勇者ですか? はい勇者です。
異界送り。
それが文七の本来の仕事である。
はじめは世直しだと言っていたが、それはあくまで結果論だと文七は言う。本来であれば異世界人がいるだけで、世の中を乱す。この世界とは異なる原理、文化、思想。その他諸々の影響によって本来の流れがあり得てはいけない方向に向かうのを防ぐ、あるいは修正するために必要なことらしい。
正直、三太は何度聞いてもよくわからなかった。
こんな小難しいことを言われても、結局は三太自身にはあまり関係ない。今回の件にしてみても世界への影響だとかどうだとかなんて話は必要ないように思えた。
大事なのは、
「つまり、奇襲をかけるってことでいいんですね? その、異世界にいる市村ヨネさんのお父さんに」
「さんちゃん、お母さん。私、お母さん」
「いや、今そういう場合じゃないんで」
というか、修正するのはそこでいいんだろうか。
仮にも自分の父親に対して襲撃をかける話し合いをされているのにこの態度はどうなんだと三太は訝しむ。…が、すぐにその考えを修正した。三太が逆の立場であっても同じような態度をとるだろうと容易に想像できたからだ。
父親だからといって、無条件に大事にすることなんてありえない。
「奇襲っていっても、いきなり切り掛かる必要はねえ。ある程度こっちが有利に運べる状況を作ってやればいい話さ。だから、あっちに行く前にこっちでも準備が必要になるってわけだ」
「準備ですか。具体的どうすればいいですかね」
「まずは向こうさんが一番懸念している王位継承権についてだな。三太が持ってるなら向こうさんに返してやるのが一番簡単な方法だ。ただ誰に返すかで話が拗れるのは見えてる。あとは、まぁ、あんたの娘さんを探し出すのも一つか」
「それは絶対にダメ。あの娘には関わらせない」
断固とした拒否。
市村ヨネからの強い決意を感じさせる瞳に三太は意識を集中させた。文七も何かを感じ取ったのか、市村ヨネに対して意識を集中しているようだった。
「そういや、商工会館での話だったがお前さんの娘が死にかけてるって話だったか? 病かなにかなのかい?」
「病、ではないわね。どちらかと言えば呪いね」
呪い。
意外な言葉ではあったが、何かあるのはわかっていた。だからこそ話し合いの前に触れることはせずに詳しことを聞き出そうと思っていたのだ。三太はさらに踏み込むことにした。
「それは、あなたのお父さんが関わっている問題ですか?」
「いいえ。そもそも王位継承権とも関係ない話よ」
「あの娘はこことも私が元いた世界とも今は関係ないの。だって、他の世界で勇者をしているんだから」
はい?
三太は何を言われているのかまるでわからなくなった。
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