勇者とは 参
【なんだぁ、てめぇら? 親玉はどうした?】
三太が宙に浮かぶ複数の人物に気づいたと同時に勇者の声が響いた。相変わらずガラが悪い。そもそも、どうして勇者の声が聞こえるのかが疑問だった。三太の目にはほぼ小さい点のようにしか見えないのに。その上、三太達に語りかけているわけでもないのに。
声が無駄に大きいのと同じ原理なんだろうか、と三太は自分自身を納得させた。
「まずいな」
ぼそりと。
文七の呟きに三太は気づいた。
「文七さん? どうかしたんですか?」
「あいつら強いぞ」
いや、強いってに言われても。
三太は思わず文七に反論しようとしたがその言葉を飲み込んだ。文七の表情がどこか険しく見えたからだ。もちろん、猫の姿なので正確に表情を捉えられたわけではない。雰囲気がこれまでのそれとはまるで違うのだ。余裕がないというか、そう、あの時と同じだ。
あの球体と対峙した時と同じだ、と三太は気づいた。
【──見ぃつけた♪】
と。
勇者のそれとはまるで違う声が聞こえた。
全身が鳥肌立ち、背中から冷や汗が吹き出した。
三太は反射的に上空を見上げ、それと同時に金縛りにあったかのような錯覚を覚えた。
目が合った。
いや、三太には遥か上空にいる声の主の姿を正確に見えていない。けれど、直感として理解した。間違いなく、見られている。三太達を見下ろして、明確な敵意と殺意を叩きつけてきている。
三太は腰を落とし、柄を握りしめた。
まだ、斬れない。
三太の意思とは裏腹に本能が訴えかけてくる。それでも構えを解こうとは思わなかった。
いや、解くことができなかった。
遥か上空にいるはずの声の主がそれだけの脅威であることをわからされたからだ。
視線だけで、三太は明確な違いを理解させられた。
【おや、驚かせてしまいましたか? これは申し訳ありません。我ながら、どうにも抑えが効かなくて】
声を聞くだけで逃げ出したくなる。
と、同時に動けば一瞬で死が待っていることを三太は理解している。
三太はただまっすぐ上空にいる誰かを見つめ返すことしかできなかった。
【…んん? ああ、貴方ですか! なるほどなるほど、いい目をしている。構えにも隙がない。うん、これは勿体無いことをしていたようですね。以前の私は、随分と老いさらばえていたようだ】
事ここに至っては間違えようもない。
声の主は明確に三太を意識している。
理由はまるでわからない。わからないが、目をつけられたからには対処しなければならない。すぐ側には文七もいるはずだ。なぜ文七ではなく三太自身なのかの疑問は頭の中から追い出して、とにかく、三太は自身が出来ることを模索するしかない。
そもそも、この状況を文七は理解しているはずだ。そろそろ援護の一つもくれるだろうと淡い期待を覚えた時、
【無視すんじゃねえよ、カス。てめえは死ね】
冷酷な声と共に。
上空で眩い火花が散った。
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