幽霊屋敷 弍
「はい、どうぞ。私の手作りなんだから、とっても甘くて美味しいわ♪」
まるで飛び跳ねるような軽やかな声音で少女は、三太と文七をもてなしてくれた。
幽霊屋敷にしか見えない外観だったが、内装は至極まともだった。というよりも、三太が見たこともない格式高い瀟酒な屋敷だった。白い大理石の玄関も置かれた調度品の数々も。全てが異次元過ぎて、屋敷の中を歩くだけでも圧倒されっぱなしだった。
極め付けは、案内されたリビングでのこと。
天井から、シャンデリアが吊るされていたのだ。
そう、シャンデリア。三太の記憶が正しければ、そんな名前の照明器具だったはずだ。実物を見るのは初めてだったが、たぶんそんな感じだろうなと完全に麻痺した思考で結論付けた。
そのままふかふかのソファに座らされ、現在に至る。
目の前のテーブルに並ぶのはさまざまな色とりどりの菓子。三太の目には眩し過ぎて、お菓子だと言われてもまるで信じられなかった。
ついでに持ってこられた黒い水も。いや、流石にこれはコーヒーだと三太も知っている。
「すごいな。これを全部作ったのか」
「ええ。いつでもお客様をおもてなし出来るように。我が家の家訓なの」
「我が家ねぇ。他には誰もいないのかい?」
「いないわ。夫には先立たれたし、娘も随分昔に出ていったっきり」
夫、娘。
三太はカップに口をつけようとしたが手を止めた。明らかに幼女である。なのに、自身の身の上を語る少女の口ぶりがあまりに自然だった。
いや、当然の話か。
彼女は渡来人。三太達とはまるで違う存在なのだから。
「一人で寂しくないのかい?」
「まさか。お友達はいっぱいいるから」
公園で無邪気に遊ぶ姿が三太の脳裏に浮かぶ。
さすがに覚えていないが三太もその中の一人だったはずだ。そのせいなのかわからないが、三太は少女に対して悪感情を持てないでいた。たしかに得体の知れなさは感じてはいるものの、それだけだ。むしろ、身の上話を聞いたせいで同情心すら湧いてきているのを自覚している。
そのせいだろう。
「どうして、子供と遊んでるんです?」
また、三太は余計な真似をしてしまった。自覚しても、もう遅い。何度目かもわからない後悔をしようにも、場の雰囲気と流れがそれを許さなかった。
少女は、ごく自然に、
「だって可愛いじゃない。子供は、どの世界でも宝物なんだから」
そう答えた。
柔らかい笑顔。少女の浮かべるそれは、紛れもなく慈愛に満ちたものだった。
明日も投稿予定です。
何卒よろしくお願いいたします。




