思いを込めて 四
使用人に案内され、三太は居間に戻ってきた。
…どうでもいいが、明らかに最初に通った経路とはまったく違っていた。なのに一本道そのものだったことを考えるとやはりこの屋敷自体ただの屋敷と思わない方がいいだろうなと三太は思った。似たような作りをしている屋敷は三太の世界にもあったし、国家の中枢に近い役職の人間が住むには妥当なんだろう。
居間には市村ヨネとこの屋敷の主人、そして文七がいる。何故か、ヨシツネの姿が見えない。
「おう、ご苦労さん」
文七は相変わらずの太々しさでくつろいでいる。
床に座り込んだまま煙管を吹かす姿を見ていると三太の緊張も和らぐような気がした。
「あの、ヨシツネさんは?」
「あいつなら肉の処理中だ。あいつの能力便利でよ、肉の保存にも応用できるんだと」
時間を操る能力。
あの巨大な爬虫類の肉をどうするのかと思っていたがまさかの一手である。というか、三太が連れてこなければどうするつもりだったんだろうか。そもそも、ヨシツネに至ってはほぼ無関係なのにどうして積極的に協力してくれるんだろうか。
「あの人とはどういう関係なんですか?」
「付き合いが長いだけっていうには色々なことがあったわな。ま、とにかく味方と思って間違いねえ。あいつがおれを裏切ることはねえはずさ」
ふふん、と何故か嬉しそうに笑みを浮かべる文七。
よほど深い関係なんだろうなと三太は思った。ここまで文七が言うのだから三太がこれ以上言うことは何も無い。文七の隣に座り込み、そのままくつろぐことにした。
「こちらをどうぞ」
三太が座り込むとほぼ同時に、飲み物を差し出された。
胡散臭い男。市村ヨネは『ジイ』と呼んでいたがどう見ても老人とは思えないほど若々しい。ただし浮かべる表情や雰囲気が胡散臭さの塊すぎて妖怪のような印象を抱いてしまう。
この飲み物にもなにがしかの薬物やろくでもないものが入っているのでは無いかという疑念まで湧き上がってくる。
三太は少し悩んだが、受け取ることにした。その上で、文七が同じものを飲んでいるのかだけは確認した。
文七はすでに飲み干していた。さすがだ、と三太は思う。
「果実を濾した液体を薄めたものです。疲労回復、滋養強壮に効果があるのでご安心ください」
にっこりとした笑みを貼り付けたまま男は言う。
一口含むと酸味が広がって、どこか控えめな甘みを感じた。臭みはなく、飲みやすいため、三太はすぐに飲み干してしまった。
「美味しいです。ありがとうございます」
「お口に合ったのなら何よりです」
不思議なもので飲み物一つで相手への警戒心は下がるようだった。胡散臭い雰囲気に慣れただけなのかもしれないが、それでも気分が楽になったのは確かだった。
が、
「ところで、三太様。貴方の刀を見せていただけませんか?」
その一言で場の空気がまた引き締まった。あくまで敵国。三太はどこまで話すべきか、あるいは話さないべきかを決めなければならない。
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