抜け駆けは許さない。
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「それじゃ、行くから」
文七をしばらくもふもふした後、自身の発言通り水月が帰ると言った。
三太は流石になにもなく返すわけにはいかないんじゃないかと思ったが、文七も瀬菜も何も言い出さなかったのでそのまま見送ることになった。玄関口には三太と水月の二人のみ。この状況に違和感を覚えないでもなかったが、三太は素直に二人の好意に因るものだと考えて見送ることにした。
「うん、気をつけて帰ってね」
その言葉がどれだけ空虚で薄っぺらいものなのかを三太自身が十分に理解している。
けれども、なぜかその言葉以外が出てこなかった。
それ以上の何かを言えば、それこそあまりにも嘘みたいな言葉しか出てこないと三太自身が理解していたからだ。
「やっぱり、変わったね」
水月が三太に言った。
変わった。
そんな言葉をかけられるのは初めてで、なぜか三太は妙な気恥ずかしさを覚えた。そもそも、なぜ気恥ずかしさを覚えたのかわからない。おそらく水月と会うのは、それこそ数日ぶり程度のはずなのに。
「ごめん、何言ってるのかよくわからない」
「わからなくていい。多分、三太にとってはどうでもいいことだから」
まるで禅問答のように煙に巻く言葉に、三太は今度こそ何も言えなくなった。
そう言って三太を見つめる水月の視線に対しても反抗することも肯定することもできない。水月はそういう人間だった。情に篤く、どこか思考が常人離れしている。語る言葉の意味を理解すること自体が難しく、彼女を敬遠する身内は多かった。
それと同じくらい慕われているのだから、不思議なものだと三太は常々思っていた。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
「一緒にきた四人って誰だったの?」
文七や瀬菜の前では聞けなかったこと。
正直、三太にしてみれば自分を心配する存在がいること自体想定外なのだ。辛うじて中立の立場を貫いた水月ならあるいは程度に思えたが、まさか、それ以外に面子がいるとは思っていなかったからだ。
しかも、現状を見るに返り討ちに遭っているのだ。
それだけの危険を冒してまで三太を気にかけるとは考え難かった。おそらくは何かを言い含められているか、あるいは独自に何かの思惑があるか。面子の名前を知れば、それぞれの狙いがわかるかもしれない。
その程度の打算を含めての質問だった。
なのに、
「絶対に教えない」
水月は断固として拒否の姿勢を示した。
三太の中で、水月に対する警戒度が上がる。と、同時に信用度は急落した。
「なんでだよ」
茶化すような態度で反論する。直裁的な言い方をしすぎたかと思考を切り替えたところで、
「絶対に教えないから。いい加減抜け駆けされるのはうんざり」
水月は相変わらずネジのはずれた発言をするのだった。




