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第1話 プロローグ

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僕は何のために働いているのだろうか?5年間この場所で働いてそろそろ限界を迎えていた.

「何してる?まだ書類業務が残っている.」


少しふらつき倒れそうになった.

4日家に帰れてない.あそこは果たして家と呼べるのか?髪の毛もボサボサだし,少しクラクラする.結局ずっと書類仕事とキツイ肉体労働を繰り返ししている.でも手柄は貰えない.


少し小太りの金髪の僕よりも後から2年目の入った上司の貴族に

「聞いてるのか?はぁ.これだから平民は使えない.」

そう言って思いっきり椅子を蹴られた.


ああ,結局,身分か.

僕の夢は何だった?魔法騎士団で,人々の平和を守るために,昔助けてくれた人みたいになるために……それが今は,ただの雑用係.

魔法騎士団には身分関係なく誰でもなれるか……間違ってはいない.でもなれるだけだ.その後で,どのような扱いを受けるかは,結局,血筋.


3年間,僕は書類仕事や掃除や片付け,キツイだけの肉体労働ばかり,薄い給料で,労働時間が長い.

……いや,もしかしたらシンプルに魔法騎士としての才能が無かったのかも知れないな,だからこんな……いや,だとしたら目の前の貴族はなんだ?


はぁ,何をしてるのだろうか,僕は,もういいや.

「辞めます.」

気が付けば口がそう動いていた.もう,限界だった.夢だけで耐えれるほどの領域は超えていた.辞めて,あてもないが,それでも,もうこの場にいるのが限界だった.


「ふざけるな.職務を放棄するな.魔法騎士団の中で崇高な貴族の支えになっているんだぞ.俺の為に平民は俺の手柄のために働け.」


ああ,そうだな,もうどうでも良いよ.

「黙れ,親の七光りが,辞めてやるよ.」

まあ,その後は分かり切った結果だ.辞めるためなんだし.まあ良いか.




ひとまず,クビになった,退職金は無い.まあ退職金はあの貴族様の治療費になるだろう.少なくとも,僕の魔法騎士としての才能は,あの貴族よりは上だったことが証明されたが,今となってはどうでも良い.


4日ぶりに,家に帰ると大家から出ていくように言われた.給料が消えた今,そのうち,出ていくつもりではあったが,今日か.どうやら貴族様の手が回っているらしい.まあ,仕方ないか.


実際,家から出て行くのはそこまで問題は無かった.持っているのは,戦闘用の数個の魔法具と少量の財産と数冊の本と生活用品ぐらいだけだった.だから簡単に荷造りは出来た.


問題は何処に向かうか,だが,育ててくれた教会は今はもう無いし.とりあえずゆっくりと帝都の裏路地を歩き始めた.


「……はぁ」

久しぶりにゆっくりと散歩をすることが出来たが,未来の不安と疲れと絶望で小さくため息をついてしまった.


「そこの疲れ顔のお兄さん.奴隷でも買って行かないか.」

気が付けばそんな場所まで来ていたのか,

少し胡散臭い40代の男性がそう言ってゴマを擦ってきた.


「……違法ですよ.」

奴隷は違法だった,それを取り締まるのも,まあ僕は行けた事がないが,魔法騎士団の仕事だった.でも,どうやら仕事が出来ていないらしい.


「ははは,そう硬いこと言わずに,仕事のストレスでもぶつければ良いと思うぞ.上司にされて嫌なこと理不尽なことは他の誰かに.」


自分でも意外だった.

「なるほど,確かに貴方はムカつきますね.」

気が付けば,その人物を思いっきりぶん殴っていた.本当に我ながら勝手で我がままだ.ヒーロ気取りのただの痛い人間だ.


「……はぁ」

責任も持てないのに,奴隷商人の店を解体して,適当に奴隷を解放した.最低の憂さ晴らしの方法だ.せめての償いで,持っていた現金をその場に捨てていった.まあ,その後は,僕は知らない.どうせ分からないし.


それから,適当にあてもなく歩き,懐かしい場所までやってきた.

僕が魔法騎士団になる前,魔法学院時代に友人と良く訪れた場所.

静かで,帝都を一望できる静かな高台.


まあ,高さ的にはちょうど良い.少し迷惑をかけるかも知れないが,もう,それは僕の知ったことではないし.

展望台の策を超えて一歩進もうとしたときに声が聞こえた.


久しぶりに聞く声だった.

「久しぶり,レオ.何か大変そうね.でもこれも運命よね.」

美しい金髪をなびかせて,緑色の美しい目でこっちを見て小さく笑っていた.

こうやって見ると昔,学院で女神呼ばれていた理由が分かる.アリアさんか,元貴族,家出したとか言ってたけど.懐かしいな.


「……」

気が付けば両目から涙が溢れていた.


「なるほど,私が君を飼ってあげる,ちょうど家に番犬が欲しかったからね,えへへ.」

アリアさんは,そう言って何かを察したのか冗談ぽく笑いこちらに手を伸ばした.


僕はゆっくりとその手を取ると,

「相変わらずですね.」

そう言って平然を装った.


「相変わらずって久しぶりにあったのに,それでどうする?返事は?」

アリアさんは,そう言うと無理やり展望台の内側の方に引っ張ってこっちをじっと見た.まあ,死ぬのはまだ早いか.……良く分からないけど,少なくとも,魔法騎士よりも今,飛び降りるよりもマシだろう.返事は……


「ワン」

まあ,とりあえずこのぐらい言っておかないとメンツがあるし,恥ずかしい.まあ手遅れかもだけど.


アリアさんは,小さく笑うと

「行こうか,レオ君,私の城に」

そう言って僕を引っ張りながら歩き始めた.

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