勇者とは 五
「お? なんだ、珍しくやる気になってるじゃねえか」
「流石にやりすぎですよ。余所者が暴れるにしたって限度ってもんがあるでしょうが」
「そいつはよかった。これなら、おれらにも希望ってもんが見えてくる」
にしし、と意地の悪い笑みを浮かべる文七。三太はこのやりとりの意味がよくわからなかった。ただし、ひとつだけわかったことがある。
瀬菜が今まで以上に燃え盛っている。
太陽の様に燃えていると三太は表現したことがあったが、それ以上があるとは思わなかった。あまりの眩さに目を細めてもまるで意味がない。けれど、不思議なことに目に痛みがなかった。太陽を見つめた時の様な残像や影が見えない。ただただ、その神々しさを強制的に見せつけさせられているような感覚だった。
三太はそこまで考えて、あることを察した。
つまり、
「まさか、瀬菜が戦うってことですかっ?」
「なによ、文句あんの?」
「当たり前だろ! あぶないじゃないか!」
「…あんた、本気で言ってんだから性質悪いのよね」
三太の主張に対して瀬菜は面倒くさそうに後頭部をかいた。いくら人間離れした神々しい姿とは言え、その仕草は三太がよく知る彼女のそれだ。そんな彼女に戦闘をさせるなど三太が看過できるはずがなかった。
破門されたとは言え、三太は武家の出だ。武道の武の時すら理解していない人間を戦場へ立たせることなど許せなかった。
「安心しろよ、三太。こいつは俺ほどじゃねえが、お前さんなんかよりよっぽど強ぇえぞ?」
いや、そう言う問題じゃないんですよ。
三太はそう言おうとして、
「いいからあんたは黙って見てなさいよ。あたしだって頭に来てるんだから」
瀬菜が纏う炎が爆発的に火力を増し、さらに眩くなった輝きに思考すらも奪われてしまった。
圧倒的な存在はそれを目にした人間の全てを奪い去る。これまで目にしたなによりも美しい姿に見惚れ、三太はただただ惚けるしかない。周囲を焼き尽くさんばかりに荒れ狂う炎は不思議と温かいだけで、三太は緊張感に強張った肉体や精神が和らいでいくのを自覚した。
それと同時に、
「よくもあたしの街を傷つけてくれたわね…っ!」
まるで火山の噴火の様な。
爆発的な怒りの感情の奔流に、三太は瀬菜を止めることを諦めた。意味がない。というよりも、あまりに無粋すぎるような気がしたのだ。
それほど、彼女はこの街を愛している。
なぜそんな風に思うのかは三太自身よくわからない、けれど、彼女の感情に嘘がないことだけはわかった。
この炎のせいなのだろうか。
気づけば三太や文七たちを包み込むように炎が広がっている。輝きは増し続け、三太が気づいた時には炎は空に昇って行った。
三太はそれをただ見上げた。
その獰猛な牙が蹂躙する様を見届けるために。
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