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家族のようなもの


「ぶっころ? いや、何言って…」


「あー、はいはい。そういうのもういいから」


 三太が水月の言葉に反応する前に、なぜか瀬菜が横槍を入れてきた。突然の行動に三太は驚いたが、水月と瀬菜の間に緊張感に似た雰囲気を感じ取った。

 まぁ、そうなるかと三太は腑に落ちた。

 どうやらまだ水月は瀬菜との勝負は終わっていないと考えているようだ。意外だったのは瀬菜の方だ。圧倒的に優勢で勝ったように見えたが、そう単純な話ではないようだ。

 二人の間で火花が散るのを三太は見たような気がした。


「結局さ、あんたらはなんで忍び込んできたわけ? こいつを連れ戻したいの?」


 ど直球。

 三太ですら言えなかった言葉を瀬菜は平然と口にした。


「そのつもりだった。三太が一人で生きていけると思ってなかったし、最悪一人養うくらいはできると思ったし」

 

「ちょ、養うって…っ!」


「三太は長男だからわかってない。何もなしで放り出されて生きていけるほど世間は甘くない」


「そりゃそうね。こいつ、根性なしだし」

 

 突然の爆弾発言に対しても水月は平然としている。それに対する瀬菜も未だに平然としているのだから、騒ぐ方がおかしいのかと三太は思ってしまう。なので、大人しくするしかないのだが、照れというかなんとも言えないむず痒さに頬が熱くなるのを感じた。

 ていうか、なんでこんな話になってるんだっけ?


「でも、その心配は必要なかったみたい。三太は宿探しが上手いと思う。意外な才能だった」


「おいおい。宿ってのは俺ん家のこと言ってんのかい?」


「うん。猫さん、いい猫さんみたいだから大丈夫だと思う」

 

「なんだそりゃ」  

 

 文七を膝に乗せてわしゃわしゃと撫で回しながら、水月は失礼なことを言う。というか、あまりに自然すぎて何も気にしていなかったが、あまりにも失礼すぎる行為なんじゃないかと三太は今更ながらに思った。けれど、意外なことに文七もまんざらではないようだった。

 証拠に水月の膝に収まる大きさになっているし、目を細める様子は明らかに気持ちよさそうだったからだ。


「ヒモの才能があるってことね」


「ああ、なるほど。納得いったな、おい」


「ちょっと待ってくださいっ! 誰がヒモですかっ!」


 突然の被弾。

 流石に聞き捨てならなと三太は反論しようとしたが、周囲に味方はいないようだった。最後の頼みと市村ヨネを見たが、いつの間にか茶を啜って我関せずを決め込んでいる。

 なんて図太い女なんだ、と三太は呆れるほかなかった。

 

「だから、もういい。とりあえず元気にやってるなら、私たちの出番はない。たまに顔を出すから、三太をよろしく。またもふもふさせてね」


 水月はそう文七に言う。文七は肩をすくめるような動きをしただけで、水月の為すがまま。とりあえず、三太は一連の問題のうち一つは解決したと嘆息した。

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