ぶっころ
「つまり、僕がここにいるから来たってこと? え、なんで?」
文七をもふもふしている水月の言葉を聞き取ること小一時間。
かわいい、かわいい、と隙があれば呟き続けるから大変だったが、ようやく事の次第を把握することが出来た。
けれども、その内容が三太にとってあまりに想定外すぎて、素で質問を返してしまったのだった。
「なんでって、心配するに決まってる。一応家族みたいなもんだし」
文七をもしゃもしゃして正気が戻ってきたらしい。未だに文七を執拗に撫で回すが緩んではいないが。
どうでもいいが、水月が猫好きだったのを三太はすっかり忘れていた。小さい頃は野良猫を追い回し、三太達全員で探し回ったことも思い出してしまった。
「えっと、父さんから勘当されたんだけど」
「だから? 私たちがそれぐらいで見捨てるほど薄情な人間だと思うわけ?」
「…え?」
「いい? そもそも、あなたが一人でほっぽりだされて生きていけるなんて誰も考えてない。当主だってそう。当主としての体裁があるからあんたを勘当しただけで、別に死ねっていったわけじゃない。なのに、あなたはさっさと居なくなるわ、変なとこに匿われるわ、妙に強い奴がいるわ、一体どうなってるの」
いや、どうなってるのと言われても。
三太としてはなんとも言い難い詰問である。実際、三太自身あのまま野垂れ死ぬしかないと思っていたのだ。けれど、なぜか文七に拾われて、妙なことに巻き込まれてしまった。
そのせいで根本的な生きる術の部分についての考えを棚上げしてしまったのは事実である。そんなことよりも目の前の出来事についてどう対処することの方が遥かに重要になってしまったのだ。
「そっか。心配かけてたとは思ってなかったな、ありがとう」
「別にお礼はいい。それより、あなたは今何をしているの?」
「え? 聞いてないの?」
「え? 聞いてないって、誰から?」
「天から」
「…は?」
思わず文七と目を合わせた。
文七はもふられて目を細めながら、瀬菜に視線を向けた。
「本当か?」
「みたい。今度は少し見えた」
三太に二人のやりとりの意味はよくわからなかったが、どうやら水月の発言の真偽について確認したらしい。
けれど、彼女の発言が事実なら現在の状況そのものがおかしくなる。三太は困惑している水月に向き直って、自分が今何をしているかについて説明した。といっても、正直三太自身が何をしているのか整理できていないのだが。
「だから、まぁ、そういうわけで父さんとも対立してる、のかな?」
「意味わかんない」
三太の説明に対して、水月は電光石火の一刀両断でぶったぎった。
うん、正直僕もよくわかってないと三太自身も思う。
けれど、
「ただ、あのクソ女が抜け駆けしたってことだけは把握したわ。あいつまじぶっころ」
水月は、なんだかよくわからないことを呟いた。
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