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不死鳥は愛をささやく

作者: 間宮沙紀

人と人ならざる者が存在する

人は寿命が短く先を急ぎ、人ならざる者は異形な見た目で長い寿命を持て余している

太古の昔からこれらは同じ空間にいながら、交わることはなく

時に交流を図り、そうかと思うと忌み嫌い

度々どちらかを「正」と「悪」に分けてきた




1匹の赤い鳥は深い傷を負い

本来ならば立ち入ることのない人の森で傷ついた体を休めていた


失敗した

まさか反撃してくるなんて

ここにいてはダメだ

傷が癒えない

でも飛べる力も今はない


自分の持てる力で体を縮めて回復しようとすると小さな小鳥の姿になった


「あれ、この鳥・・怪我酷いな」


人だ

触るな

穢れが残る


その鳥の声が人に聞こえることもなく

人は鳥を手のひらに乗せて、優しく持っていた布でくるむと家に持ち帰り

丁寧に世話を焼いた


一度でも人ならざる者は人に触れると穢れが残る

普通の状態ならば、決して触れることのないのだが

鳥は傷ついた瀕死の状態ではなすすべもなく

その男の好きにさせた


人の世は戦が起こっていた

同じ種でも争いは起こるのだ

異業種なんてものは相容れるわけがない


その男は鳥によく話しかけていた

よくなれよ

飛べるようになる

今日はこんなことをした

好意がある女のこと

励ましの言葉や日々の何気ないことまで

鳥は黙ってそれらを聞いていた


鳥はやがて体も力も回復し

飛び立てる日がきた


この日はいつも帰ってくるはずの時間になっても男が来ることはなかった

鳥は本来の赤く羽根が黄金に輝く姿になり空に飛びだった


男は血の海の中で横になっていた

その体を女が泣き叫びながら血の海の中で抱きしめている

鳥はその場に降り立った


黄金に光放つその姿に女はぎゅっと力強く男を抱きしめる


「もうまもなく命尽きるぞ」


女は人の言葉を話した鳥を睨みつける


「お前、話せたんだな・・」


男は視点の合わない薄暗い瞳で鳥の姿を見ると

息も絶え絶えに話す


「その姿、鳳凰みたいだ・・」


男の血は止まることなく

もう話す力すら残ってない様子だった


ばさっと羽根を大きく広げる

するとあたりは赤い炎に包まれる

男も女もその炎の中にいるが不思議な事に熱くはない


「穢れの残る私は、戻ることができない」


人の姿になった鳥は男にも女にも見える

真っ赤な髪に真っ赤な服を着て男に近づく

炎をまとった神々しいその姿に女は男を下ろす

鳥は男に口付けをして光を入れる

その光は心臓付近で光輝くと中に吸収されていった


男は目を開けた

体には傷ひとつなかった

女は号泣してその胸に頭をうずめた


「何をした?」

「契約を・・お前が生きている間、その血が続く限り私の加護があるように」


鳥の姿に戻っていた

そして空高く飛び立つ

大きな羽根は赤く、飛んでいるその姿はキラキラと輝いて神々しい



やがて男は争いが絶えなかった小国をまとめ1つの国を作る

その男の側には時々赤く神々しい1匹の大きな鳥の姿があったという



不死鳥は愛をささやく

長い長い寿命を人とともに生きる

それは、人ならざる者の愛のカタチ



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