異界送り
市村ヨネの言葉に三太自身は絶句し、それ以上その話題を続けることを避けることにした。
そうだ、三太自身の願望なんてこの場ではなんの意味もない。それ以上市村ヨネからこの問題についての発言をやめさせるために三太の脳みそは高速で回転した。背中から冷たい汗が吹き出している。決して図星を刺されたわけではない。わけではないが風評被害は最低限に抑えなければならない。
こういう繊細な話題は強く否定する方がまずいのだ。だから、この場は流して自然な流れにしなければならない。
とにかく、大事なことはこれからのことだ。とにもかくにも、現状把握と情報収集を継続しなければならない。
商組合の態度の変化や市村ヨネとのつながりに関しても抑えておかなければならない。
「へえ、やっぱりこいつはマザコンだったのか」
そんな三太の思いを踏み潰すような間の悪さで、文七は横槍を入れてきた。
けれど、三太はその言葉に反応できなかった。
マザコン。
三太にはそれが何を意味するのかわからなかったからだ。
「マザコンってなんです?」
瀬菜が言う。
三太の疑問そのものだったので、三太は文七の言葉を待つ。
「お母さん大好きな甘えっ子ってことだよ」
「あー、なんか当たってるかも」
「なんでだよっ!」
猫なのになぜか意地の悪い笑みとわかる表情を浮かべ、文七は言う。からかう響きには悪意しかなく、同調した瀬菜まで嘲笑うような笑みを浮かべていた。
「もう、サンちゃんったら照れちゃって」
にこにこと笑っている市村ヨネ。
反論したかったが、正直、下手に反論しても場の空気がおかしくなるだけだ。
三太はとにかく話を前に進めるために無視を決め込むことにした。
「わかりました。もうわかりましたから、僕の質問が悪かったです。話を戻しましょう。とにかく商組合は頼れません。まずは僕らが独自で動かなければならないって言う認識でいいですね」
「逃げたな」
「逃げたわね」
うるさい。
「ていうか、これ、文七さんに向かって言ってるんですけど」
「あ? ったく、わーってるよ。確かに、俺が安直だったわな」
一瞬険悪な視線を向けられて三太はビビったが、文七はすぐに引っ込めた。危なかった。流石に無礼かと思ったが、無事に軌道修正ができたようだと三太は確信する。ここで手を緩めるわけにはいかないと言葉を続けた。
「その上、月夜野家も絡んでるんですよ。このままだと後手後手になりませんか?」
「そうだな」
「だったら、こっちから乗り込んでやればいい。大将首を獲っちまえば、外野がうるさくしようが関係ねえからな」
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