思いを込めて 七
「我々に食文化と言えるようなものは何ひとつありません。全て他所の世界の真似事をしているだけです。そもそも食事とは生命維持活動に対する栄養補給でしかない。どうして生命維持活動を楽しむ必要があるのかわかりかねますね。…まぁ、あの私が一番楽しんでいるようなので、どの口がということなのでしょうが」
「あの、突然しゃべりはじめるの止めてくれませんか? 怖いんですけど」
ここに来るまでの沈黙はなんだったのか。
饒舌に語る使用人に対して三太は呆れるしかなかった。
「仕方がないでしょう。あそこには私がいるんですから。同じ人物が別な人物として話し出したらそれこそ怖いと思いませんか?」
「いや、怖いっていうか、そもそもその話自体信じられないって言うか」
「重ねて謝罪を。その点に関して証拠となるものは何ひとつ証明することもお見せすることもできません。ただ信じていただくことしか出来ません」
その取ってつけたような言い回しも胡散臭さが増すだけだと思うけど。
内心思ったことに蓋をして、三太は床に腰を下ろした。意外なことに室内には椅子もベッドもなかったからだ。もしかすると寝具は布団のようなものなのかもしれないと三太は思った。正直、その方が三太にとっては馴染み深いので文句も思い浮かばなかった。
「抵抗がないんですね」
「え?」
「あなたがたの世界では座布団なるものがあると聞きました。なくても座れるんですか?」
「ええ。ないなら仕方がありませんし、それに、ここは休むための場所なんですよね」
ほほぉ、と使用人は感心しているようだった。
心なしか目が輝いているように見える。まぁ、多分珍獣か何かに向ける類のものなのは間違いないなと三太は思った。
他所の世界の真似事。
どうやら食文化以外でも真似するつもりらしい。
「あの、まだ何か?」
「何か、とは?」
質問を質問で返された。
「いや、あの、休みたいんですけど」
「ああ、なるほど。重ねて謝罪を。気づかず申し訳ありません」
三太の言いたことをようやく理解したのか使用人はそう言って扉の方へ向かった。ようやく人心地つけそうだ。三太は座ったまま背伸びをひとつして、完全に使用人が部屋を出るのを見送ることにした。
がちゃり。
なぜか、使用人は扉の鍵を閉めた。
「…え? あの、何を」
「何って」
しゅるり、と。
使用人の服が一瞬ではだけた。
「戦士を癒すのも使用人の務めですから」
白い肌、
恥ずかしげもなく晒された裸体に三太は今度こそ言葉を失ってしまった。
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