黙らせる
「つまり、王位継承権のせいで僕自身が狙われるということですか?」
母になるの件を無視し、三太は懸命に脳みそをかせる。
というか、どうにも状況を理解しきれていなかったのだ。言われていることは理解できるし、言葉自体もわかっているつもりだ。けれど、それと文七の反応がどうにもかけ離れている。
三太は言葉の認識に差をあることを理解しながら、質問した。
「ええ、そうよ。私のせいでこれから貴方は命を狙われることになるわ」
「それは、さっきの球体みたいなやつにってことですよね?」
「それだけじゃないわ。おそらく向こうから刺客もやってくるはず。すぐに、とはいかないでしょうけれど」
刺客。
なるほど、と三太はようやく納得した。
要は『お家騒動』そのものだということだ。
向こうの世界ではどうにも違うようだが、こちらの世界では長子が家督を継ぐ。もちろん、継ぐまでの間に権力争いがないわけがない。どこぞ高貴な家では次男坊を担いだ分家が刺客を送って成り代わるなんて事例はたくさんある。
まったく血縁関係でもない三太がその位置に着く理屈はよくわからないが、そういうことなのだろう。
「あの、返すことは出来ないんですか?」
「残念だけれど、それは出来ないわ。手放した時点で資格を失ってしまうから」
「なんでそんな厄介なものをこいつに渡してんのよ、あんた」
これまで黙って聞いていた瀬菜が口を挟んできた。
「あんたには見えてないんでしょうけど、こいつ真っ黒な靄に包まれてるんだけど? そうとうやばい代物なんでしょ、それ」
「黒い靄、というのが呪いの類なら私にも見えるはずだけれど。まぁ、ろくなもんじゃないから当然かもしれないわね」
「当然じゃないんだけど…? あんた、燃やし尽くして上げましょうか」
文七の次は瀬菜まで怒気を顕にした。
それでも市村ヨネの態度は変わらない。どこ吹く風の様相でいる。
何故か、それが三太には印象的だった。
普通ならろくでもないものを押し付けられた時点で怒ってもいいのだろうが、そういう気も起きない。というか、なんでかわからないが、市村ヨネに対して悪印象を抱いていないことに気づいた。
三太にも理由は全くわからなかったが。
だから、
「あの、二人ともそれくらいでいいんじゃないですか?」
三太は市村ヨネへ助け舟を出すことにした。
「「あんっ?」」
後悔した。
何故かものすごい怒気が三太に叩きつけられることになったからだ。完全にビビったが、話を進めなければならないと思い、三太は言葉を続けた。
「いや、もうなっちゃったものはしょうがないですし、返せないなら何かしら対処を考えなきゃいけないじゃないですか。ぼくだってまだ死にたくないですし」
「おい、やけに冷静じゃねえか? なんだ、お前母親に憧れてたのか?」
「いや、そうじゃなくてですね」
「実家にいた頃から命を狙われるのには慣れているんですよ。まぁ、前に戻っただけですし、そういう連中は言ってもわからないですから」
実力で黙らせるしかないんじゃないですか、と三太は言った。
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