勇者とは 肆
火花。
いや、花火と言った方がいいのか。
三太の目には上空で眩い光が発生している様に見えた。まるで太陽の様な輝きが幾度も発生しては消え、爆発とはまた異なる衝撃と甲高い音が響き渡っている。
「…なにが、起こってるんですか?」
「ああ、遠目で見えねえか。いよいよおっぱじまったみてえだな」
「えっ」
近い。
いつのまにか文七は三太のすぐ側に来ていた。どうやら上空の誰かから三太を守ってくれていたらしい。無意識に助けを求めていた自分が三太は恥ずかしくなってきた。
「あの、ありがとうございます」
「なに、今回はおれが下手打っただけだ。あいつは普通じゃねえ。今のうちに屋敷の奥に入るのも一つだが」
文七は空を見て、渋い顔をした。
「まずいな。あいつ一人じゃ流石に荷が重い」
「えっと、そうみたいですね」
激しい光の交錯。
よくよく見れば色合いに個性があるようにも見える。誰がどの色かはまるでわからないが、光が炸裂する度に輝きが落ちている色合いが一つだけある。
なぜか、それが件の勇者ということが三太に理解できた。
「あの、援軍とかないんですかね?」
「来る…のは間違いねえんだが。もしかすると、他のとこも攻められてんのかもな」
「他のとこ?」
「あのイカれ野郎、初手で全面攻勢にでやがったのかもしれねえ」
全面攻勢。
三太にも言葉の意味は理解できたが、それが何を意味するのか考えてしまった。
ここと同じ様な状況がそこかしこで起きているということだろうか。
「…本気で言ってます?」
「流石にそこまでイカれてるとは思わなかったが、まぁ、あの王様ならありなのかもな」
文七は呆れ半分、関心半分と言った塩梅の表情だった。繰り返しになるが、猫の表情を完全に読み取ることなんて出来ないが。
「あの、通信は? 今ならあの王様と交渉できるんじゃ」
「あいつの能力の影響で無理だ。時間の流れが違ってるんだ、まともな会話にもなりゃしねえだろうな」
「でも、さっきの声の奴とか今上空で戦ってる連中は影響を受けてないみたいですし」
また空で火花が散った。
相変らず軍艦や砲弾などの動きは止まっているように見える。が、あの輝きを纏った連中だけは明らかに影響を受けていない。
「そこらへんは何かしらのカラクリがあるんだろうな。まぁ、あの王様ももしかすれば影響を受けていないのかも知れねえが、まぁ、意味はねえだろうな」
「どうしてですか?」
「話が通じる奴じゃねえだろ。ありゃ、死なば諸共ってタイプだ」
確かに。
三太は先ほどまでの対話を思い出す。
交渉の場を設け、ルールを定めてから戦うという目論見が一瞬で後破産になったのだ。流石に初手で問答無用の特攻をかまされるとは思っていなかったが。
文七の言葉に納得しつつ、三太は交渉はすべきではないかと思った。
なぜなら、現状では三太達に出来ることがないからだ。このままではあの勇者が敗れた瞬間に一気に攻め立てられる。いくら文七が言う様にこの屋敷が砲撃に耐えられたとしても、一方的に攻め続けられるだけでは敗北しか待っていないのはないだろうか。
三太が最悪の状況を想像していると、
「先生、そろそろいいですか?」
瀬菜がそんなことを言った。
読んでいただきありがとうございます!
更新頻度が遅くなっていますが、最後まで書き上げるのでよろしくお願いします!
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