私の国
『実にみっともない。お前はなにも変わらんな』
市村ヨネの怒気に対して、男はどこまでも淡白な反応だった大人の対応というかどこか慣れているようにも見えた。というか、よくよく考えると三太自身も既に経験していたのを思い出した。
そのせいでこんな面倒な状況に巻き込まれたのである。
だから、この展開こそ三太は警戒すべきだと気合を入れ直す。どうも、彼女はキレるととんでもないことを引き起こすようなのだから。
「ええ。あなたも何も変わってない。少しはまともになってるかと期待した私が馬鹿だった」
『真面だと? お前は誰を相手にしていると思っている?』
「父親と。あたしにとってたった一人の肉親と話してる」
『本当に、貴様は何もわかっておらん。おれは父である前に王だと何度言えばわかる』
ため息混じりの言葉。
なぜか、それが妙に三太の印象に残った。…いや、と三太は無意識に逸らそうとした思考を正す。
明らかに、自分の父親と重なって見えたのだ。言葉遣いも態度も違うのに、明らかに自身の父親そのものだと三太は理解した。
理由なんてどうだっていい。
それだけで三太がこの男を敵と認定するのに十分な理由なのだから。
「私にとっては、あなたがたった一人の父親よ」
『話にならん。何度同じ話を繰り返すつもりだ、貴様』
声に苛立ち以上の感情が籠り始めている。
それが肉親へ向ける類のものではないことを三太は直感で理解した。なにせ、それも自身の父親とのやりとりで経験済みだったのだから。しかも、自分で何度も言っているじゃないか。
この男はあくまで王であることに固執している。三太の父親が当主であることに固執していたように。
『これ以上、おれの時間を無駄にするつもりか?』
殺気。
もはや欠片も隠す気のない殺意に三太は思わず腰を浮かしかけた。画面外にいるのに、こちらの存在を認識すらしていないはずなのにこの場から離れたくなる。
それを真正面から受けて、
「そうね。もう十分にわかりました」
市村ヨネは毅然と答えた。
三太には表情は窺えないが、その背中と声だけで真正面から圧力に堪えたのがわかる。それと同時に、ついに彼女が意を決したのだと確信する。
そう、文七の思惑通りに動くことを決めたのだ。
「宣戦布告します。あなたが率いるあなたの国へ」
「──私の国が」
読んでいただきありがとうございます!
まだまだ遅筆ですが、継続していくので最後まで宜しくお願いします。




