思いを込めて 八
「ああ、そういうのいいんで」
三太は自分でも驚くほど淡白な対応に出てしまった。
使用人と名乗った彼女も真顔になってしまっている。そりゃ確かに肌は綺麗だし、胸も大きい。腰のくびれなんて見たのははじめてだったし、足もすらっと長くて相当な美人なのは三太ですら同意する。
けれど、それだけだ。
もちろん、三太だって男女の機微やそういうことがあるのは知っている。
むしろ、実家の関係もあって幼い頃からそういった事柄について耳年増にはなっているのだ。三太とて年頃の男だ。人並みには関心もある。
けれど、この状況で興奮するほど脳みそが沸いているわけでもなかった。
「…重ねて謝罪を。さては、あなた童貞ですね?」
「まぁ、そうですけど。とにかくそういうのはいいんで」
じいっと責めるような視線を向けられたが三太は特に動じることはなかった。しばらく沈黙が場を支配したが使用人はため息を吐いて床に座りこんだ。
胡座までかいている。
「重ねて謝罪を。あなたの自制心を見誤っていたようですね」
「服を着てください」
「なら抱いてください」
「いやです」
なんの会話だ。
色気もへったくれもない。というか、三太にとってはそういう雰囲気になる関係性すらないのだから当然の状況とも言える。そもそも、三太は未だに刀を腰に差したままなのだ。
その気になれば、瞬きの間に斬りつけられる。
その間合いにいることも使用人は気づいているのだろう。まぁ、まるで動じてはいないが。
「平行線ですねぇ。あれですか、何か特別性癖でもお持ちで? 小さい子供の方がお好みですか?」
「変なこと言わないでください。おれは至って普通ですよ」
いや、だからなんの会話だ。
三太はこの問答すら面倒くさくなってきた。相手に敵意はないようだし、警戒だけすればいいと思考を切り替える。いつでも刀は抜けるし、彼女がこれ以上近づいてきたなら対処すればいいだけの話だ。
「そもそも、どうしてそこまで拘るんですか? 客人が拒絶してるなら引き下がるのが普通では?」
「重ねて謝罪を。これは私の業務であり趣味であり実益でもあるのです。何卒お付き合いいただければ」
「それ、僕の意思が関係ありませんよね。だったらますますいらないです」
「それではこの私の女としての矜持が」
「だからそういうのいいですって。僕にとってはどうでもいいじゃないないですか」
「そうでもありませんよ? あなたの王位継承権に対する解決策のひとつになるじゃありませんか」
「…どう言う意味ですか?」
「子供を作ればいい。至極真っ当な方法だと思いません?」
「もう何も言わなくていいです」
もう付き合いきれない。
さすがの三太も使用人を無視することを決めた。これ以上話しても疲れるだけだ。
「重ねて謝罪を。どうやら怒らせてしまったようですね」
「いえ、呆れただけです」
「それならよかった。けれど、王位継承権に関しては迅速な対処をした方がよろしいかと思いますよ」
「なにせ、貴方様一人をどうにかすれば我らが主人と喧嘩が出来る。私のように温厚な者ばかりでもありませんから気をつけてくださいね」
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