり、彼女は廃棄された弁当をゴミ箱から引っ張り出していたところを呪術師店員に見つかり、しかも妖怪だってバレて追われたってことだ。



 

「いや、壮絶じゃなくて悲惨な理由だった!!!」




 思わず叫んでしまった俺に、雪華はさらに申し訳なさそうな表情を浮かべて小さな声で言う。




「……私、戸籍がないので……普通に働けないんです。触れると物を凍らせてしまうし……」


「だからってゴミ箱は最後の手段だろうが!!」




 俺は慌てて声を上げるが、雪華はさらに俯いて、肩を震わせている。



 

「……ごめんなさい……お腹が空いてて……どうしても我慢できなくて……」




 いや、これ反則的にかわいい上に、泣きそうじゃねぇか!そりゃ廃棄弁当漁りはダメだが、こんな可愛い子がそんなことしてたなんて想像もできねぇ!


 俺は慌てて言葉を続けた。


 


「いやいや、分かった!分かったから泣くな!俺が悪かった!それに、もう大丈夫だ!これからは俺がちゃんと飯食わせてやるから!」




 雪華は驚いたように顔を上げる。



 

「本当ですか……?」




 その瞳には希望の光が宿っていた。俺は大きく頷き、胸を張る。


 


「ああ、任せとけ!異世界から帰還した俺は、今やハーレム目指してる男だ。まずはメシ!俺が責任持って食わせてやる!」




 ――俺はこの瞬間、自分の使命を確信した。

この美少女雪女を飢えさせるなんて、世界の損失だ!絶対に守り抜いてみせる!!

 



 だがふと疑問が浮かんだ。



 

「……ちなみに、今まではご飯どうしてたんだ?」




 雪華は少し困った顔をして、小声で答える。


 


「私は元々、ここに住んでる妖怪じゃなくて……とある村に住み着いてたんです。その村の農作物を……ちょっとだけ……拝借してました。」


「農作物!?いや、東京にはそんなもんねぇだろ!?」




 だって東京だぜ?田んぼも畑もねぇよ!どこで農作物を拝借したっていうんだ!?



 

「……今まで一体どこに住んでたんだ?」




 俺が恐る恐る尋ねると、雪華は少し視線を逸らして答えた。


 


「……新潟県です。」


「新潟県んんんんん!?!?」




 俺の声が教室の黒板が割れるくらいに裏返った。

 新潟から東京だと!?お前、どうやって移動してきたんだよ!?雪女って飛行機使えんのか!?いや、新幹線!?



 頭の中で雪華が座席で雪だるまを作りながら、新幹線の座席に座ってる絵が浮かんでくる。可愛いけど、違うだろ!


 俺は混乱しつつも、とりあえず次の質問を投げかける。



 

「……どうしてわざわざ東京に?」




 雪華は少し恥ずかしそうに頬を赤らめて、視線を伏せながら言った。

 


 

「人が……いっぱいいるからです。」


「は?人?」




 俺は理解が追いつかない。新潟だって人いるだろ!田舎だって人住んでるじゃん!って思ったけど、雪華の次の言葉で、俺の思考は完全にストップした。



 

「……私、誰かと触れ合ってみたくて。私と触れ合うことができる人を探していたんです。東京だったら、人もいっぱいいますし……もしかしたら、そういう人もいるかもって……」




 彼女の言葉に、俺の脳内では警報が鳴り響いた。




 ――これは!完全に俺を待っていたってことだろ!?運命だろ!?


 俺は勢いよく手を挙げて、全力で叫んだ。


 


「はいはいはいはい!!ここにいますよ!!触れ合える男、飯田雷丸、参上!!!」




 雪華はその突然の宣言に一瞬きょとんとした後、ふふっと笑った。




 ――笑った……可愛い……。




 俺は胸の中で勝利のガッツポーズを決めながら、改めて決意した。



 

「俺がこの子を守る!新潟産の雪女、東京でしっかり食わせてやる!!」





 

 

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