三太の罪
「? 抜け駆けって?」
「三太はそういうすっとぼけるところは治した方がいいと思う」
「すっとぼけ?」
「もういい。とにかく、そういうことだから」
この話は終わり、と水月は言った。
相変わらずよくわからないことを言うな、と三太は思う。けれども、まぁ、こう見えて情に厚い人間だということはわかった。三太の中で水月の信頼度は増した。そもそも、情に厚い人間は身内を売らないのは当然のことだ。
聞く方が悪い。
三太は自分自身が的外れな上に馬鹿すぎることを考えていると自覚し、自分自身を諌めることにした。
素直でいいんだ。
そもそも、そういう生き方しか出来ないのだから。
「なに笑ってるの?」
水月は怪訝そうに眉を寄せている。
どうやら自分が笑われたと思っているらしい。三太は誤解を解こうとして、言い訳をしようかと思ったが、それ自体が白白しい気がしてやめた。
そもそも見送るために来たのだから、玄関口で長話をしているのも良くないなと思い直す。
「いや、うん、なんでもない。気をつけてね」
「ん。なんだか、変な気分。三太に見送られるのははじめてかも」
「え、そうかな?」
そんなはずはないと思ったが、確かに、一応は三太と水月は主従関係にあった。月夜野家に仕える立場なのだから水月が見送る側になることはあっても、わざわざ主人の立場にある三太に見送らせるなんてことはないだろう。
そう考えると、ここ数日で三太の取り巻く環境の変化が大きいことを実感する。
まぁ、そもそも勘当された時点で環境の変化も何もないかと改めて三太は思った。
「聞かないんだね?」
「え?」
「親方様のこと」
「──」
突然の質問に、三太の思考が停止する。
まさか、そこに触れてくるとは思っていなかった。
「気にならないの?」
「別に」
三太自身が驚くほど冷たい声が出た。
けれどそれを取り繕う気にもならなければ、否定する気にもならない。
そんな三太の心情を察しているのかいないのか、水月は続く言葉を待っているようだった。じいっと見つめている。
「…なんだよ」
「ううん。なら質問を変えていい?」
まだ聞きたいことがあるのか。
三太は拒絶しようとしたが、言葉がうまくまとまらない。
おそらくはそんな三太のジレンマを承知の上で、水月は、
「他の皆──忠勝や忠次、慈恩、清太のことも気にならない?」
またも、三太に罪状を突き立てた。
「ならないよ。だって、あいつらとは」
「とは?」
しつこい。
三太は自身の中でぐつぐつと煮立つよう苛立ちが湧いてくる。
けれど、その苛立ちをぶつけるわけにもいかないことは三太自身が十分に理解している。
なぜならば、そいつらは全員、
「真剣勝負だったんだ。だから、情けをかけるつもりはない」
忠勝、忠次、慈恩、清太。
月夜野家の使用人であり、幼い頃から三太と切磋琢磨した同胞。
その彼らから三太は刀を奪った。
刀そのものではない。刀の道を奪い去ったのだ。
それこそが三太が背負う罪であり、『御家騒動』で勝ち取った数少ない戦利品である。
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