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宣戦布告


『貴様が妙なことを吹きこんだか…っ!』


 男の表情が歪む。

 これまでの高圧的すぎる態度が生優しいと思えるほどの迫力。異世界の王を名乗る男の底なしの胆力に三太は恐れを超えて感心するしかなかった。仮に三太が真正面からその視線を受けたとしたら言葉どころか、意識すら失ってしまうのではないか。

 といっても、それはあくまで三太の話。

 文七は、当然の様に平然としていた。


「吹きこんだってのは心外だね。俺はただ喧嘩の仕方を教えてやっただけさ。喧嘩ってのは対等にやらなきゃ茶番になるだろ?」


『何様のつもりだ貴様…っ! そこは俺の領土だぞ…っ! 国を作るなぞ恥を知れっ!』

 

 響く怒号は物理的な衝撃を持っているかのように苛烈だった。

 それを、


「おいおい、喚くなよ。娘が女王になったんだぜ? 感謝してほしいくらいなんだがね」


 文七は変わらず飄々とした態度で受け流した。

 男の表情が、そして、目の光が消えた。

 怒号は消え、周囲を威圧するような雰囲気までも消えた。

 だからこそ恐ろしい。


 そこに込められた感情は、おおよそ三太の知る殺意とは桁が違うものように見えた。


『…本気で、おれと戦争がしたいと言っているのか?』


「おう。うちの女王様がどうしてもって言うんでね」


 ここからだ。

 三太はそっと刀の柄に手を添えた。

 ここまでは文七の思い通りに進んでいる。


 敵は暴君率いる異界の最強国家。


 そんな規格外の敵と戦うならば正攻法でいかなければならない。文七が三太たちに語ったことはそれに尽きた。

 なにせ年がら年中戦争に明け暮れてきた連中なのだ。

 真正面から当たれば潰され、搦手を使おうにも向こうの方が百戦錬磨。奇襲だ何だと小細工をしようが意味がない。


 正攻法で戦いを挑み、ルールを作ることで少しでも対等な状況へ持ち込むことが唯一の勝ち筋。

 

 そのために、文七は国を作ることを市村ヨネに提案したのだ。


『一つ聞く。貴様ら門番には掟があったはずだ』


「おや、よく知ってるな。ま、とっくにカビが生えちまってるけどな」


『貴様はその世界の門番のはずだ。門番は一つの世界にただ一人であり、世界の秩序を守る存在。それが一つの国家に味方することはできないはずだが?』


「なんだ。そんなことか」



()()()()()()()。世界だ何だなんての関係ねえし、興味もねえんだ。そう言うのはてめえで飼い慣らした奴に言ってくれ」


 

 文七の言葉に三太は違和感を覚えた。

 ()()()()()()()?  

 その言葉の意味を三太が思考する前に、


()()()()()()


 なぜか、男は獰猛な笑みを浮かべた。

 

 直後、()()()()()()()()()


 

 


 

 

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